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休日

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市街地から少し外れた位置に佇む地上五階、四つのエリアに分かれた巨大なショッピングモール。
マップを片手に早速目的の店舗へと向かう。

「…どう?」

「お、かっこいいじゃん。」

まずは服屋で夏物を揃える。
オーバーパーカーやデニム、ジャケットを重ねた、我ながら納得いく組み合わせ。
本当は可愛いと言いたいところだが相手は思春期の男子。
そこはぐっと我慢して褒めてやる。
駿も好みのカラーだったのか、鏡の前でくるりと回ってみせた。

「凌雅も買えよ。ただでさえ私服のレパートリーないんだから。」

突っ立っていた凌雅を無理矢理試着室に押し込む。
こいつのファッションといえば、スーツかパジャマ代わりのスウェットぐらい。(今日もネクタイを取っただけのほぼスーツ姿)
営業用の仮面を付けていない鋭い目つき、オールバックに分けた前髪。
いかにも『ヤクザ』な格好のせいで、背中の刺青が隠れているのにもかかわらず、すれ違う人に次々道を譲られる。
ルックス自体はいい線だし、お洒落に気を遣えばモテそうなのだけど。

(…モテる凌雅を見るのも何か癪だな)

「布一枚で4000円もするのかよ。」

「布って言うな。」

カットソーとチノパン数着を俺の独断で選び、会計を済ませる。
他にもスーパーで生活必需品やら食材を買い、両手が大量の袋で塞がった。

「そろそろ昼飯行く?」

「席埋まってるだろ。人混みは嫌いだ。」

「待つのも面倒臭いし、先に遊ぶか。」

人混みが嫌だという凌雅の意見も一理あるので、フードコートが空くまでの間はゲームセンター遊ぶことに。
チカチカと眩しいライトや欲を誘う景品、子供にとって夢のような場所。

「パパ、あのネコさん取って!」

「ぬいぐるみなら家にもあるでしょ。」

「いいじゃないか。せっかく来たんだから。」

女の子のねだったぬいぐるみを取るため、UFOキャッチャーに奮闘する父と「甘やかしすぎ」と窘める母。
そんな光景を駿が寂しそうに見つめていた。
ゲーセンに来たのも初めてだし、普通の家族への憧れが人一倍強いのかもしれない。

(…こんな風に、両親と出かけたこともないんだろうな)

「さっきからどうした?」

「…な、何でもねえよ!」

凌雅が俯く表情を除くと慌てて首を横に振る。
気持ちを察してくれただけ、頑張った方だ。
両替機から出てきた百円玉を携え、準備は完了。
庶民の娯楽というものをたっぷり味わわせてやろう。

「ここは一つ勝負といかないか?」

興が乗ってきたうちに提案を思いつく。

「相応の賭けはあるんだろうな。」

「敗者は勝者の命令に絶対従う。これでどう?」

「…乗った。」

駿と交互にチームを組んでポイントの合計で競う。
命令は『今日使った金額全ての支払い』
きっと凌雅も同じことを考えたはず。

「裕也、あれやってみたい。」

「よし、第一ラウンドはマリカーだな。」

指差したのは有名なレースゲーム。
何だかんだ一番楽しんでいるのは俺の方だった。



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