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思春期
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「翔也が触らせてくれない。」
「…急にどうした。」
放課後の教室、委員会の書類を捌きながらぼやく。
クリアファイルに挟まったプリントの束は、夏休み後に控えている文化祭の要項についてだった。
このあいだのホームルームで決めたクラスの出し物は王道の『男女逆転メイド喫茶』
担任が厳しいタイプだと反対されるらしいのだが、うちの担任は比較的緩い。
「差別とかにならなければオッケー」と二つ返事で通ってしまった。
「だって凪にはあんなに抱きつくのに、こっちは手すら繋げてないんだよ。」
普段は誰彼構わず距離が近いくせに、恋愛は案外奥手なタイプなのか。
「あいつにも恥じらいがあったんだな。」と関心する凪の手元にあるバインダーは部員の名募。
今日は活動そのものはないが、文化祭の展示企画と活動報告の作業をするため一緒に残っていた。
先輩の推薦で次期部長になったようで、引退までの期間で色々教えて貰ってるとのこと。
「じゃあ、凪はどこまでしてるの?」
「…どこまでって。」
「まさか、付き合ってから結構経ってるのに、何もしてない訳ないよね?」
翔也と正式なお付き合いを始めてから一か月。
スキンシップを図ろうとしても、恥ずかしいのかあまりさせてもらえない。
僕としては、もう少し恋人らしいことをしてみたいし、男同士のあれこれを聞ける友達なんて一人だけだ。
「教えてくれないなら、模擬店は接客担当にしちゃおうかな。女子からの希望多かったんだよね。」
普通に尋ねてもツンデレな凪がすんなり教えてくれるはずもなく、実行委員の名義を使った職権を行使する。
実際、「千歳君可愛いし絶対似合うから!」などと女子の希望が多く届いている。
「ここで教えてくれたら裏方に回してあげるよ」と持ち掛けると、周りに僕たち以外がいないことを見渡してから、おずおずと口を開いた。
「…手はつないだし、この前は映画見て、飯作ったりとか。」
「プレゼント頑張って選んでたもんね。喜んでくれた?」
「…それなりに。」
「なるほどね。」と嬉しそうに相槌を打つ。
神崎さんの家で誕生日を祝ったこと。
凪の体格的に膝の上にでも乗せられてる様子が容易に想像できる。
なんだかんだ順風満帆な交際が続いていて安心だ。
「神崎さんって優しいしね。二人の時はどんな感じ?」
クールさを保っていた表情が徐々に崩れだす。
恥ずかし気に黙ってしまった。
今までに何度かからかったことはあっても、ここまでの反応をされたのは初めてだ。
手をつなぐどころか、キス、あるいはそれ以上まで進んでいるのか。
凪は意外と押しに弱い。
もう少しでいけるはず。
「…別に変わんねーよ。…ちょっといじめてくるけど。」
好きな子に意地悪したくなる心理。
神崎さんにもそういう所はあるらしい。
「他にないの?かっこいいところとか、あるんじゃない?」
「もう十分教えただろ。これ以上思い出させんな!」
調子に乗る僕が癪に障るのか、柄にもなく声を荒げる。
耳まで赤く染まった顔で言われても可愛いだけなんだけど。
これは神崎さんでなくても、弄りがいがある。
(これは進展あったな)
「こんな奴が彼氏なんて、翔也に同情したくなってきた。」
「ごめんって。お願いだから、翔也に変なこと言わないで。」
思春期の友達の色恋は聞いてて楽しい。
恋バナに興じる女子の気持ちも今ならわかる気がした。
「…急にどうした。」
放課後の教室、委員会の書類を捌きながらぼやく。
クリアファイルに挟まったプリントの束は、夏休み後に控えている文化祭の要項についてだった。
このあいだのホームルームで決めたクラスの出し物は王道の『男女逆転メイド喫茶』
担任が厳しいタイプだと反対されるらしいのだが、うちの担任は比較的緩い。
「差別とかにならなければオッケー」と二つ返事で通ってしまった。
「だって凪にはあんなに抱きつくのに、こっちは手すら繋げてないんだよ。」
普段は誰彼構わず距離が近いくせに、恋愛は案外奥手なタイプなのか。
「あいつにも恥じらいがあったんだな。」と関心する凪の手元にあるバインダーは部員の名募。
今日は活動そのものはないが、文化祭の展示企画と活動報告の作業をするため一緒に残っていた。
先輩の推薦で次期部長になったようで、引退までの期間で色々教えて貰ってるとのこと。
「じゃあ、凪はどこまでしてるの?」
「…どこまでって。」
「まさか、付き合ってから結構経ってるのに、何もしてない訳ないよね?」
翔也と正式なお付き合いを始めてから一か月。
スキンシップを図ろうとしても、恥ずかしいのかあまりさせてもらえない。
僕としては、もう少し恋人らしいことをしてみたいし、男同士のあれこれを聞ける友達なんて一人だけだ。
「教えてくれないなら、模擬店は接客担当にしちゃおうかな。女子からの希望多かったんだよね。」
普通に尋ねてもツンデレな凪がすんなり教えてくれるはずもなく、実行委員の名義を使った職権を行使する。
実際、「千歳君可愛いし絶対似合うから!」などと女子の希望が多く届いている。
「ここで教えてくれたら裏方に回してあげるよ」と持ち掛けると、周りに僕たち以外がいないことを見渡してから、おずおずと口を開いた。
「…手はつないだし、この前は映画見て、飯作ったりとか。」
「プレゼント頑張って選んでたもんね。喜んでくれた?」
「…それなりに。」
「なるほどね。」と嬉しそうに相槌を打つ。
神崎さんの家で誕生日を祝ったこと。
凪の体格的に膝の上にでも乗せられてる様子が容易に想像できる。
なんだかんだ順風満帆な交際が続いていて安心だ。
「神崎さんって優しいしね。二人の時はどんな感じ?」
クールさを保っていた表情が徐々に崩れだす。
恥ずかし気に黙ってしまった。
今までに何度かからかったことはあっても、ここまでの反応をされたのは初めてだ。
手をつなぐどころか、キス、あるいはそれ以上まで進んでいるのか。
凪は意外と押しに弱い。
もう少しでいけるはず。
「…別に変わんねーよ。…ちょっといじめてくるけど。」
好きな子に意地悪したくなる心理。
神崎さんにもそういう所はあるらしい。
「他にないの?かっこいいところとか、あるんじゃない?」
「もう十分教えただろ。これ以上思い出させんな!」
調子に乗る僕が癪に障るのか、柄にもなく声を荒げる。
耳まで赤く染まった顔で言われても可愛いだけなんだけど。
これは神崎さんでなくても、弄りがいがある。
(これは進展あったな)
「こんな奴が彼氏なんて、翔也に同情したくなってきた。」
「ごめんって。お願いだから、翔也に変なこと言わないで。」
思春期の友達の色恋は聞いてて楽しい。
恋バナに興じる女子の気持ちも今ならわかる気がした。
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