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仲間
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「お前らは、別々に来ないといけないルールでもあるのか?」
神崎先生が休みの日、呆れたように息を吐く俺の前には「恋愛講座の二回目だよ。」と返す湊がいる。
二人が同時に来たのは片手で数えられる程度、別に不仲という訳でもないのだが。
足が自由に動かせるようになった分、部屋の中を移動するぐらいは出来る。
電気ケトルで湯を沸かし、ティーパックを入れたカップに注ぐ。
補充してもらったハーブティーの香りはミントに似た爽やかな風味だ。
お茶請けとして貰ったクッキーも一緒に出してやる。
「アドバイスは参考にしてくれた?」
「素直に甘えてみたら?」と前回言っていたか。
結局、物に頼る形になったとはいえ、自分に正直になれたかもしれない。
そういう意味では湊の助言もあてにした。
「…プレゼント、作った。」
「まさか、愛の告白!?」
「…勝手に妄想を広げるな。」
クラスの女子が恋バナをするように「違うの?」と湊が口を尖らせる。
さっき部屋に持ち帰った花束、作業中だったせいかサイドテーブルに置きっぱなしになっていた。
「相変わらず器用だね。神崎さんも喜ぶよ。」
完成まではあと少し、残りは細かい装飾を足すぐらい。
ただ、渡すにしてもタイミングが見つからないのが問題だ。
「でも、ちゃんと手当はしなきゃダメだよ。」
カッターで軽く切ってしまった箇所に絆創膏を巻きつける。
出血量も多くないし、すぐに治るだろう。
「いいよね。二人が羨ましい。」
「…羨ましい?」
どこか含みのある言い方に疑問が浮かぶ。
今までの茶化した雰囲気とは打って変わった、真面目な顔。
その目はここには居ない誰かに向けられているようだ。
「それが本題か?」
クッキーを口に入れながら俺は聞く。
渇いた喉を冷めかけのハーブティーが潤した。
「僕にも好きな人がいる。単純だけど真っ直ぐないい子。でも、無茶ばっかりするから放っておけなくて。」
(…あいつのことだな。)
片思いの相手は、おそらく翔也。
「だから、一人で来たのか?」
「仲間に元気づけてもらおうと思って。」
「僕は何があっても凪の味方だから。」と湊は頷く。
不意打ちで恥ずかしいことを明言されて、こっちまで照れそうになるのを抑える。
恋をする者同士、案外世間は狭いのかもしれない。
「…協力はする。お前には借りもあるし。」
「ありがと。これ、貰ってくれる?」
祈願と刻印が入った小さな勾玉のキーホルダー、「お互いの成就を願って」とのことらしい。
付け焼き刃の気休め、根拠もない力が自然と漲る。
「翔也の場合、友情と恋愛の違いも分かってないだろうしな。」
「あはは、それは同感。」
一人じゃない、そんな安心感が心に飛来した。
「じゃあ、凪はどんな事されるとキュンとする?」
湊は意地の悪い笑みを浮かべ耳打ちする。
相手を意識してしまう行動、自分の醜態が悉く記憶から蘇った。
「参考資料に協力してね。」
数分前の言葉を撤回したい。
珍しく真面目な雰囲気に惑わされたのがいけなかった。
「神崎さんなら沢山あるでしょ。」
俺の願いも虚しく、『資料』という名目での事情聴取が行われてしまうのであった。
神崎先生が休みの日、呆れたように息を吐く俺の前には「恋愛講座の二回目だよ。」と返す湊がいる。
二人が同時に来たのは片手で数えられる程度、別に不仲という訳でもないのだが。
足が自由に動かせるようになった分、部屋の中を移動するぐらいは出来る。
電気ケトルで湯を沸かし、ティーパックを入れたカップに注ぐ。
補充してもらったハーブティーの香りはミントに似た爽やかな風味だ。
お茶請けとして貰ったクッキーも一緒に出してやる。
「アドバイスは参考にしてくれた?」
「素直に甘えてみたら?」と前回言っていたか。
結局、物に頼る形になったとはいえ、自分に正直になれたかもしれない。
そういう意味では湊の助言もあてにした。
「…プレゼント、作った。」
「まさか、愛の告白!?」
「…勝手に妄想を広げるな。」
クラスの女子が恋バナをするように「違うの?」と湊が口を尖らせる。
さっき部屋に持ち帰った花束、作業中だったせいかサイドテーブルに置きっぱなしになっていた。
「相変わらず器用だね。神崎さんも喜ぶよ。」
完成まではあと少し、残りは細かい装飾を足すぐらい。
ただ、渡すにしてもタイミングが見つからないのが問題だ。
「でも、ちゃんと手当はしなきゃダメだよ。」
カッターで軽く切ってしまった箇所に絆創膏を巻きつける。
出血量も多くないし、すぐに治るだろう。
「いいよね。二人が羨ましい。」
「…羨ましい?」
どこか含みのある言い方に疑問が浮かぶ。
今までの茶化した雰囲気とは打って変わった、真面目な顔。
その目はここには居ない誰かに向けられているようだ。
「それが本題か?」
クッキーを口に入れながら俺は聞く。
渇いた喉を冷めかけのハーブティーが潤した。
「僕にも好きな人がいる。単純だけど真っ直ぐないい子。でも、無茶ばっかりするから放っておけなくて。」
(…あいつのことだな。)
片思いの相手は、おそらく翔也。
「だから、一人で来たのか?」
「仲間に元気づけてもらおうと思って。」
「僕は何があっても凪の味方だから。」と湊は頷く。
不意打ちで恥ずかしいことを明言されて、こっちまで照れそうになるのを抑える。
恋をする者同士、案外世間は狭いのかもしれない。
「…協力はする。お前には借りもあるし。」
「ありがと。これ、貰ってくれる?」
祈願と刻印が入った小さな勾玉のキーホルダー、「お互いの成就を願って」とのことらしい。
付け焼き刃の気休め、根拠もない力が自然と漲る。
「翔也の場合、友情と恋愛の違いも分かってないだろうしな。」
「あはは、それは同感。」
一人じゃない、そんな安心感が心に飛来した。
「じゃあ、凪はどんな事されるとキュンとする?」
湊は意地の悪い笑みを浮かべ耳打ちする。
相手を意識してしまう行動、自分の醜態が悉く記憶から蘇った。
「参考資料に協力してね。」
数分前の言葉を撤回したい。
珍しく真面目な雰囲気に惑わされたのがいけなかった。
「神崎さんなら沢山あるでしょ。」
俺の願いも虚しく、『資料』という名目での事情聴取が行われてしまうのであった。
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