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take 3 独占の時間
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午後を過ぎ、俺達は休憩をしようと水族館を出て、とあるカフェに入店した。
洒落たテーブルに設置されたパラソル。
オープンテラスの座席に凪を待たせ、予め頼んでおいた品をカウンターまで取りに行く。
「一人ですか?」
「…いや、一緒に来てる人がいるんで。」
トレーに飲み物とスイーツを乗せて戻る途中、見知らぬ二人組の女子高生が凪に話しかけているのが目に入った。
おもむろにスマホを突き出していることから、連絡先の交換でも図っているのだろう。
ベタベタと容赦なく迫る様子が無性に癪に触る。
気づいた頃には体が先に動いていた。
(俺、…こんな独占欲あったか)
「凪、遅くなって悪い。」
ツレがいることを知り、女子高生はたじろぎながらもその場を後にする。
凪は呆然とその光景を見つめていた。
「…今の、何だったんだろ。」
「無自覚も大概にしろよ。」と心の中で悪態をつく。
どうも凪は、自分のことになると卑下する癖がある。
逆ナンにあうなんて思ってもみなかったのか。
「龍一、…もしかして、嫉妬してる?」
苛立ちが隠しきれていなかったようだ。
誤魔化すように俺は、パンケーキをナイフで切り分け、口に運ぶ。
シュワシュワと溶けていくメレンゲ生地。
喉を通る甘さをアイスティーが潤す。
「さあ、どうだかな。」
「…そっちだって、モテるくせに。さっきも龍一のことばっか見てた。」
不満気に愚痴を零す凪の口元を拭いてやる。
スイーツを食べ終え、荷物をまとめてから先を急ぐ。
落ち始める太陽が空を橙色に照らした。
100mを超える大観覧車。
人混みを気にせずゆっくりするには丁度いい。
「…綺麗。」
「夜桜もいいだろ?」
ライトアップされた桜並木と噴水のパフォーマンス。
景色を上から一望すると、街が星屑のように輝いていた。
「お前を独り占め出来る時間も終わっちゃうな。」
お互いが忙しくなる以上、普通のカップルより会える頻度は少ない。
「こっち来いよ。」と手招きすると、凪は向かいのシートから俺の隣に移る。
顔を近づけると反射的に目を閉じた。
そっと顎を寄せ、勢いのままに口を塞ぐ。
唇を離すと、凪は顔を埋めて黙ってしまう。
「俺が見たいのはペンギンじゃなくて、凪なんだが。」
「…急にキスした龍一が悪い。」
袋に入ったぬいぐるみが盾替わりに割り込む。
優しく後頭部を撫でると、抵抗する力が徐々に和らいだ。
キスの一つでここまでの反応をされると、この先はどうなってしまうのだろうかという期待感が胸の内を包む。
「今までは患者だから我慢してたけど、もう容赦しないからな。」
「…俺の身が持たねえよ。」
観覧車が降りるまで残り10分。
欲に任せ、凪が俺の物であるということを証明するように再び距離を縮める。
今度はちゃんと申告してからにしよう。
「無言は肯定と受け取っていいのか?」
「…見ればわかるだろ。」
ぬいぐるみがどかされ、「一々聞くな」と肯定の合図が下される。
恨みがましかった嫉妬に今は初めて共感出来た。
洒落たテーブルに設置されたパラソル。
オープンテラスの座席に凪を待たせ、予め頼んでおいた品をカウンターまで取りに行く。
「一人ですか?」
「…いや、一緒に来てる人がいるんで。」
トレーに飲み物とスイーツを乗せて戻る途中、見知らぬ二人組の女子高生が凪に話しかけているのが目に入った。
おもむろにスマホを突き出していることから、連絡先の交換でも図っているのだろう。
ベタベタと容赦なく迫る様子が無性に癪に触る。
気づいた頃には体が先に動いていた。
(俺、…こんな独占欲あったか)
「凪、遅くなって悪い。」
ツレがいることを知り、女子高生はたじろぎながらもその場を後にする。
凪は呆然とその光景を見つめていた。
「…今の、何だったんだろ。」
「無自覚も大概にしろよ。」と心の中で悪態をつく。
どうも凪は、自分のことになると卑下する癖がある。
逆ナンにあうなんて思ってもみなかったのか。
「龍一、…もしかして、嫉妬してる?」
苛立ちが隠しきれていなかったようだ。
誤魔化すように俺は、パンケーキをナイフで切り分け、口に運ぶ。
シュワシュワと溶けていくメレンゲ生地。
喉を通る甘さをアイスティーが潤す。
「さあ、どうだかな。」
「…そっちだって、モテるくせに。さっきも龍一のことばっか見てた。」
不満気に愚痴を零す凪の口元を拭いてやる。
スイーツを食べ終え、荷物をまとめてから先を急ぐ。
落ち始める太陽が空を橙色に照らした。
100mを超える大観覧車。
人混みを気にせずゆっくりするには丁度いい。
「…綺麗。」
「夜桜もいいだろ?」
ライトアップされた桜並木と噴水のパフォーマンス。
景色を上から一望すると、街が星屑のように輝いていた。
「お前を独り占め出来る時間も終わっちゃうな。」
お互いが忙しくなる以上、普通のカップルより会える頻度は少ない。
「こっち来いよ。」と手招きすると、凪は向かいのシートから俺の隣に移る。
顔を近づけると反射的に目を閉じた。
そっと顎を寄せ、勢いのままに口を塞ぐ。
唇を離すと、凪は顔を埋めて黙ってしまう。
「俺が見たいのはペンギンじゃなくて、凪なんだが。」
「…急にキスした龍一が悪い。」
袋に入ったぬいぐるみが盾替わりに割り込む。
優しく後頭部を撫でると、抵抗する力が徐々に和らいだ。
キスの一つでここまでの反応をされると、この先はどうなってしまうのだろうかという期待感が胸の内を包む。
「今までは患者だから我慢してたけど、もう容赦しないからな。」
「…俺の身が持たねえよ。」
観覧車が降りるまで残り10分。
欲に任せ、凪が俺の物であるということを証明するように再び距離を縮める。
今度はちゃんと申告してからにしよう。
「無言は肯定と受け取っていいのか?」
「…見ればわかるだろ。」
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