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王立貴族学院 二年目
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とうとう新学期が始まり、わたしもついに2年生になってしまった。
教室に入れば代わり映えのしない子息令嬢様方と同じ繰り上がりのクラス。
うん、留年しなかっただけありがたく思うことにしよう!
つい先日まで学園に通ってたから新鮮さはないけどとりあえず気持ちだけは切り替えていかないとね。
思えば1年前は新入生として入学式でこの学園の門をくぐった瞬間、突然、前世の記憶が蘇ったんだった。
気が付けば西洋チックな施設内ですっかり迷子と化してて何だか妹がよくやっていたゲームっぽい世界だよなと急に戦々恐々になったし。
まあ、それを確定づけるかのようにヒロインっぽいマリアやメアリとの出会いとさらには相反したような雰囲気を持つ貴族令嬢たちがいて既視を感じまくってた。
だからこそ、地味に目立たず、騒がず、大人しくと誓って身を潜めてやり過ごすはずだったのにわたし自身も担ぎ上げられたかのように表舞台に立たされていたという始末。
避けようにも何だかんだと渦中に巻き込まれてるっぽくってどうしようととりあえず攻略っぽいことに参加しようとしてみたものの、ふといろいろと気づくことがあった。
それでわたしだけはもういいやと放棄したはずだったのにな。
てっきりマリアやメアリたちだけでも攻略していくものなのかなとか思い込んでたけども。
蓋を開けたら今では倦厭していた人たちとすっかりお仲間的に仲良くなっているような状況だよね……、たぶん。
だからさあ、これってもうゲームっぽい雰囲気は終了で問題ないよね?
攻略対象の代表的な王子や宰相くん、騎士くんたちはそれぞれカップルになってるもん。
確か卒業パーティーで恋人同士が踊ってハッピーエンドが定番だって妹に見せてもらった記憶がある。
攻略対象者と敵対する相手との決着をつけるイベントを熟した後の話だけど。
大体のところ、ヒロインがハッピーエンドを迎えてライバルが振られてしまう流れだって。
……ってあれ? 何かおかしくない?
わたしたちは誰ともパートナーになってないし、しかも3人で踊っちゃってたよ。
それにどう考えてもわたしたちは悪役の立ち位置じゃおかしいよね?
元平民だって噂されてお貴族令嬢様方には白い目で見られてたし、どっちかっていうと追い詰められていた方だから。
あっ、でもそもそもマリアもメアリも別に王子や騎士くんを恋愛対象的に好きじゃなかったんだよなぁ。
二人に対してわたしが一方的に勝手に勘違いしてたみたいだけだし、わたしの方も別に宰相くんのこと全く意識してなかった。
アイネさんが絡んできたから目が向いたような感じだったし、どこか好きになる要素ってあったっけ?
というより、もしかするとわたしたちがヒロインじゃないのかもしれないってことだよね?
そうであれば杞憂。転生した先がゲームとは無関係の世界といえるし。
でも普通なら有り得ないほど執拗にあれだけ絡まれといて何の関係もないって変な感じがする。
余りにも生い立ちやら身の上が偏り過ぎちゃってて容姿もかわいい注目株だったりするし。
それに高位貴族様方や王族と関わってしまうことなんて普通では考えられない。
これでヒロインではないとすると一体わたしたちの存在は何? ってことになる。
……ん、待てよ、最初から攻略対象的な3人は婚約者がいた前提だよね?
わたしもそうだけどマリアもメアリもそれが原因で恋愛要素をこれっぽっちも持ってなかったんだとすると……。
つまり、誰も恋愛なんてしてなかったことになる。この怪しげな世界観の中で。
平たく言えばゲーム開始すら起こってなかったかもしれない。
ってことはヒロイン然としたわたしたちは恋愛していないと見なされてるとか、なんて……ね。
「いいか、明後日には入学式が執り行われる。昨年案内されたように新入生歓迎イベントとして交流会が翌日行なわれる予定だ。君たちは今年、上級生と組むことになっている。今から講堂でその組み合わせについての会合が行なわれるから各自移動するように」
キルシェ先生の言葉にはっとなる。いつの間にかホームルームが始まってた。
思わずシャツの袖口に注目してしまうけど、ジャケットを羽織っていて見えなかった。
とはいえ、1年はあっという間で新入生歓迎イベントとしての交流会か。
そういえば男女のお貴族先輩方に施設案内してもらったよね、緊張しまくりながらも。
まあ、去年の出来事を振り返れば同じ行事が先輩としての立場で降りかかるってことか。
流れ的には同じように繰り返されるんだよね。当たり前だけど。
ん、繰り返される? 同じイベントごとが新しく?!
不意にリスタートって単語が思い浮かんでしまう。
ははっ、まさか、これからがゲーム開始じゃないよね?
1年次はわたしたちが恋愛しなかったと見なされてこれがやり直しって訳じゃない、よね……?
ううっ、何でこんなことが急に頭の中で思い浮かんでしまうんだ!!
変な予感が過ぎる中、わたしたちは講堂へと移動した。
教室に入れば代わり映えのしない子息令嬢様方と同じ繰り上がりのクラス。
うん、留年しなかっただけありがたく思うことにしよう!
つい先日まで学園に通ってたから新鮮さはないけどとりあえず気持ちだけは切り替えていかないとね。
思えば1年前は新入生として入学式でこの学園の門をくぐった瞬間、突然、前世の記憶が蘇ったんだった。
気が付けば西洋チックな施設内ですっかり迷子と化してて何だか妹がよくやっていたゲームっぽい世界だよなと急に戦々恐々になったし。
まあ、それを確定づけるかのようにヒロインっぽいマリアやメアリとの出会いとさらには相反したような雰囲気を持つ貴族令嬢たちがいて既視を感じまくってた。
だからこそ、地味に目立たず、騒がず、大人しくと誓って身を潜めてやり過ごすはずだったのにわたし自身も担ぎ上げられたかのように表舞台に立たされていたという始末。
避けようにも何だかんだと渦中に巻き込まれてるっぽくってどうしようととりあえず攻略っぽいことに参加しようとしてみたものの、ふといろいろと気づくことがあった。
それでわたしだけはもういいやと放棄したはずだったのにな。
てっきりマリアやメアリたちだけでも攻略していくものなのかなとか思い込んでたけども。
蓋を開けたら今では倦厭していた人たちとすっかりお仲間的に仲良くなっているような状況だよね……、たぶん。
だからさあ、これってもうゲームっぽい雰囲気は終了で問題ないよね?
攻略対象の代表的な王子や宰相くん、騎士くんたちはそれぞれカップルになってるもん。
確か卒業パーティーで恋人同士が踊ってハッピーエンドが定番だって妹に見せてもらった記憶がある。
攻略対象者と敵対する相手との決着をつけるイベントを熟した後の話だけど。
大体のところ、ヒロインがハッピーエンドを迎えてライバルが振られてしまう流れだって。
……ってあれ? 何かおかしくない?
わたしたちは誰ともパートナーになってないし、しかも3人で踊っちゃってたよ。
それにどう考えてもわたしたちは悪役の立ち位置じゃおかしいよね?
元平民だって噂されてお貴族令嬢様方には白い目で見られてたし、どっちかっていうと追い詰められていた方だから。
あっ、でもそもそもマリアもメアリも別に王子や騎士くんを恋愛対象的に好きじゃなかったんだよなぁ。
二人に対してわたしが一方的に勝手に勘違いしてたみたいだけだし、わたしの方も別に宰相くんのこと全く意識してなかった。
アイネさんが絡んできたから目が向いたような感じだったし、どこか好きになる要素ってあったっけ?
というより、もしかするとわたしたちがヒロインじゃないのかもしれないってことだよね?
そうであれば杞憂。転生した先がゲームとは無関係の世界といえるし。
でも普通なら有り得ないほど執拗にあれだけ絡まれといて何の関係もないって変な感じがする。
余りにも生い立ちやら身の上が偏り過ぎちゃってて容姿もかわいい注目株だったりするし。
それに高位貴族様方や王族と関わってしまうことなんて普通では考えられない。
これでヒロインではないとすると一体わたしたちの存在は何? ってことになる。
……ん、待てよ、最初から攻略対象的な3人は婚約者がいた前提だよね?
わたしもそうだけどマリアもメアリもそれが原因で恋愛要素をこれっぽっちも持ってなかったんだとすると……。
つまり、誰も恋愛なんてしてなかったことになる。この怪しげな世界観の中で。
平たく言えばゲーム開始すら起こってなかったかもしれない。
ってことはヒロイン然としたわたしたちは恋愛していないと見なされてるとか、なんて……ね。
「いいか、明後日には入学式が執り行われる。昨年案内されたように新入生歓迎イベントとして交流会が翌日行なわれる予定だ。君たちは今年、上級生と組むことになっている。今から講堂でその組み合わせについての会合が行なわれるから各自移動するように」
キルシェ先生の言葉にはっとなる。いつの間にかホームルームが始まってた。
思わずシャツの袖口に注目してしまうけど、ジャケットを羽織っていて見えなかった。
とはいえ、1年はあっという間で新入生歓迎イベントとしての交流会か。
そういえば男女のお貴族先輩方に施設案内してもらったよね、緊張しまくりながらも。
まあ、去年の出来事を振り返れば同じ行事が先輩としての立場で降りかかるってことか。
流れ的には同じように繰り返されるんだよね。当たり前だけど。
ん、繰り返される? 同じイベントごとが新しく?!
不意にリスタートって単語が思い浮かんでしまう。
ははっ、まさか、これからがゲーム開始じゃないよね?
1年次はわたしたちが恋愛しなかったと見なされてこれがやり直しって訳じゃない、よね……?
ううっ、何でこんなことが急に頭の中で思い浮かんでしまうんだ!!
変な予感が過ぎる中、わたしたちは講堂へと移動した。
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