エリートヤクザの訳あり舎弟

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笑顔

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「…本当に早く来やがったな。」

「接待以外で外食なんて珍しいから。」

集合場所にしていたチェーン店では既に裕也が待っていた。
会社の重鎮との外食にかかる接待費用の捻出のせいで、家では基本節約思考。
「ヤクザなのに」とよく突っ込まれるが、利益のためなら仕方がない。

「…おい凌雅。まさか回転寿司食わせる気か?」

「それがどうしたんだよ。ガキはああいうの好きって親父が。」

「相手は御曹司様だぜ。絶対お高い店しか行ったことない。」

平日の夕方となれば比較的空いている。
自動券売機で予約番号を入力し、伝票の席に着く。

「…寿司が回ってる。しかも画面が!」

(…これはカウンターの店しか行ったことねえパターンだ)

レーンを流れる皿と上部に設置されたパネル。
初めて目にかかった庶民の店の光景に見せた、ここ一番の反応に、つい吹き出してしまった。

「…な、何だよ。」

「いや、マジで知らねえんだなって。」

ばつが悪そうに視線を反らすが、もう遅い。
「…どうしたらいいんだ」と裕也を引き寄せる。
すると手早くパネルを操作し、間もなくアナウンスが響いた。

「要は魚を食わせなければいい。」

専用のレーンに乗って運ばれてきたのは牛カルビ、ハンバーグといった肉類。
それに、ラーメンやフライドポテトなどのサイドメニュー。
最早、ファミレス状態だ。

「…うまい!」

「だろ?遠慮せず取っていいからな。」

「…お前は遠慮しなさすぎだ。」

季節限定の雲丹に北海道産のイクラと、裕也は他とは器の色が異なる明らかに高そうなメニューを一切の躊躇もなく頬張り続ける。

「食べ終わったら、皿はそこに流せ。」

茶をくむための蛇口の真下に流すと、急に画面に緩い絵柄のキャラクターが映る 。

「あ、はずれた。」

犬のような何かが金魚すくいに挑戦し、結果は失敗。
どうやら、ゲームは五枚で一回始まるシステムらしい。

「…意外と確率渋いな。」

「ソシャゲに比べたら大分優しい方だって。あっちは課金してもピックアップ出ない時もあるんだから。」

ちゃっかりデザートのプリンまで頼んで四回目で当選。
確率は約二割。(裕也曰く、ソシャゲは1%を超えていればかなり優しいという)
カプセルの中身は先ほどのキャラクターのキーホルダーだった。

「じゃあ、帰るか。」

会計もパネルから勝手に計算してくれる。
セルフレジで料金を支払えば終了。

「…これ、あげる。今日のお礼。」

おざなりに渡されたストラップ。
思い返せば、駿が俺に自ら話しかけてきたのは初めてかもしれない。
逃げるようにそそくさと後部のシートに跨り、「いらないなら捨てろ」と吐いた。

「わかった。貰ってやる。」

「凌雅、もしかして照れてる?」

「…うるせえ」

(…まあ、悪くはない)
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