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5.運命の出会い
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もうどれくらい歩いただろうか・・・
私は屋敷を出る際に持たされた一枚の地図を頼りに
ひたすら暗い森の中を歩いてきた。
靴はボロボロで何日もお風呂に入って居ない。
肌はカサついて薄汚れていた。
ほんの数日前には、綺麗に着飾って王家の紋章入りの靴まで履いていた
人間だとはだれが気づくだろう。
きっと私は人々の記憶から消え失せ、この世に存在しない人間に
なってしまうのだろう。
私はただ無心で隣の王国を目指した。
段々と日が暮れてきた。
今日はもう、そろそろ休もう。
大きな木の根元に腰を下ろした。
ほんの少し肌寒い。
小さな焚火で火を焚いて暖を取った。
一瞬うつらうつらしてしまった。
いけない。
森の中では気を抜いてはいけない。
蛇などの猛毒を持った生き物に加えて、クマやイノシシなど
獰猛な野生の動物にも気を付けなければならない。
それだけではない。
暗闇に紛れて盗賊に襲われる可能性もある。
そんな危険性を顧みているうちに、森の奥に気配を感じた。
目を凝らしてみるも、漆黒の闇に包まれた森。
何も見えない。
すると次の瞬間。
私の首に何かが触れている。
大柄の男が私の首にナイフを突きつけ生臭い息を吐きながら
こういった。
「ブラーダの小瓶を渡せ!さもないとこの細いノドを
かっ切ってやる!」
私は意味が分からなかった。
「ブラータの小瓶って・・・?」
「さっさとしろ!!」
男は興奮状態で大声を出す。
けれど、ブラータの小瓶が何なのかすら分からない。
反撃しようにも武術なんて何も知らないし、
どうしようもない。
「待って!
!ブラータの小瓶って何?
そんなもの持ってないわ!!」
怯えながらそう答えるのが精いっぱいだった。
あぁ・・・私はもう殺されるのね・・・
そう覚悟して目をきつく閉じた。
ところが、
私の首に回していた男の力がふっと抜けて、
突然大男が「うぅ・・・」
とうめき声をあげて後ろにバタンと倒れた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
「エッ・・・」
と大男を振り返ると、男の体に弓が刺さっていた。
誰が・・・
辺りを見回すと一人の男が立っていた。
綺麗な顔をしている。
こんな森にはふさわしくないような・・・
深い湖のような真っ青な目をした男は私に向かってこういった。
「なんて不用心な女なんだ。
こんな森に一人でいるなんて。
まるで私を襲ってくださいと言わんばかりだな。」
嫌味な口調で私に向かっていってくる。
低いけれど良く通るソフトな声。
何とも嫌味な男だ。
けれど、彼のおかげで命拾いしたことは確かだった。
私は素直にお礼を言うことにした。
「あなたのおかげで命拾いしたわ。ありがとう。
私の名前はシルク。セロビナ王国から来たの。」
「セロビナ王国から・・・。どうしてこんな森に・・・」
私は屋敷を出る際に持たされた一枚の地図を頼りに
ひたすら暗い森の中を歩いてきた。
靴はボロボロで何日もお風呂に入って居ない。
肌はカサついて薄汚れていた。
ほんの数日前には、綺麗に着飾って王家の紋章入りの靴まで履いていた
人間だとはだれが気づくだろう。
きっと私は人々の記憶から消え失せ、この世に存在しない人間に
なってしまうのだろう。
私はただ無心で隣の王国を目指した。
段々と日が暮れてきた。
今日はもう、そろそろ休もう。
大きな木の根元に腰を下ろした。
ほんの少し肌寒い。
小さな焚火で火を焚いて暖を取った。
一瞬うつらうつらしてしまった。
いけない。
森の中では気を抜いてはいけない。
蛇などの猛毒を持った生き物に加えて、クマやイノシシなど
獰猛な野生の動物にも気を付けなければならない。
それだけではない。
暗闇に紛れて盗賊に襲われる可能性もある。
そんな危険性を顧みているうちに、森の奥に気配を感じた。
目を凝らしてみるも、漆黒の闇に包まれた森。
何も見えない。
すると次の瞬間。
私の首に何かが触れている。
大柄の男が私の首にナイフを突きつけ生臭い息を吐きながら
こういった。
「ブラーダの小瓶を渡せ!さもないとこの細いノドを
かっ切ってやる!」
私は意味が分からなかった。
「ブラータの小瓶って・・・?」
「さっさとしろ!!」
男は興奮状態で大声を出す。
けれど、ブラータの小瓶が何なのかすら分からない。
反撃しようにも武術なんて何も知らないし、
どうしようもない。
「待って!
!ブラータの小瓶って何?
そんなもの持ってないわ!!」
怯えながらそう答えるのが精いっぱいだった。
あぁ・・・私はもう殺されるのね・・・
そう覚悟して目をきつく閉じた。
ところが、
私の首に回していた男の力がふっと抜けて、
突然大男が「うぅ・・・」
とうめき声をあげて後ろにバタンと倒れた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
「エッ・・・」
と大男を振り返ると、男の体に弓が刺さっていた。
誰が・・・
辺りを見回すと一人の男が立っていた。
綺麗な顔をしている。
こんな森にはふさわしくないような・・・
深い湖のような真っ青な目をした男は私に向かってこういった。
「なんて不用心な女なんだ。
こんな森に一人でいるなんて。
まるで私を襲ってくださいと言わんばかりだな。」
嫌味な口調で私に向かっていってくる。
低いけれど良く通るソフトな声。
何とも嫌味な男だ。
けれど、彼のおかげで命拾いしたことは確かだった。
私は素直にお礼を言うことにした。
「あなたのおかげで命拾いしたわ。ありがとう。
私の名前はシルク。セロビナ王国から来たの。」
「セロビナ王国から・・・。どうしてこんな森に・・・」
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