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最終話

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 ★★★

 レオンハルト王子をざまぁしてやるつもりだったのに……

 メイド長視点

 お嬢様とレオンハルト様が監禁部屋で情事を重ねる光景を私はあれから何度も目のあたりにした。

 扉の隙間から見てるだけの私、無意識にアソコに触れてしまう。

「気持ちいいのか、私に負けないんじゃなかったのかい?」

「んやぁっ……あ、ああぁっ……ごしゅじん……しゃまぁ……」

 お嬢様は気持ちよさそうな顔をしている。

 ズボズボと大きなアレを出し入れされて、自ら腰を振っている。

 レオンハルト様にすべてをゆだねているのが分かる。

 レオンハルト様の反り立つアレを恨めしそうに見てしまう私。

「んんっ、や、ああっぁぁっ……やあ、ああぁっ……もっと、もっと」

 お嬢様は歓喜の雄叫びをあげている。

「ここが、相変わらず弱いのだな? もっと突いてやろう」

 レオンハルト様のアレがお嬢様のアソコに何度も……

 うらやましい。

 ただ、わたしはそれをみているだけ……。

 奥を突かれるたびにお嬢様は喘ぎ声をあげて顔まで蕩けさせている。

 わたしのここにもレオンハルト様のアレがほしい。

「や、あ、あああぁんっや、ああぁ……」

「もっと強くしてやる」

「ああっ、はっ、あああぁっ、はぁ……ぁぁ……」

 お嬢様の動きも激しくなってくる。

 もうすぐレオンハルト様に導かれてしまう。

 あの絶頂の世界に……

「あ、ふぁうっ、ああぁ、あぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」

 お嬢様は絶頂してしまい、全身を跳ね上げ身体中をびくびくと痙攣させている。

 なんて、気持ちよさそうな顔をしているんだろう。

 見ることもつらくなり私は、自室へと戻ることにした。

 また、レオンハルト様を想像して自分を慰めてしまう。

 私はレオンハルト様が好き。

 好きで好きでたまらない。

 大好き。大好き。

 その横顔にいつも見とれてしまう。

 レオンハルト様にまた触れられたい、あの細い指先で……

 想像するだけで、それだけで心が弾けそう。

 私、どうしてこんなにもレオンハルト様が好きなんだろう。

 もう分からない。

 だって私には彼しか見えないから。

 わたしがシャムリーナに選ばれてから、もう何年が過ぎ去ったのだろうか。

 いつになれば、また私を選んでくれるの?

 今回の私はメイド長に選ばれてしまった。

 シナリオにそって動かないとこの世界からデリートされてしまう。

 私の心が押しつぶされていく。

 我慢、我慢よ。

 でも、また、あの時みたいに、私も調教してほしい。

 鏡台の椅子に座って魔法を解く。

 隠していた黒いネコミミと尻尾が暴かれる。

 エピローグ終了までまだ少し時間がある。

 まだ消えてないのね。

 ああ、嬉しい。

 この青い痣や傷は、監禁部屋につれていかれるお嬢様を助けようとする役割をしたとき、愛しい人につけられてしまうものだ。

 その痣と傷を撫でたあと口元に手を運んでいく。

 あああ、レオンハルト様とつながっているそんな気分にひたれる。

 あああ、もう、狂ってしまいそう。

 レオンハルトさま、レオンハルトさま、レオンハルトさま、レオンハルトさま、レオンハルトさま、レオンハルトさま。

 私のレオンハルトさま。

 さっと、大きな鏡に一人の少女の姿が映りだされた。

「あの馬鹿姉貴、ほんと、どこにいったのよ。もう!!」

 ああ、お嬢様、あなたは壊れてしまったのね。あなたとなら、同じ彼に飼われた猫同士、きっと、次では仲良くなれると思ったのに、本当に残念だわ。

 新たな住民は彼女に決まったようね。

 うふふ、お迎えにいかないと。

 今度は黒猫(わたし)が選ばれますように~♪

★★★

 私の名前は田中めぐみ。

 地球からの転生者だ。
 
 この世界で私に与えられた最初の役割(アバター)は、悪役令嬢シャムリーナだった。

 シャムリーナのトレードマークは猫のミミと尻尾がついていることなのだけど。

 なぜシャム猫なのに黒いネコミミがついているのか疑問だった。

 私がこのゲームを始めたときは、ベータテストだったから仕方がないのかもしれない。

 この世界で暮らした時間は、すでに100年を超えている。前世の記憶をもった人間は私しか残っていない。

 転生したことで新たな人生を楽しもうとした者が大勢いたのだけど。

 長くて5年。

 皆、絶望し狂っていく。

 次々とシステムにデリートされる。

 そして私だけが残された。

 ベータテストで生き残った私は後にゲームマスターとして、この世界に選ばれた。

 鏡台に座り、私はいつもの大きな鏡をのぞく。

 すると、一人の少女が目の前に映った。

「あの馬鹿姉貴、ほんと、どこにいったのよ。もう!!」
 
 彼女がプレイヤーに選ばれたようだ。

 プレイヤーとはこの世界で自由に行動できる権利を持った人間、この世界で1人だけがその権利を持つことができる。繰り返しこの世界で転生し遊ぶことができる選ばれた人間、だけどプレイヤーの精神に不具合が生じた場合、システムの検知によりデリートされる。変わりの新たなプレイヤーが選ばれてしまう。

 鏡に映っていた彼女の姿が薄くなって消えていく。

 ただの鏡に戻ったあと文字が浮かび上がった。

 新たなアップデートが加わり新たなエンディングとアイテム、NPCが追加されたそうだ。

 あとは指令書にそって動け、詳細はこの説明書に書いてあるとのことだ。

 鏡台のテーブルに一冊の本が現れた。

 それを手に取り、パラパラとめくりながら読んでいく。

「またダメだった」

 今回の私の役割は、メイド長ではなかった。私はどうやら、クロエというシャムリーナの専属メイドに選ばれたようだ。

 新たに追加されたNPCはシロエ。姉クロエの妹でメイド見習いだった。

 今回もおわずけだった。

 彼に愛されたかったのに(調教されたかったのに)

 欲望を抑え込み、この世界での自身の役割を思い出した。

 メイド長の服から専属メイドの服に装備を切り替える。アバターにも少し手を加える。今回は黒い猫耳と尻尾はそのままでいいようだ。

 シャムリーナの遠縁の子爵の娘のようだから。

 これでいいみたいね。

 トントントンと部屋をノックする音が聞こえた。

 トン、トン、ドーーーーーーン。

 扉が勢いよく開かれてしまう。

「ねぇ、おねぇさま、お嬢様が、うーん、なんだっけ? あは、忘れちゃったよ?」

 彼女はたしか、私の妹の追加されたNPCシロエよね?

 たしか、いつもおどおどして姉離れできない内気な少女の設定ではなかったかしら?

 エラー、それともバグなのかしら。

 彼女は私と同じ、メイド服を着ている。

 私は黒だけど彼女は白のネコミミをつけている。

「ああ、困ったよう。どうしよう。逃げる、いっそ逃げちゃう。わたしは鳥さんになるのだ。きーん!」

 私は振り返って逃げようとしたシロエの首根っこを掴んだ。

「ぐえっ」

 その口から残念な声が聞こえた。

 返事も持たずにドアーを開けるなんてマナーがなっていない。NPCとしての行動、台詞すら忘れてる。

 デジャブかしら、先ほど同じようなプレイヤーのお世話をしたような。

 ああ、なるほど、彼女が新しいNPCとしてリサイクルされたのね。

 元のスペックが規格外のおバカだったから、システムもバグが起きてお手上げだったのかしら。

 この子が生き残れるようにあそこまでお膳立てしてあげたのに。

 媚薬は小さじ一杯分って何度もいってあげたのに、復唱までさせたのに、一気に飲みほすなんて……あれは予想外だったわ。

「うふ、あなたは本当に残念ね。でもそこが癒されるのかもね」

 彼女の頭をポンポンと叩く。

「ひどーい、お父様、また子供扱いした。あれ、わたし、何言ってるんだろう、前にもこんなことが、って待って、おいてかないでよ」

 ここはエミリア王国を舞台にした乙女ゲームの世界である。
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