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拗らせ片想い
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「…暑い。」
六限の体育が終わり、着替えを終えた教室には制汗シートの臭いが蔓延している。
設定温度が28℃に管理されたエアコンでは暑さはしのげず、クラスメイト達もノートをうちわ代わりにして首元を仰いでいた。
「凪ってこの後暇?」
今日は特に予定もないし、バスケ部もオフらしい。
久しぶりに三人で寄り道でもしようかと湊に視線を送ると、申し訳なさそうに目尻を下げた。
「ごめん、塾があって。」
いつもなら二つ返事で了解するはずだし、翔也からの誘いなら埋め合わせをしようとしてくる。
塾があるのは事実だと思うが、意図的に距離を取っているようにも見えた。
多分、このあいだの事を気にしているのだろうけど。
「…いっそ梅雨入りしてくれた方が楽なのに。」
「えー、ジメジメしてんの嫌だ。」
真逆の意見を愚痴りながら炎天下の中、外に出て向かったのは有名ハンバーガーのチェーン店。
ピークを過ぎ、人の少なくなったイートインスペースに受け取った商品を置く。
「凪は王道派か。」
ストローで吸い上げたバニラシェイク。
小さな氷の粒の混じったアイスのようなひんやりとした感触が喉を伝う。
「それ美味いのか?」
「なんかパチパチする飴が入ってて美味いよ。」
翔也が飲んでいるのはフロートスタイルの炭酸飲料。
青色のせいで味の想像がイマイチつかない。
「これが部活の予定表な。」
鞄から取り出したのは、B4サイズに印刷された日程表。
試合の日程や練習メニューまで細かく記載されている。
夏休み期間の前後を利用したオープンキャンパス、先週の三者面談で貰ったパンフレットと予め預かっていた湊のスケジュールを基にどの大学にするか決めていく。
翔也も案外将来については考えているようで「子供好きだし、先生目指すわ」と教育学部のある学校について調べていた。
「なんか、最近湊に避けられてる気がするんだけど。…俺、嫌われたのかな。」
(…むしろ、逆なんだよ)
この二人が幼馴染であったが翔也は忘れていた。
反対に、湊は嘘をついて初対面のフリを続けた結果、過去と人から好意を寄せられたことに板挟みになり、自己嫌悪を重ねている。
「…俺も詳しくはわからねえけど、お前に心配かけさせたくなかったんだろ。酷くなったら龍一にも相談しておくから。」
「ありがとな、今はそっとしておく。…てか、ちゃんと名前で呼んでたんだな。」
完全に無意識だった。
あからさまにニヤニヤしているのが、やや鼻につく。
さっきまでの悩みはどこへ行ったのか。
「もう次の予定決まってんのか?」
「…まあ」
次の予定とはいっても、服を買いにいく約束をしているだけだ。
「参考にしたいからさ、神崎さんと何してんのか教えてくれない?」
「参考って、好きな奴でもいんのかよ。」
「い、いや、いつか俺にもできるかもしんないし。」
湊とは対称的にこいつは嘘が下手だ。
この動揺の正体を早く自覚してくれと思う。
「…別に普通だよ。」
「普通がわかんねえの。デートの邪魔はしないから、付いてってもいい?ほら、初めてのおつかいのカメラマンみたいな感じで。」
「…絶対に来るな。」
いつも通りに戻った翔也にホッとしつつ、どうしてこうも人の恋路を聞きたがるのか頭を悩ませるのであった。
六限の体育が終わり、着替えを終えた教室には制汗シートの臭いが蔓延している。
設定温度が28℃に管理されたエアコンでは暑さはしのげず、クラスメイト達もノートをうちわ代わりにして首元を仰いでいた。
「凪ってこの後暇?」
今日は特に予定もないし、バスケ部もオフらしい。
久しぶりに三人で寄り道でもしようかと湊に視線を送ると、申し訳なさそうに目尻を下げた。
「ごめん、塾があって。」
いつもなら二つ返事で了解するはずだし、翔也からの誘いなら埋め合わせをしようとしてくる。
塾があるのは事実だと思うが、意図的に距離を取っているようにも見えた。
多分、このあいだの事を気にしているのだろうけど。
「…いっそ梅雨入りしてくれた方が楽なのに。」
「えー、ジメジメしてんの嫌だ。」
真逆の意見を愚痴りながら炎天下の中、外に出て向かったのは有名ハンバーガーのチェーン店。
ピークを過ぎ、人の少なくなったイートインスペースに受け取った商品を置く。
「凪は王道派か。」
ストローで吸い上げたバニラシェイク。
小さな氷の粒の混じったアイスのようなひんやりとした感触が喉を伝う。
「それ美味いのか?」
「なんかパチパチする飴が入ってて美味いよ。」
翔也が飲んでいるのはフロートスタイルの炭酸飲料。
青色のせいで味の想像がイマイチつかない。
「これが部活の予定表な。」
鞄から取り出したのは、B4サイズに印刷された日程表。
試合の日程や練習メニューまで細かく記載されている。
夏休み期間の前後を利用したオープンキャンパス、先週の三者面談で貰ったパンフレットと予め預かっていた湊のスケジュールを基にどの大学にするか決めていく。
翔也も案外将来については考えているようで「子供好きだし、先生目指すわ」と教育学部のある学校について調べていた。
「なんか、最近湊に避けられてる気がするんだけど。…俺、嫌われたのかな。」
(…むしろ、逆なんだよ)
この二人が幼馴染であったが翔也は忘れていた。
反対に、湊は嘘をついて初対面のフリを続けた結果、過去と人から好意を寄せられたことに板挟みになり、自己嫌悪を重ねている。
「…俺も詳しくはわからねえけど、お前に心配かけさせたくなかったんだろ。酷くなったら龍一にも相談しておくから。」
「ありがとな、今はそっとしておく。…てか、ちゃんと名前で呼んでたんだな。」
完全に無意識だった。
あからさまにニヤニヤしているのが、やや鼻につく。
さっきまでの悩みはどこへ行ったのか。
「もう次の予定決まってんのか?」
「…まあ」
次の予定とはいっても、服を買いにいく約束をしているだけだ。
「参考にしたいからさ、神崎さんと何してんのか教えてくれない?」
「参考って、好きな奴でもいんのかよ。」
「い、いや、いつか俺にもできるかもしんないし。」
湊とは対称的にこいつは嘘が下手だ。
この動揺の正体を早く自覚してくれと思う。
「…別に普通だよ。」
「普通がわかんねえの。デートの邪魔はしないから、付いてってもいい?ほら、初めてのおつかいのカメラマンみたいな感じで。」
「…絶対に来るな。」
いつも通りに戻った翔也にホッとしつつ、どうしてこうも人の恋路を聞きたがるのか頭を悩ませるのであった。
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