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Chapter1 強欲の腕
第11話 星井彩香
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星井彩香は、いわゆるお嬢様である。
裕福な家庭で生まれ育ち、常に側にあった溢れんばかりの金は彼女の欲しい物全てを彼女に与えた。
「あれが欲しい」
ただのその一言で自然と金が動き、当然のように彼女が欲した物はその手の中に収まっていった。
しかし、それはただのおまけである。
彼女の真骨頂は、金さえあれば手に入らないものなど何も無い――とは、思っていないところにある。
全てを金で動かすことができる家庭で生まれ育ったにもかかわらず、金が全てではないと理解している。それが、星井彩香という人物を更なる高みへと導いた要因。
金では手に入らないもの。
彩香曰く、それは人心。
いや、彩香でなくとも多くの人間が異口同音にそう唱えるだろう。
金では買えない。
でも、欲しい。
ならば、どうする?
彼女にとってそれは考えることでもなかった。
何故なら、人心をいとも簡単に手に入れるものを彼女は生まれながらに持っていたのだから。ありとあらゆる物を手に入れることができる金と同様に、苦労もなく手にしていたのである。
優れた容姿。
黒時にこそ効き目はなかったものの、星井彩香の容姿は非常に優れていて、全員と言っても過言ではないほどに彩香の欲しがった男性の心はいとも簡単に彼女に奪われた。
欲しい、と思った男性に少し近づき甘えてみる。
それだけだ。
それだけで、いとも簡単に人心が手に入るのだ。
そして、男性の人心を手に入れると、それに反比例して女性の人心が手に入らなくなることすら、彩香は知っていた。
だから、彼女は手に入れた男性の人心を女性に与えることにしたのである。
あの人が好き、という女性の情報を手に入れて、意中の男性の人心をその女性に与える。そうすることで意中の男性を手に入れた女性の心は彩香へと傾くのだ。
貴方のおかげで彼と付き合うことになった、何も知らない女性達はそう言って彩香に感謝の意を表するのである。
彩香が男性の人心を思うがままに動かしているその方法は、人心を与えられた女性が知ればむごいことになるだろう。
彩香は、男性に褒美を与えることで自由自在にその人心を動かしていたのだから。
「あの女と付き合えば期間限定で彩香の身体を好きにさせてやる。それか、求めるだけの金を与えてやる」
彩香の常套句である。
黒時は気付いてはいなかったが、今朝学校の二階の廊下で彼女が男子生徒と会話をしている際にもこの言葉は発せられていた。
欲しい物のためには何でもする――それが星井彩香なのである。
ともあれ、星井彩香という人間はこれまで欲しいものは全て手中に収めて生きてきたわけだが、まさか突如世界が変貌し、その先で欲しいものが手に入らない、という事態に陥るとは彼女自身思っていなかった。
灰ヶ原黒時の持つ不思議な力。
彼女はその力に興味を持ち欲したわけだが、灰ヶ原黒時はくれるつもりはないらしい。
何故?
身体を密着させ顔を近づけ、その状態でおねだりしてもくれるつもりはないらしい。望むだけの金を与えると言っているのに、それでもくれるつもりはないらしい。
何故? 何故? 何故?
欲しいものは全て手に入れる。
いや、手に入る。そうなっている。
それが、星井彩香の人生なのだ。
これまでも、そしてこれからもそれは変わらない。世界が変わっても、星井彩香の世界は変わらない――はずだったのに。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。
強い欲。
止まらぬ欲。
果て無き欲。
その欲は満ちて、器から溢れ出し形づけれられていく。
全てを掴むために。邪魔者を握りつぶす為に。
その欲は。
彼女自身となって覚醒する。
星井彩香という人間の本質として目覚め輝くのである。
裕福な家庭で生まれ育ち、常に側にあった溢れんばかりの金は彼女の欲しい物全てを彼女に与えた。
「あれが欲しい」
ただのその一言で自然と金が動き、当然のように彼女が欲した物はその手の中に収まっていった。
しかし、それはただのおまけである。
彼女の真骨頂は、金さえあれば手に入らないものなど何も無い――とは、思っていないところにある。
全てを金で動かすことができる家庭で生まれ育ったにもかかわらず、金が全てではないと理解している。それが、星井彩香という人物を更なる高みへと導いた要因。
金では手に入らないもの。
彩香曰く、それは人心。
いや、彩香でなくとも多くの人間が異口同音にそう唱えるだろう。
金では買えない。
でも、欲しい。
ならば、どうする?
彼女にとってそれは考えることでもなかった。
何故なら、人心をいとも簡単に手に入れるものを彼女は生まれながらに持っていたのだから。ありとあらゆる物を手に入れることができる金と同様に、苦労もなく手にしていたのである。
優れた容姿。
黒時にこそ効き目はなかったものの、星井彩香の容姿は非常に優れていて、全員と言っても過言ではないほどに彩香の欲しがった男性の心はいとも簡単に彼女に奪われた。
欲しい、と思った男性に少し近づき甘えてみる。
それだけだ。
それだけで、いとも簡単に人心が手に入るのだ。
そして、男性の人心を手に入れると、それに反比例して女性の人心が手に入らなくなることすら、彩香は知っていた。
だから、彼女は手に入れた男性の人心を女性に与えることにしたのである。
あの人が好き、という女性の情報を手に入れて、意中の男性の人心をその女性に与える。そうすることで意中の男性を手に入れた女性の心は彩香へと傾くのだ。
貴方のおかげで彼と付き合うことになった、何も知らない女性達はそう言って彩香に感謝の意を表するのである。
彩香が男性の人心を思うがままに動かしているその方法は、人心を与えられた女性が知ればむごいことになるだろう。
彩香は、男性に褒美を与えることで自由自在にその人心を動かしていたのだから。
「あの女と付き合えば期間限定で彩香の身体を好きにさせてやる。それか、求めるだけの金を与えてやる」
彩香の常套句である。
黒時は気付いてはいなかったが、今朝学校の二階の廊下で彼女が男子生徒と会話をしている際にもこの言葉は発せられていた。
欲しい物のためには何でもする――それが星井彩香なのである。
ともあれ、星井彩香という人間はこれまで欲しいものは全て手中に収めて生きてきたわけだが、まさか突如世界が変貌し、その先で欲しいものが手に入らない、という事態に陥るとは彼女自身思っていなかった。
灰ヶ原黒時の持つ不思議な力。
彼女はその力に興味を持ち欲したわけだが、灰ヶ原黒時はくれるつもりはないらしい。
何故?
身体を密着させ顔を近づけ、その状態でおねだりしてもくれるつもりはないらしい。望むだけの金を与えると言っているのに、それでもくれるつもりはないらしい。
何故? 何故? 何故?
欲しいものは全て手に入れる。
いや、手に入る。そうなっている。
それが、星井彩香の人生なのだ。
これまでも、そしてこれからもそれは変わらない。世界が変わっても、星井彩香の世界は変わらない――はずだったのに。
欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。
強い欲。
止まらぬ欲。
果て無き欲。
その欲は満ちて、器から溢れ出し形づけれられていく。
全てを掴むために。邪魔者を握りつぶす為に。
その欲は。
彼女自身となって覚醒する。
星井彩香という人間の本質として目覚め輝くのである。
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