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第二章 むじな
9.大親分 対 椎葉八郎太
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タヌキ屋敷のリビング、その内装と調度について描写しよう。
間取りはだいたい十二畳とかなり広々しており、しつらえは和風が基調。
壁には立派な掛け軸と、それから歴代の親分とおぼしきタヌキたちの写真。
部屋の真ん中には大理石のテーブルが置かれていて、その周囲三面に革張りのソファーが設置されている。
タヌキは煙草を吸わないとさっき夕声は言っていたけれど、なぜかテーブルの上には中身の入っていないクリスタルの灰皿がある。
つまり一言で言い表すなら、絵に描いたような組事務所である。
「そう緊張せんでいいから、ゆるりとしてくれたまえ」
そんなアウトレイジな空間に、いましも僕と夕声は身を置いている。
大理石のテーブルを挟んで、文吉親分と差し向かいに対面しながら。
「夕声ちゃんはまだ未成年だからダメだが、日置の甥御くんは呑むかね?」
「い、いえ、だいじょうぶです」
僕が遠慮すると、そうかそうか、そういえば君は下戸だと言っていたな、と文吉親分は鷹揚に笑った。
すぐそばに座っていたタヌキがなにも言わずに立ち上がって、冷蔵庫から冷えたウーロン茶を持ってきて僕の前に置いた。無言で、ちょっと乱暴に。
「あの二匹とは会えたかね?」
「はい。あの、面会のご許可をくださったこと、あらためてお礼申し上げます」
「なに、そのくらいはなんてことない。で、奴らと話は出来たかね?」
「いえ、それは……」
「そうだろう。ちとお灸が効きすぎたかもしれん」
夕声がなにか言おうとした気配を察して、慌てて肘でついて制止する。
冷静に、冷静に、頼むから。
「さて、なにから話したものか」
「あの、思えば先ほどは名乗りも欠かして、大変失礼いたしました。いまさらではありますが、椎葉八郞太と申します。日置敬一郎の甥で、先だって夕声さんからご説明があった通り、今は叔父の家に住んでいます。夕声さんを介して、一部の龍ヶ崎タヌキの方とも懇意にお付き合いさせていただいております」
そう自己紹介をして、最後に「若輩ではありますが、以降お見知りおきを」と深々頭を下げた。
これはこれはご丁寧に、と文吉親分。周囲の他のタヌキたちはなにも言わずに僕らのやりとりを観察していた。
「しかしどうしてなかなか、君は胆力のある男じゃないか」
「はい……はい?」
「そうじゃないかね? なにしろこの文吉と再度対峙しようというのだからな」
笑顔の文吉親分が、全然笑っていない目で僕を見ていた。
迫力満点の二つの眼に射貫かれながら、この爺さんほんとにタヌキなのか? と僕は考えていた。文吉親分が発する威圧感にはそれほどまでに隙というものがなかった。
だけど。
「対峙、と申されましても」
あらためて相手の強大さを確認したことで、逆にこっちも腹が据わった。
「僕は別に、親分方と命のやりとりをするわけではありませんから」
笑顔でそう言うと、周囲のタヌキたちの僕を見る目は少し変わったのがわかった。隣に座る夕声も驚いているようだった。
「それとも、親分はそちらのほうがお好みですか? まさか、そんなはずはない。僕は親分方を文化的な化けダヌキと見込んで対話を申し込んでいるのですから」
「おい、てめえ!」
挑発めいた僕の言葉に、一人のタヌキが激昂して腰をあげる。
「よさんか!」
そのタヌキを文吉親分が制した。
「……やはり君はなかなかに度胸の据わった男らしいな、日置の甥御くん」
「ありがとうございます。椎葉です」
「それで、日置の甥御くん」
あくまでも僕を『日置の甥』と呼んで、親分は続けた。
「話をしたいと君は言うが、いったいなにを話そうというのかね? ……はて? 知り合ったばかりのわしらに共通するような話題が、なにかあったろうかね?」
皆はなにか思いつくかの? と文吉親分。
ねえですね、思いつきません、ありませんやな、水を向けられたタヌキたちが口々に言う。
しらばっくれやがって。今この瞬間の僕らが共有する関心事なんて、一つしかないじゃないか。
あるいはこれも会話のイニシアチブの取り合い、その一環なのだろうか。とにかく、あくまでも僕の口からそれを言わせたいらしい。
いいだろう。そちらが絡め手で来るなら、こっちも変化球だ。
「皆さんは『むじな』という言葉をご存知ですね?」
文吉親分だけでなく、他のタヌキたちにも視線を配りながら僕は言った。
「同じ言葉でも地方や社会階層によってしばしば異なる意味を持つように、『むじな』という言葉も、僕たち人間と皆さんとでは違った意味を持っているそうですね。皆さん人でない方々の間では、『むじな』は正体不明の動物の化生を指す言葉として使われているとか」
「我々のことをよく勉強してくれているようだね。感心感心」
「恐縮です。夕声さんの受け売りですけどね」
思えば僕が彼女からそれを聞いたのはまだ数時間前のことなのだ。
やれやれ、たった数時間でずいぶん遠いところまで来てしまった感じがする。
「しかし、これはとても残念なことですが、僕たち人間の間では『むじな』という言葉は、昨今あまり使われていません」
「残念なのかね?」
「いかにも残念ですね」
親分の目をまっすぐ直視したままで肯き、それから他のタヌキたちを見渡す。
「あまり知られていませんが、『むじな』はとても長い歴史を持つ言葉です。最初にこの言葉が使われた時期を調べると、平安時代よりもさらに以前まで遡れます。日本書紀にも登場してるんですよ。文献として残るだけでもこの通りですから、口語として使われてきた歴史はきっともっと古いはずだ」
そんな言葉が失われつつあるのが残念でないはずがない、と僕は言った。
「土地や社会だけでなく、言葉は時間によっても変容します。『むじな』もまたこれは同様。ある時代には特定の動物の俗称として使われ、また別の時代にはなんらかの妖怪の固有名詞だったこともあります。ですが最古の時代において、どうやらこの言葉は野の獣全般を指す言葉だったようなんです。タヌキもサルもイタチも、太古の日本においてはみんないっしょくたに『むじな』だったんです。
もしも――」
高まりきった緊張を生唾と共に飲み下して、続けた。
「もしもその時代にアライグマがこの日本にいたなら、アライグマもまた『むじな』と呼ばれていたでしょう」
「ようやく本題に辿り着いたようだね」
クックック、と文吉親分がしゃがれた声で笑った。
「まどろっこしく遠回りしてくれたが、やはり結局はそこに話を持ってきたか。まぁ、最初からわかりきっていたがね」
背筋が粟立つ。喉の奥で何かが詰まったような感じがした。
ああ、恐ろしい。
「なぁ、日置の甥御くん。わしは確かに言ったはずだぞ? タヌキの問題には口出しはできんと。君は、なにかね、わしを甘く見ておるのかね?」
甘く見るなんて、冗談じゃない。僕はこんなにあんたにビビってる。ビビり倒してる。
けど。
「甘くは見てないけど、口出しはします」
言ってしまった瞬間、もはやすっかりギャラリーと化しているタヌキたちが一斉に色めき立つ。
夕声も愕然とした顔で僕を凝視している。
「面白い。よくも吐かしおったな小僧」
文吉親分が、両の口角をニヤっと吊り上げて言った。あたかも本気で面白いと感じているみたいに。
それから。
「むじなの話は、まだ先があるのかね? あるなら、聞くだけ聞いてみようか」
「……! ありがとうございます」
意外にも向こうから先を促された。
僕はここぞとばかりに話を続ける。
「アライグマは、現代の日本社会においては最下層のむじなです。というか、いわゆるパブリックエネミーですらあります。なにしろ我が国の自然環境に深刻な被害をもたらす侵略的外来種です。存在することを法的にも禁じられた害獣、イリーガルな動物です。自治体によってはアライグマ駆除に助成金すら出しているような有様です」
『イリーガル』『パブリックエネミー』のあたりで文吉親分以外のタヌキたちが「ふむ」という顔をした。
こいつら、さては横文字に闇雲な説得力を感じてしまうタイプだな?
「このように、アライグマの立場は我が国においてかなり低く弱い。翻って、皆さんタヌキはどうでしょう?」
もう一度、タヌキたち全員に視線を配る。
「アライグマとは対照的に、タヌキは我が国において最大最高の市民権を獲得している野生動物の一つだといえます。神話の太古からこの国に棲まう正真正銘の在来種ですし、人間に迷惑をかけることも滅多にない。だから、駆除されるどころかむしろ手厚く保護されている。ドライバー向けの動物注意標識のイラストはタヌキであることが大半ですし、もっとストレートに『タヌキ出没注意』の標識が設置されている場所もあるくらいです」
これほど大切にされている野生動物なんて他には一部の野良猫くらいだ、と僕。
親分以外のタヌキたちがうんうんと肯いている。
まずはチョロいこのひとたちから味方につけてしまう作戦は間違ってなかった。
しかし、問題は。
「それで、君はいったいなにが言いたいのだね?」
やはり、難敵はこの親分一人だ。
「アライグマはかわいそうだから助けてあげてください、とでも言うつもりかね?」
「はい。最終的にはそういう主張に着地する予定です」
ごちゃごちゃと言い訳はせずに、率直に認めて即答した。
僕のそんな態度が意外だったのか、文吉親分が少し黙る。
その隙を逃さずに僕は続けた。
「もっとも、今し方申し上げた通り、アライグマは我々人間にとっても害獣です。だから、すべてのアライグマを受け入れてやってくれとは言いません。皆さんが彼らを認めてくれたころで、人間が認めずに駆除を続けたら意味なんてありませんし。
僕が助けて認めてあげて欲しいのは、アライグマという種ではなく、たまたまアライグマだっただけの一人の女の子なんです」
文吉親分が何か言おうとする――その機先を制して、さらに言葉を続ける。
このまま、このままずっと僕のターンのまま、いけるところまでいかなくては。
「先ほど、僕は『むじな』という言葉についてこう解説しました。『ある時代には特定の動物の通称として用いられていた』と。その動物とは、ズバリみなさんタヌキです」
吐き出す一語一語にあらん限りの力を込めて熱弁をふるう。
「この言葉の用法は、未だ完全に過去のものにはなってはおりません。現代においてすら、一部の地域ではタヌキはむじなと呼ばれ続けているのです。大正時代に行われた『たぬき・むじな事件』なる裁判においては『むじなという語はタヌキを指すのか?』が法廷で真剣に議論されたこともあるほどです。この裁判とその判例は、法学関係者であれば知らぬ者のないほど有名なものであると聞きます」
さて。
ここまでも十分に詭弁を弄したけど、この先ははいよいよ屁理屈をこじつけで煮染めたような内容になる。
だからここからは、とにかく勢いで押し切るしかない。
椎葉八郞太、一世一代の大演説だ。
「このように、むじなと言えばタヌキ、タヌキといえばむじななのです! そして、いいですか皆さんそしてです! むじなという言葉が動物全部をひっくるめた言葉であるのだとしたら、皆さんタヌキは全動物の代表といえるのではないでしょうか! 百獣の王ならぬ、百獣の代表です!」
つまり! と声を張り上げる。
「つまり! ライオンが王様だとしたら、皆さんは総理大臣ということです!」
僕の強引な論法に、文吉親分以外のタヌキが「おお!」っと声をあげる。この人たちのチョロさが今の僕にはなによりも頼もしい。
タヌキたちの反応を横目に見ながら、僕はここで、ターゲットを文吉親分に定める。
「僕はね、文吉親分。さっきも言ったけど、全部のアライグマを認めて欲しいなんて思っちゃいないんです。その中のたった一人だけを認めて受け入れてくださいと、そうお願いしてるだけなんです」
「……」
「総理大臣なら、ひとつ清濁あわせのむ懐の深さを見せてくださいよ! たかだか小娘一匹、気前よく許してみせてくれたっていいじゃないですか! がっかりさせないでくださいよ!」
「――こんガキがぁ! よくも威勢のいい啖呵切りよったなぁ!」
文吉親分が、ここに来てとうとう爆発した。
そのあまりの剣幕に、タヌキたちが揃って息を呑む。夕声が小さく悲鳴をあげる。
体感温度は、言うまでも無く極寒だ。
「ごじゃっぺのでれすけがぁ! 優しくしておればつけあがりやって、この小貝川の文吉をようもそこまで侮り舐め腐りよってからに!」
「いいえ! 違います!」
激昂する文吉親分に、僕はここまでで最大の声を張り上げて反論する。
一見して文脈を完全無視したこの否定に、文吉親分が呆気に取られて一瞬黙る。
「僕は文吉親分を、侮っても舐め腐ってもいない! 少しも、一ミリもです!」
僕は立ち上がり、その場でくるっと半転する。
そして。
「これがその証拠です! さぁ、とっくりとご覧になってください!」
そう宣言して、遠山の金さんよろしく背中を親分に見せつけた。
ワイシャツもその下の肌着も、水でも被ったようにびっしょりになっていた。
冷や汗で。
「……舐めるなんて、侮るなんて、滅相もありません。今夜この家にあがらせてもらった時からずっと、僕はこの通り親分にビビりっぱなしです」
さらにダメ押しとばかりに、ブルブル振動する手を見せる。
演技ではなく、本当にさっきから震えが止まらないのだ。ほんとは足だってガクガクだ。
「……いや、今日だけじゃない。あの日あの夜、あの初午の宴会で『東北妖怪スターシリーズ』を目撃したときから、僕にとって親分は恐怖の対象です」
僕の告白を聞いて、タヌキたちがひそひそと囁き交わす。
そういえばあの夜、たしかに失神した人間が出たな。
いた、いた。
そうか、この小僧があのときの。
それぇ聞いた文吉さんはあの夜、たいそう嬉しそうだったなぁ。
「だから、信じてください。この椎葉八郞太に、偉大なる小貝川の文吉を見くびる心は少しもありません。天地神明に誓って、僕はあなたが恐ろしい」
「……まさか、こんな形でこっちの面子を立てよるとはなぁ」
呆れたような、あるいは感心したような声で親分は言った。
「……なぁ、日置の甥御くん」
やがて、親分は静かな口調で切り出した。
「君の言いたいことはわかったつもりだ。それにこの文吉をそこまで恐れている君が、その怯懦を押し殺して立ち向かってくれたことも、甥の叔父として嬉しい」
だが、と親分は続けた。
「だが、この問題がそう簡単でないこともわかってくれるな? もし仮に小次郎とあの娘が結ばれたとしよう。そうしてやがて子供でも出来れば、龍ヶ崎タヌキの親分の系譜にアライグマの血が入ることになるんだ そのことを、君はどう考えるのかね?」
この世で一番恐ろしいとさえ感じた親分はもういなかった。文吉親分はお釈迦様のように優しく穏やかに、僕にそう意見を求めたのだ。
僕はじっくりと時間をかけて考え、さらに重ねて熟考し、それから。
「僕には、タヌキの社会のことはよくわかりません。……ですが」
「ですが、なんだね?」
「……血は、混じり合って強くなります。これは、雑種の犬は純血種より強いとか、そういう話だけじゃありません。信田の森のうらみ葛葉の子供が、長じては名高い安倍晴明となったように、多くの異類婚姻譚もまたそれを物語っています。だから、異類婚姻譚の伝承が息づくこの女化で、よりによって化生であるあなたたちが血統書に縛られるのは……それは、なんだかもの凄く大きな誤謬であるように僕には思えます」
僕はどうにかそう答えた。
僕の返答を受けて、文吉親分がしばし考え込む。
それから、親分は仲間のタヌキたちを集めてなにやら話し合いを持った。
そして。
「……なぁ、お二人さん」
五分ほど後に、親分は僕と夕声に向かって言った。
「たぶん、わしらの顔はしばらく見たくもなかろうからな。だから、手間をかけてすまんが、二階の二人にお前さんたちから伝えてくれんかね。
……認める、と」
親分がなにを言ったのか、僕も夕声もしばらく飲み込めずにいた。
やや時間をおいて、理解は唐突にやってきた。
「あ、ありがとうございます!」
ほとんど直角になるほど腰を折り曲げて、深々とお辞儀をする。
隣で夕声が「信じられない……」と呟いた。
「おい、椎葉くん」
一刻も早く二人に決定を伝えてやるためにリビングを飛び出そうとした、その僕の背中に親分が言葉をかけた。
「今夜耳に入れた中で一番に残念だったのは、君が下戸だという話だよ」
※
「あっ……」
リビングから廊下に出た途端、緊張の糸がぷっつりと切れた。両足からいきなり力が抜けて、僕はその場にへたり込んでしまう。
「あ、あは、あはははははは」
そんな自分の無様さが滑稽でおかしくて、僕はたまらず笑い出す。
やれやれ、結局スマートに決めることはできなかった。というか終始一貫して無様でみっともなかったような気がする。
なにしろ最後にはそのみっともなさでもって親分を説得したくらいだ。
今夜の僕の無様は光り輝いている。
「あはは、かっこわるいなぁ」
「なに言ってんだよ!」
僕の自嘲に、夕声が真剣なトーンで反論した。
「あんた、自分がとんでもないことやらかしたって、その自覚あんのかよ! あんたはあの文吉親分と渡り合って、最後には自分の主張を飲ませたんだぞ。しかも天地がひっくり返っても実現しないはずだった無理難題を……ああ、もう! 嬉しいはずなのに、全然感情が追いついてこない! 全部あんたのせいだかんな!」
「ご、ごめん」
「謝るなバカ! なんにも悪くない癖に!」
恐ろしく理不尽な怒りを僕にぶつけて、それから、彼女は言った。
「かっこ悪いわけ、ないだろ! 今日のあんたは、過去イチかっこいいよ!」
言葉とは裏腹のマジギレ口調で、夕声はそう言った。
僕は照れればいいのか戸惑えばいいのか、とりあえず頬をかいた。
そんな僕を、夕声は涙の滲んだ上目遣いで睨み付けて、問う。
「……あんた、いったい何者だよ?」
何者だ、と問われても。別に何者でもない僕にはどう答えたらいいかわからない。
だから、とりあえず僕はこう言った。
「ええと……椎葉八郞太です。ご存知のように」
椎葉八郞太、いかにもそれが僕の屋号だ。
間取りはだいたい十二畳とかなり広々しており、しつらえは和風が基調。
壁には立派な掛け軸と、それから歴代の親分とおぼしきタヌキたちの写真。
部屋の真ん中には大理石のテーブルが置かれていて、その周囲三面に革張りのソファーが設置されている。
タヌキは煙草を吸わないとさっき夕声は言っていたけれど、なぜかテーブルの上には中身の入っていないクリスタルの灰皿がある。
つまり一言で言い表すなら、絵に描いたような組事務所である。
「そう緊張せんでいいから、ゆるりとしてくれたまえ」
そんなアウトレイジな空間に、いましも僕と夕声は身を置いている。
大理石のテーブルを挟んで、文吉親分と差し向かいに対面しながら。
「夕声ちゃんはまだ未成年だからダメだが、日置の甥御くんは呑むかね?」
「い、いえ、だいじょうぶです」
僕が遠慮すると、そうかそうか、そういえば君は下戸だと言っていたな、と文吉親分は鷹揚に笑った。
すぐそばに座っていたタヌキがなにも言わずに立ち上がって、冷蔵庫から冷えたウーロン茶を持ってきて僕の前に置いた。無言で、ちょっと乱暴に。
「あの二匹とは会えたかね?」
「はい。あの、面会のご許可をくださったこと、あらためてお礼申し上げます」
「なに、そのくらいはなんてことない。で、奴らと話は出来たかね?」
「いえ、それは……」
「そうだろう。ちとお灸が効きすぎたかもしれん」
夕声がなにか言おうとした気配を察して、慌てて肘でついて制止する。
冷静に、冷静に、頼むから。
「さて、なにから話したものか」
「あの、思えば先ほどは名乗りも欠かして、大変失礼いたしました。いまさらではありますが、椎葉八郞太と申します。日置敬一郎の甥で、先だって夕声さんからご説明があった通り、今は叔父の家に住んでいます。夕声さんを介して、一部の龍ヶ崎タヌキの方とも懇意にお付き合いさせていただいております」
そう自己紹介をして、最後に「若輩ではありますが、以降お見知りおきを」と深々頭を下げた。
これはこれはご丁寧に、と文吉親分。周囲の他のタヌキたちはなにも言わずに僕らのやりとりを観察していた。
「しかしどうしてなかなか、君は胆力のある男じゃないか」
「はい……はい?」
「そうじゃないかね? なにしろこの文吉と再度対峙しようというのだからな」
笑顔の文吉親分が、全然笑っていない目で僕を見ていた。
迫力満点の二つの眼に射貫かれながら、この爺さんほんとにタヌキなのか? と僕は考えていた。文吉親分が発する威圧感にはそれほどまでに隙というものがなかった。
だけど。
「対峙、と申されましても」
あらためて相手の強大さを確認したことで、逆にこっちも腹が据わった。
「僕は別に、親分方と命のやりとりをするわけではありませんから」
笑顔でそう言うと、周囲のタヌキたちの僕を見る目は少し変わったのがわかった。隣に座る夕声も驚いているようだった。
「それとも、親分はそちらのほうがお好みですか? まさか、そんなはずはない。僕は親分方を文化的な化けダヌキと見込んで対話を申し込んでいるのですから」
「おい、てめえ!」
挑発めいた僕の言葉に、一人のタヌキが激昂して腰をあげる。
「よさんか!」
そのタヌキを文吉親分が制した。
「……やはり君はなかなかに度胸の据わった男らしいな、日置の甥御くん」
「ありがとうございます。椎葉です」
「それで、日置の甥御くん」
あくまでも僕を『日置の甥』と呼んで、親分は続けた。
「話をしたいと君は言うが、いったいなにを話そうというのかね? ……はて? 知り合ったばかりのわしらに共通するような話題が、なにかあったろうかね?」
皆はなにか思いつくかの? と文吉親分。
ねえですね、思いつきません、ありませんやな、水を向けられたタヌキたちが口々に言う。
しらばっくれやがって。今この瞬間の僕らが共有する関心事なんて、一つしかないじゃないか。
あるいはこれも会話のイニシアチブの取り合い、その一環なのだろうか。とにかく、あくまでも僕の口からそれを言わせたいらしい。
いいだろう。そちらが絡め手で来るなら、こっちも変化球だ。
「皆さんは『むじな』という言葉をご存知ですね?」
文吉親分だけでなく、他のタヌキたちにも視線を配りながら僕は言った。
「同じ言葉でも地方や社会階層によってしばしば異なる意味を持つように、『むじな』という言葉も、僕たち人間と皆さんとでは違った意味を持っているそうですね。皆さん人でない方々の間では、『むじな』は正体不明の動物の化生を指す言葉として使われているとか」
「我々のことをよく勉強してくれているようだね。感心感心」
「恐縮です。夕声さんの受け売りですけどね」
思えば僕が彼女からそれを聞いたのはまだ数時間前のことなのだ。
やれやれ、たった数時間でずいぶん遠いところまで来てしまった感じがする。
「しかし、これはとても残念なことですが、僕たち人間の間では『むじな』という言葉は、昨今あまり使われていません」
「残念なのかね?」
「いかにも残念ですね」
親分の目をまっすぐ直視したままで肯き、それから他のタヌキたちを見渡す。
「あまり知られていませんが、『むじな』はとても長い歴史を持つ言葉です。最初にこの言葉が使われた時期を調べると、平安時代よりもさらに以前まで遡れます。日本書紀にも登場してるんですよ。文献として残るだけでもこの通りですから、口語として使われてきた歴史はきっともっと古いはずだ」
そんな言葉が失われつつあるのが残念でないはずがない、と僕は言った。
「土地や社会だけでなく、言葉は時間によっても変容します。『むじな』もまたこれは同様。ある時代には特定の動物の俗称として使われ、また別の時代にはなんらかの妖怪の固有名詞だったこともあります。ですが最古の時代において、どうやらこの言葉は野の獣全般を指す言葉だったようなんです。タヌキもサルもイタチも、太古の日本においてはみんないっしょくたに『むじな』だったんです。
もしも――」
高まりきった緊張を生唾と共に飲み下して、続けた。
「もしもその時代にアライグマがこの日本にいたなら、アライグマもまた『むじな』と呼ばれていたでしょう」
「ようやく本題に辿り着いたようだね」
クックック、と文吉親分がしゃがれた声で笑った。
「まどろっこしく遠回りしてくれたが、やはり結局はそこに話を持ってきたか。まぁ、最初からわかりきっていたがね」
背筋が粟立つ。喉の奥で何かが詰まったような感じがした。
ああ、恐ろしい。
「なぁ、日置の甥御くん。わしは確かに言ったはずだぞ? タヌキの問題には口出しはできんと。君は、なにかね、わしを甘く見ておるのかね?」
甘く見るなんて、冗談じゃない。僕はこんなにあんたにビビってる。ビビり倒してる。
けど。
「甘くは見てないけど、口出しはします」
言ってしまった瞬間、もはやすっかりギャラリーと化しているタヌキたちが一斉に色めき立つ。
夕声も愕然とした顔で僕を凝視している。
「面白い。よくも吐かしおったな小僧」
文吉親分が、両の口角をニヤっと吊り上げて言った。あたかも本気で面白いと感じているみたいに。
それから。
「むじなの話は、まだ先があるのかね? あるなら、聞くだけ聞いてみようか」
「……! ありがとうございます」
意外にも向こうから先を促された。
僕はここぞとばかりに話を続ける。
「アライグマは、現代の日本社会においては最下層のむじなです。というか、いわゆるパブリックエネミーですらあります。なにしろ我が国の自然環境に深刻な被害をもたらす侵略的外来種です。存在することを法的にも禁じられた害獣、イリーガルな動物です。自治体によってはアライグマ駆除に助成金すら出しているような有様です」
『イリーガル』『パブリックエネミー』のあたりで文吉親分以外のタヌキたちが「ふむ」という顔をした。
こいつら、さては横文字に闇雲な説得力を感じてしまうタイプだな?
「このように、アライグマの立場は我が国においてかなり低く弱い。翻って、皆さんタヌキはどうでしょう?」
もう一度、タヌキたち全員に視線を配る。
「アライグマとは対照的に、タヌキは我が国において最大最高の市民権を獲得している野生動物の一つだといえます。神話の太古からこの国に棲まう正真正銘の在来種ですし、人間に迷惑をかけることも滅多にない。だから、駆除されるどころかむしろ手厚く保護されている。ドライバー向けの動物注意標識のイラストはタヌキであることが大半ですし、もっとストレートに『タヌキ出没注意』の標識が設置されている場所もあるくらいです」
これほど大切にされている野生動物なんて他には一部の野良猫くらいだ、と僕。
親分以外のタヌキたちがうんうんと肯いている。
まずはチョロいこのひとたちから味方につけてしまう作戦は間違ってなかった。
しかし、問題は。
「それで、君はいったいなにが言いたいのだね?」
やはり、難敵はこの親分一人だ。
「アライグマはかわいそうだから助けてあげてください、とでも言うつもりかね?」
「はい。最終的にはそういう主張に着地する予定です」
ごちゃごちゃと言い訳はせずに、率直に認めて即答した。
僕のそんな態度が意外だったのか、文吉親分が少し黙る。
その隙を逃さずに僕は続けた。
「もっとも、今し方申し上げた通り、アライグマは我々人間にとっても害獣です。だから、すべてのアライグマを受け入れてやってくれとは言いません。皆さんが彼らを認めてくれたころで、人間が認めずに駆除を続けたら意味なんてありませんし。
僕が助けて認めてあげて欲しいのは、アライグマという種ではなく、たまたまアライグマだっただけの一人の女の子なんです」
文吉親分が何か言おうとする――その機先を制して、さらに言葉を続ける。
このまま、このままずっと僕のターンのまま、いけるところまでいかなくては。
「先ほど、僕は『むじな』という言葉についてこう解説しました。『ある時代には特定の動物の通称として用いられていた』と。その動物とは、ズバリみなさんタヌキです」
吐き出す一語一語にあらん限りの力を込めて熱弁をふるう。
「この言葉の用法は、未だ完全に過去のものにはなってはおりません。現代においてすら、一部の地域ではタヌキはむじなと呼ばれ続けているのです。大正時代に行われた『たぬき・むじな事件』なる裁判においては『むじなという語はタヌキを指すのか?』が法廷で真剣に議論されたこともあるほどです。この裁判とその判例は、法学関係者であれば知らぬ者のないほど有名なものであると聞きます」
さて。
ここまでも十分に詭弁を弄したけど、この先ははいよいよ屁理屈をこじつけで煮染めたような内容になる。
だからここからは、とにかく勢いで押し切るしかない。
椎葉八郞太、一世一代の大演説だ。
「このように、むじなと言えばタヌキ、タヌキといえばむじななのです! そして、いいですか皆さんそしてです! むじなという言葉が動物全部をひっくるめた言葉であるのだとしたら、皆さんタヌキは全動物の代表といえるのではないでしょうか! 百獣の王ならぬ、百獣の代表です!」
つまり! と声を張り上げる。
「つまり! ライオンが王様だとしたら、皆さんは総理大臣ということです!」
僕の強引な論法に、文吉親分以外のタヌキが「おお!」っと声をあげる。この人たちのチョロさが今の僕にはなによりも頼もしい。
タヌキたちの反応を横目に見ながら、僕はここで、ターゲットを文吉親分に定める。
「僕はね、文吉親分。さっきも言ったけど、全部のアライグマを認めて欲しいなんて思っちゃいないんです。その中のたった一人だけを認めて受け入れてくださいと、そうお願いしてるだけなんです」
「……」
「総理大臣なら、ひとつ清濁あわせのむ懐の深さを見せてくださいよ! たかだか小娘一匹、気前よく許してみせてくれたっていいじゃないですか! がっかりさせないでくださいよ!」
「――こんガキがぁ! よくも威勢のいい啖呵切りよったなぁ!」
文吉親分が、ここに来てとうとう爆発した。
そのあまりの剣幕に、タヌキたちが揃って息を呑む。夕声が小さく悲鳴をあげる。
体感温度は、言うまでも無く極寒だ。
「ごじゃっぺのでれすけがぁ! 優しくしておればつけあがりやって、この小貝川の文吉をようもそこまで侮り舐め腐りよってからに!」
「いいえ! 違います!」
激昂する文吉親分に、僕はここまでで最大の声を張り上げて反論する。
一見して文脈を完全無視したこの否定に、文吉親分が呆気に取られて一瞬黙る。
「僕は文吉親分を、侮っても舐め腐ってもいない! 少しも、一ミリもです!」
僕は立ち上がり、その場でくるっと半転する。
そして。
「これがその証拠です! さぁ、とっくりとご覧になってください!」
そう宣言して、遠山の金さんよろしく背中を親分に見せつけた。
ワイシャツもその下の肌着も、水でも被ったようにびっしょりになっていた。
冷や汗で。
「……舐めるなんて、侮るなんて、滅相もありません。今夜この家にあがらせてもらった時からずっと、僕はこの通り親分にビビりっぱなしです」
さらにダメ押しとばかりに、ブルブル振動する手を見せる。
演技ではなく、本当にさっきから震えが止まらないのだ。ほんとは足だってガクガクだ。
「……いや、今日だけじゃない。あの日あの夜、あの初午の宴会で『東北妖怪スターシリーズ』を目撃したときから、僕にとって親分は恐怖の対象です」
僕の告白を聞いて、タヌキたちがひそひそと囁き交わす。
そういえばあの夜、たしかに失神した人間が出たな。
いた、いた。
そうか、この小僧があのときの。
それぇ聞いた文吉さんはあの夜、たいそう嬉しそうだったなぁ。
「だから、信じてください。この椎葉八郞太に、偉大なる小貝川の文吉を見くびる心は少しもありません。天地神明に誓って、僕はあなたが恐ろしい」
「……まさか、こんな形でこっちの面子を立てよるとはなぁ」
呆れたような、あるいは感心したような声で親分は言った。
「……なぁ、日置の甥御くん」
やがて、親分は静かな口調で切り出した。
「君の言いたいことはわかったつもりだ。それにこの文吉をそこまで恐れている君が、その怯懦を押し殺して立ち向かってくれたことも、甥の叔父として嬉しい」
だが、と親分は続けた。
「だが、この問題がそう簡単でないこともわかってくれるな? もし仮に小次郎とあの娘が結ばれたとしよう。そうしてやがて子供でも出来れば、龍ヶ崎タヌキの親分の系譜にアライグマの血が入ることになるんだ そのことを、君はどう考えるのかね?」
この世で一番恐ろしいとさえ感じた親分はもういなかった。文吉親分はお釈迦様のように優しく穏やかに、僕にそう意見を求めたのだ。
僕はじっくりと時間をかけて考え、さらに重ねて熟考し、それから。
「僕には、タヌキの社会のことはよくわかりません。……ですが」
「ですが、なんだね?」
「……血は、混じり合って強くなります。これは、雑種の犬は純血種より強いとか、そういう話だけじゃありません。信田の森のうらみ葛葉の子供が、長じては名高い安倍晴明となったように、多くの異類婚姻譚もまたそれを物語っています。だから、異類婚姻譚の伝承が息づくこの女化で、よりによって化生であるあなたたちが血統書に縛られるのは……それは、なんだかもの凄く大きな誤謬であるように僕には思えます」
僕はどうにかそう答えた。
僕の返答を受けて、文吉親分がしばし考え込む。
それから、親分は仲間のタヌキたちを集めてなにやら話し合いを持った。
そして。
「……なぁ、お二人さん」
五分ほど後に、親分は僕と夕声に向かって言った。
「たぶん、わしらの顔はしばらく見たくもなかろうからな。だから、手間をかけてすまんが、二階の二人にお前さんたちから伝えてくれんかね。
……認める、と」
親分がなにを言ったのか、僕も夕声もしばらく飲み込めずにいた。
やや時間をおいて、理解は唐突にやってきた。
「あ、ありがとうございます!」
ほとんど直角になるほど腰を折り曲げて、深々とお辞儀をする。
隣で夕声が「信じられない……」と呟いた。
「おい、椎葉くん」
一刻も早く二人に決定を伝えてやるためにリビングを飛び出そうとした、その僕の背中に親分が言葉をかけた。
「今夜耳に入れた中で一番に残念だったのは、君が下戸だという話だよ」
※
「あっ……」
リビングから廊下に出た途端、緊張の糸がぷっつりと切れた。両足からいきなり力が抜けて、僕はその場にへたり込んでしまう。
「あ、あは、あはははははは」
そんな自分の無様さが滑稽でおかしくて、僕はたまらず笑い出す。
やれやれ、結局スマートに決めることはできなかった。というか終始一貫して無様でみっともなかったような気がする。
なにしろ最後にはそのみっともなさでもって親分を説得したくらいだ。
今夜の僕の無様は光り輝いている。
「あはは、かっこわるいなぁ」
「なに言ってんだよ!」
僕の自嘲に、夕声が真剣なトーンで反論した。
「あんた、自分がとんでもないことやらかしたって、その自覚あんのかよ! あんたはあの文吉親分と渡り合って、最後には自分の主張を飲ませたんだぞ。しかも天地がひっくり返っても実現しないはずだった無理難題を……ああ、もう! 嬉しいはずなのに、全然感情が追いついてこない! 全部あんたのせいだかんな!」
「ご、ごめん」
「謝るなバカ! なんにも悪くない癖に!」
恐ろしく理不尽な怒りを僕にぶつけて、それから、彼女は言った。
「かっこ悪いわけ、ないだろ! 今日のあんたは、過去イチかっこいいよ!」
言葉とは裏腹のマジギレ口調で、夕声はそう言った。
僕は照れればいいのか戸惑えばいいのか、とりあえず頬をかいた。
そんな僕を、夕声は涙の滲んだ上目遣いで睨み付けて、問う。
「……あんた、いったい何者だよ?」
何者だ、と問われても。別に何者でもない僕にはどう答えたらいいかわからない。
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「ええと……椎葉八郞太です。ご存知のように」
椎葉八郞太、いかにもそれが僕の屋号だ。
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