2 / 20
02
しおりを挟む なんだか悔しくて涙目になりながら食事を進める。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
はぁ……なんでこんなことに……。
溜め息が出る。
「優希? どうしたんだ?」
手を止めて溜め息をつく俺に気がついたのか、藤條が心配そうな顔で覗き込んできた。
いや、原因はお前だから。
藤條を見て、再び溜め息が出る。
「?……さて、そろそろ行かないとな。ちょっと今日は遅くなった」
首を傾げる藤條だったが、急に立ち上がるとそう言って俺に手を差し出す。
遅くなったのもお前のせいだろがーっ!
頭にきて、俺は藤條を無視して席を立つ。
「あ……ごちそう様でした……」
席を立ってから思い出して、橘さんに声をかける。
あれ? そういえば、他にメイドとか――コイツの家族は?
ふと気になって周りを見たが、俺達3人しかいない。
なんだろう……この感じ。
「優希、ほら、用意しなきゃ」
ぼんやりしている俺に藤條が話し掛けてくる。
「あ……うん」
生返事をしながら俺は藤條の後に続いた。
☆☆☆
「どうぞ」
橘さんが車のドアを開け、にこやかに俺を見ている。
「…………」
なんだこれ。
いや、なんとなく想像はしたけど……これなんだっけ? ベンツ?
車で送り迎えかー!
この坊ちゃんがっ!
目の前の、シルバーの高級車に俺はなんだか腹が立っていた。
いや、車で送ってもらえるなんて体験したことないし、ちょっとした感動でもあるんだけどさ。
なんとなく、ムカつく。
「優希」
俺がむくれていると、藤條が俺の手を掴んで車に乗り込む。
俺は歩いてく……って言おうかとも思ったけど、コイツの家から学校までどれだけあるか分からない。
まぁ、今日は乗ってやろうじゃねぇか。
ゆっくりと車は進む。
ここどこなんだろう。
俺は車の窓からじっと外を眺めていた。
あまり見たことないような景色。
いや、知ってるかもしれない。
不思議な感覚だ。
車に乗って10分。
俺はずっと外を眺めていた。
藤條も特に話し掛けてもこなかった。
「優希」
しかし、ぼんやりと外を眺めていたら、急に声を掛けられて横を見る。
「んんっ!?」
ぬわーっ!
バカーっ!
横を見た瞬間にキスされた。
ちょっと待てーっ!
バシバシと藤條の胸を叩く。
「いたっ、痛いって、優希っ」
数秒間ほどくっついていた藤條の唇がやっと離れて、顔をしかめながら声を上げる。
「うるせぇっ! 何すんだっ! このっ、変態っ!」
俺は涙目になりながら思い切り睨み付けた。
「……変態って……」
藤條はがっくりとうな垂れていた。
当たり前だ。お前なんか変態以外の何者でもないわっ。
落ち込んでいる藤條を無視して再び窓の外を眺めた。
「あっ!」
気が付くと、もう学校の校門近くまで来ていた。
校門の100メートルくらい手前に車は止まる。
そして、橘さんは車から降りると後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
俺はすぐに車外へと降りる。
「橘さんっ、ありがとうっ」
橘さんにお礼を言うと、藤條が降りてくる前に俺は走り出した。
コイツと一緒に登校だなんてごめんだっ。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえたけど、無視だ無視。
あんな変態野郎。
必死に校門まで走り続ける。
「はぁ……はぁ……」
大した距離じゃなかったけど、妙に息切れした。
目の前の見慣れた学校。
ここは俺の知ってる学校なんだろうか……。
2
お気に入りに追加
355
あなたにおすすめの小説

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる
しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ジュゼットは、兄から父が背負った借金の金額を聞いて絶望した。
しかも返済期日が迫っており、家族全員が危険な仕事や売られることを覚悟しなければならない。
そんな時、借金を払う代わりに仕事を依頼したいと声をかけられた。
ジュゼットは自分と家族の将来のためにその依頼を受けたが、当然口外できないようなことだった。
その仕事を終えて実家に帰るジュゼットは、もう幸せな結婚は望めないために一人で生きていく決心をしていたけれど求婚してくれる人がいたというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる