78 / 88
一日遅れ
しおりを挟む
(…ここで合ってるはず)
金属で作られた館銘板の名前と住所が一致しているかを確かめる。
龍一が大学生になった頃から住んでいるという14階建てのマンション。
以前、実家にはお邪魔したが、本人の自宅は初めてだ。
中に入るには、オートロック式となっている自動ドアを解錠してもらわなければならない。
呼び出しキーで数字を打ち込むと「お、来たか」と朗らかな声が聞こえた。
エレベーターに乗り目的の階を目指す。
彼の母に好物や作り方を聞いたり、プレゼントだって用意してきた。
我ながら気合が入っているとは思う。
そもそも大人がされて喜ぶ事とは何だろうか。
(…あいつらが余計なことまで言ってくるから)
一応先週の放課後に買いに行った際、付いてきた二人に聞いてみたがはいいが、碌な回答は返ってこなかった。
「恋人の誕生日っていったらあれだろ?身体にリボン巻くやつ。」
「…お前に聞いた俺が馬鹿だった。」
そんなものが通用するのはフィクションの世界だけだ。
第一、男がやっている絵面など誰も見たくない。
「えー、結構いいと思うけどな。いつもなかなか素直になれないんだし、ギャップ目指そ。」
「おい、翔也に変な入れ知恵するな。」
ようやく関係が修復した二人は、俺をからかう時の結束力がより強まった気がする。
結局、数十分間あれやこれやと悩んで決めたのは『癒し系グッズ』
普段使い出来る物なら困らないだろう。
「上がってくれ。」
「お、お邪魔します。」
10階の廊下を進み、表札の下にあるインターホンを押す。
間髪入れずに、黒いスウェット姿の龍一が出てきた。
スリッパに履き替え、1LDKの部屋を案内される。
広々としたリビングルームはシンプルながらも清潔感があり、家具も落ち着いたヴィンテージ系統の色でまとめられていた。
(…こういうのが好きなのか)
「暑い中大変だっただろ?今エアコン点けたから。」
サーキュレーターで循環させた空気が、夏のうだるような湿気を緩和してくれる。
一人暮らしにしては余裕のある木製の枠で作られたソファー。
革のカバーがかかったクッションは柔らかく、肌触りも滑らかだ。
「映画でも見るか?」
俺の隣に龍一が腰掛けるまではよかったが、ソファーの面積の割に距離が近い。
当の本人は気にもせずという顔で、サブスクのリモコンを操作している。
「…あの、近くないですか。」
「何で敬語なんだよ。」
くすぐったそうに笑う龍一は完全に確信犯だ。
自体だと外出先よりもリラックス出来る分、本来の姿が出ているのだろう。
誕生日は過ぎたけれど、今日ぐらいは許すべきだろうか。
「…嫌とは言ってないけど。」
「ありがとな。」
(…映画どころじゃねえよ)
目の前に映されたアクションシーンに、ひとまずは集中したい。
一日遅れの宴はまだ始まったばかり。
金属で作られた館銘板の名前と住所が一致しているかを確かめる。
龍一が大学生になった頃から住んでいるという14階建てのマンション。
以前、実家にはお邪魔したが、本人の自宅は初めてだ。
中に入るには、オートロック式となっている自動ドアを解錠してもらわなければならない。
呼び出しキーで数字を打ち込むと「お、来たか」と朗らかな声が聞こえた。
エレベーターに乗り目的の階を目指す。
彼の母に好物や作り方を聞いたり、プレゼントだって用意してきた。
我ながら気合が入っているとは思う。
そもそも大人がされて喜ぶ事とは何だろうか。
(…あいつらが余計なことまで言ってくるから)
一応先週の放課後に買いに行った際、付いてきた二人に聞いてみたがはいいが、碌な回答は返ってこなかった。
「恋人の誕生日っていったらあれだろ?身体にリボン巻くやつ。」
「…お前に聞いた俺が馬鹿だった。」
そんなものが通用するのはフィクションの世界だけだ。
第一、男がやっている絵面など誰も見たくない。
「えー、結構いいと思うけどな。いつもなかなか素直になれないんだし、ギャップ目指そ。」
「おい、翔也に変な入れ知恵するな。」
ようやく関係が修復した二人は、俺をからかう時の結束力がより強まった気がする。
結局、数十分間あれやこれやと悩んで決めたのは『癒し系グッズ』
普段使い出来る物なら困らないだろう。
「上がってくれ。」
「お、お邪魔します。」
10階の廊下を進み、表札の下にあるインターホンを押す。
間髪入れずに、黒いスウェット姿の龍一が出てきた。
スリッパに履き替え、1LDKの部屋を案内される。
広々としたリビングルームはシンプルながらも清潔感があり、家具も落ち着いたヴィンテージ系統の色でまとめられていた。
(…こういうのが好きなのか)
「暑い中大変だっただろ?今エアコン点けたから。」
サーキュレーターで循環させた空気が、夏のうだるような湿気を緩和してくれる。
一人暮らしにしては余裕のある木製の枠で作られたソファー。
革のカバーがかかったクッションは柔らかく、肌触りも滑らかだ。
「映画でも見るか?」
俺の隣に龍一が腰掛けるまではよかったが、ソファーの面積の割に距離が近い。
当の本人は気にもせずという顔で、サブスクのリモコンを操作している。
「…あの、近くないですか。」
「何で敬語なんだよ。」
くすぐったそうに笑う龍一は完全に確信犯だ。
自体だと外出先よりもリラックス出来る分、本来の姿が出ているのだろう。
誕生日は過ぎたけれど、今日ぐらいは許すべきだろうか。
「…嫌とは言ってないけど。」
「ありがとな。」
(…映画どころじゃねえよ)
目の前に映されたアクションシーンに、ひとまずは集中したい。
一日遅れの宴はまだ始まったばかり。
0
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。



寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる