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番外編 二度目の初恋 ※湊視点です
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「面白かったな。特に、最後の必殺技!」
凪に貰った映画館の限定チケット、約二時間の上映を終えて感想を語る翔也は、未だ興奮冷めやらぬと言わんばかりの状態だ。
男同士で行くにはやっぱり泣ける恋愛ストーリーより、アクションファンタジーの方がいい。
人気アニメの劇場版グッズを買ってから、シアターを後にする。
「この後どうする?」
「買い物でもしようか。翔也は行きたいお店ある?」
ショッピングモールには時間を潰せそうな所が沢山ある。
地下からエスカレーターで三階まで上がり、向かったのはスポーツ用品店。
ウェアやシューズはもちろんのこと、アウトドア用のバックなども取り揃えていた。
「新しいバッシュ探しててさ。」
そう言いながらお目当てのサイズを手に取り、靴を履き替える。
バッシュというのは「バスケットシューズ」の略称で、毎日使っていると数ヶ月で寿命が尽きてしまうらしい。
黒のラインが入った鮮やかな色が眩しく反射した。
(…変わらないね、君は)
太陽のような輝き、昔から彼は赤色がよく似合う。
物語の主人公に憧れるのは今も同じなのだろうか。
「…通知?」
「凪から写真が届いてたよ。」
スマホをタップしてメールアプリを開くと温泉街の画像が出てきた。
二人は草津に旅行に行っているから、その風景だろう。
写真部に所属しているだけあって撮り慣れている。
一つ文句があるとすれば、絶対撮ってるであろう神崎さんとのツーショットの存在。
まあ、あのツンデレ君が送ってくれることは多分ないだろうけど。
「凪って神崎さんの話になるとムキになっちゃってさ、結構可愛いところあるんだよな。
前より笑ってくれるようになったし。」
いつも元気が取り柄の翔也でも、凪が急に入院したと知った時には落ち込んでいた。
僕に振り向いてほしい、君の一番でありたい。
そんな嫉妬が心の奥で邪魔をする。
(…あれ?)
バッシュを箱にしまったのは覚えている。
考え事をしている間に見失ったようだ。
翔也を探そうと辺りを一瞥すると、店の外の子供に話しかけていた。
「急にいなくなったから心配したよ。」
「ごめん。この子が泣いてたから。」
「迷子かな?」
四歳ぐらいと思われる幼児に話を聞くと、店を移動する道中で母親とはぐれたという。
ショッピングモールは広いし、むやみに動いてしまえば小さい子は来た道が分からなくても仕方ないだろう。
「まずは迷子センターに行こう。確か、一階にあったと思うから。」
「分かった。」
「本当に一人にしておけないよ。もう少しで迷子が二人になるところだったんだからね。」
「そこが君の良さだけど。」付け足して窘める。
面倒だと思わず、手を差し伸べる姿にかつての僕も助けられた。
子供を泣き止ませ、「ママはすぐ見つかるよ。あの兄ちゃんと一緒に探そうな。」と僅かな間に心を掴む。
(…憶えてないよね、僕は変わっちゃったから。)
今よりもひ弱で、女の子っぽい見た目をしていた僕は幼稚園の頃、いじめっ子達にとってまさしく「ターゲット」だった。
言い返せなくて縮こまっていると、「ヒーロー参上!」と大きな声で駆けつけてくれた少年がいた。
当時流行っていた特撮番組の真似だったけれど、その時の僕にはとても頼もしくて、初めての恋心を知った瞬間でもあった。
あれから、十年以上の時を経て
「よし、行こうか。」
僕は二度目の恋を君にしたんだ。
凪に貰った映画館の限定チケット、約二時間の上映を終えて感想を語る翔也は、未だ興奮冷めやらぬと言わんばかりの状態だ。
男同士で行くにはやっぱり泣ける恋愛ストーリーより、アクションファンタジーの方がいい。
人気アニメの劇場版グッズを買ってから、シアターを後にする。
「この後どうする?」
「買い物でもしようか。翔也は行きたいお店ある?」
ショッピングモールには時間を潰せそうな所が沢山ある。
地下からエスカレーターで三階まで上がり、向かったのはスポーツ用品店。
ウェアやシューズはもちろんのこと、アウトドア用のバックなども取り揃えていた。
「新しいバッシュ探しててさ。」
そう言いながらお目当てのサイズを手に取り、靴を履き替える。
バッシュというのは「バスケットシューズ」の略称で、毎日使っていると数ヶ月で寿命が尽きてしまうらしい。
黒のラインが入った鮮やかな色が眩しく反射した。
(…変わらないね、君は)
太陽のような輝き、昔から彼は赤色がよく似合う。
物語の主人公に憧れるのは今も同じなのだろうか。
「…通知?」
「凪から写真が届いてたよ。」
スマホをタップしてメールアプリを開くと温泉街の画像が出てきた。
二人は草津に旅行に行っているから、その風景だろう。
写真部に所属しているだけあって撮り慣れている。
一つ文句があるとすれば、絶対撮ってるであろう神崎さんとのツーショットの存在。
まあ、あのツンデレ君が送ってくれることは多分ないだろうけど。
「凪って神崎さんの話になるとムキになっちゃってさ、結構可愛いところあるんだよな。
前より笑ってくれるようになったし。」
いつも元気が取り柄の翔也でも、凪が急に入院したと知った時には落ち込んでいた。
僕に振り向いてほしい、君の一番でありたい。
そんな嫉妬が心の奥で邪魔をする。
(…あれ?)
バッシュを箱にしまったのは覚えている。
考え事をしている間に見失ったようだ。
翔也を探そうと辺りを一瞥すると、店の外の子供に話しかけていた。
「急にいなくなったから心配したよ。」
「ごめん。この子が泣いてたから。」
「迷子かな?」
四歳ぐらいと思われる幼児に話を聞くと、店を移動する道中で母親とはぐれたという。
ショッピングモールは広いし、むやみに動いてしまえば小さい子は来た道が分からなくても仕方ないだろう。
「まずは迷子センターに行こう。確か、一階にあったと思うから。」
「分かった。」
「本当に一人にしておけないよ。もう少しで迷子が二人になるところだったんだからね。」
「そこが君の良さだけど。」付け足して窘める。
面倒だと思わず、手を差し伸べる姿にかつての僕も助けられた。
子供を泣き止ませ、「ママはすぐ見つかるよ。あの兄ちゃんと一緒に探そうな。」と僅かな間に心を掴む。
(…憶えてないよね、僕は変わっちゃったから。)
今よりもひ弱で、女の子っぽい見た目をしていた僕は幼稚園の頃、いじめっ子達にとってまさしく「ターゲット」だった。
言い返せなくて縮こまっていると、「ヒーロー参上!」と大きな声で駆けつけてくれた少年がいた。
当時流行っていた特撮番組の真似だったけれど、その時の僕にはとても頼もしくて、初めての恋心を知った瞬間でもあった。
あれから、十年以上の時を経て
「よし、行こうか。」
僕は二度目の恋を君にしたんだ。
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