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情報屋

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「例の件、無事に特定できました。」 

参謀担当の部下である、荻原が印刷した大量の書類は、住宅の売買状況とその入居者について。
都心から外れた築五十年のボロアパートこそが、母親の居場所だ。

「社長夫人がコンビニでパートとはいい気味だ。」

「辛うじて姉の学校だけは通えているようですが、専ら噂になっていると思いますよ。」

車やマンションを引き払った日付、クレジットカードの停止。さらには口座の番号まで。
おそらく自己破産をしたであろう形跡が残っている。

「おそらく自己破産が濃厚かと。」

但し、借金が完全に無くなったということではない。
俺が持つ契約書に書かれた『連帯保証人』の存在が鍵になる。

「あいつらを呼び出せ。そうすれば、連帯保証人は解除してやる。」

桜川の旧友だと名乗った男にそう伝えて協力を煽った。
彼が寝泊まりするネカフェも特定済みで、時期に接触するだろう。
裏切られたショックで募った恨みは、上手く使えば優秀な駒として動いてくれる。

「こちらが周辺の防犯カメラをハッキングしたものです。」

「一日でよく嗅ぎつけたな。」

「現代は情報戦が制するのですよ。」

彼は暴行事件の濡れ衣により解雇された元刑事。
途方に暮れていたところを捜査能力を見込んだ親父が拾い、今は情報屋の職に就いた。


「さて、若の本題に移りましょうか。」

「…は?」

「老人ホームの入居者を調べておきました。会わせてあげたいんですよね、ばあさんに。」

「会長に似てますよ。情を捨てきれないところ。」と荻原が笑う。

「手配はこちらで進めておきます。明日は会社も休みなのでしょう?家族サービスでもしてあげてくださいね、。」

語尾をやたら強調するが、拳銃を与える大人のどこが父親なのだろうか。


「まずは服屋行って~、俺も新しい靴買いたいな。あ、このクレープ屋美味そう!駿はクレープ食ったことある?」

「…ない。」

「じゃあ一番でかいやつ頼もうぜ。」

「いいのか?」

「テスト100点だったご褒美ってことで。財布は全部凌雅持ちだから大丈夫!」

家に帰ると、俺から休みを告げていないのにもかかわらず、裕也は既に行き先を決め、ショッピングモールのマップを見ながら話に花を咲かせていた。
最初は怪訝そうな表情を浮かべた駿も『ご褒美』の文字にすっかり乗り気だ。

「おい、どこが大丈夫だ。人を勝手にATMにすんじゃねえ。」

「凌雅のケチ。いたいけな子供の望みを叶えてあげようとは思わないのかよ。」

「明らかにお前の趣向品も混じってただろうが。」

「…バレた。」

(…俺にも情が沸いたのか?)

考えてもわからない。
ひとまず荻原の言葉のせいにしておこう。

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