エリートヤクザの訳あり舎弟

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編入試験

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「お前の初仕事だ。」

そう言って車を走らせること十数分。
目的地の『私立 黎明学園』
人目につかない場所に駐車させ、裏口から入る。

「…これが仕事?」

「この学校には社長令嬢やら医者の息子が通ってる。要は情報収集だ。」

理由なんてのは建前で、本当は日中面倒を見れる奴がいないことにあった。
仮に今後仕事を任せられる年齢になったとしても、最低限の教養は必要だろうという祐也の意向で、理事長に連絡を取った。
指定された場所は本校舎の北側。
小中高まで一貫の学園のキャンパスは私有面積もかなりのものだ。

「邪魔するぞ。」

「まったく、年はとっても相変わらずの態度だな。」

理事長の『月島 成光』は組の元幹部。
一線を退いた後でも、こうして運営に関わっている。

「噂では聞いてたけど、まさか若が子供を拾うとはね。」

「…あの、よろしくお願いします。」

「ちゃんと挨拶ができるなんて、父親とは偉い違いだな。」

「誰が父親だ。」

(…まだ二十代だってのに)

「四捨五入したら三十」と言う月島を華麗にスルーして、転入手続きに進む。
役所から見た戸籍の情報を書くと、確かに保護者は一応俺の扱いになる。
紙を提出すると、職員の一人が駿を連れて別室に移動した。
おそらく、ただの生徒としか思っていないのか。
ヤクザと学園が繋がってるなんて表にバレたら、それこそニュースだ。

「…なんだ?」

「うちは一応名門校だからね。いくら会長さんのコネがあっても、試験は受けてもらうよ。」

どうやらこの手の学校に普通に入学するには、通常の学科試験の他に、社会性や集団行動のチェックを通過しなければいけないらしい。
まあ、礼儀作法は問題ないとして、実際に駿がどれだけ勉強できるのかが未知数だ。

「言葉遣いからして社会性は大丈夫かな。親の点数はゼロだけど。」

「…それは善処する。」

月島と世間話を咲かせているうちに、二時間が経過した。
試験を終えて、戻ってきた駿は頭を使って疲れたのか、大きく息を吐いてソファーに腰かけた。
先程の職員が「採点はこの通りです。」と書類を手渡す。
てっきり後日になるものだと思っていたから、あまりの速さに驚く。

「最近はマークシートって、楽なシステムがあるの。」

読み取るだけだから、採点ミスもない。
答案を一通り確認すると、月島は満足そうに目を細めて両手を広げた。

「これなら授業に付いていけるね。改めて駿君、黎明学園にようこそ。」

とりあえず、最初の関門は突破。
制服や教科書は郵送で届けるから、採寸だけ済ませてこいとのこと。

「お前、勉強できたんだな。」

「…別に、このぐらい普通だし。」

褒められなれていないせいか、そっぽを向く。
「…可愛げがねえな。」と悪態をつきつつ、スマホを取り出す。

「もしもし、試験どうだった?」

「余裕で合格だってよ。晩飯は寿司だ。食いたきゃ早く帰ってこい。」

「マジか!超特急で終わらせてくる。」

いつにも増してテンションの高い裕也を相手に、学園を後にした。


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