ヒロインの、はずですが?

おりのめぐむ

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王立貴族学院 一年目

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 決められた席に着くとホッと一息。廊下側、一番後ろの端っこの席でラッキー!
 この席なら全体が見渡せるし、何かあった時に逃げやすいよね!
 そんな風に思いながらも視線はさっきからある場所へ惹き付けられてる。
 うん、絶対これは何か起こるようなクラス編成だよね。
 ……というのも教室への移動中からキラキラした人たちが目に入ってた。
 このクラス、かねがねお噂の方々がいるっぽい。
 わたしの席から斜め前方に視線を向ければ中央には妙にオーラを放つ大きな塊。
 その中でも瑞々しい黄緑がかった金色の髪で見目麗しい姿のひと際キラキラした少年が目に映る。
 同じ制服着てるのに仕立てが違うように見えるのは何故だろう?
 うぉ~、あの神々しさは正に王子然としている。きっと彼が第二王子だろうよ。
 オーラが違うっていうかこれだけ離れていてもとにかくかっこよさが伝わってくる。
 あの男子が王子でなかったら誰が王子様かって!
 そんな王子様に負けじと違った存在感をアピールする人。
 その隣に座るこれまた赤みがかった銀色の髪をなびかせ、物凄い美人さんがいる。
 座っているだけなのに姿勢が綺麗で妙な圧倒感がある。綺麗だけどなんか怖い。
 どうして綺麗な人って黙っていると怖そうに見えちゃうかなぁ。
 ま、実際に怖かったりもする場合もあるけどね。
 あの男子が王子様であればおそらくこちらが婚約者様であろうご令嬢かな。
 で、王子(仮)の横の席にいる濃い紫の髪を一つに纏めた銀縁を光らせた眼鏡男子。
 きっちりと制服を着こなす清潔感のある真面目な雰囲気。クラス委員長とかやらされそうなタイプ。
 優等生感を醸し出した利発そうな感じから攻略対象者感が溢れてる気がする。
 そして王子(仮)の後ろにはとオレンジ色の髪を持つガタイの良い男子がいる。
 制服を着ていても鍛えてるよと言わんばかりの筋肉質な身体つきが顕著だし。
 オレ、体育会系ッス!的な反面、精悍な顔付きには隙がない。
 防御感のあるその存在はう~ん、これまた攻略対象者っぽい感じがする。
 ゲームでの定番的人員につい当てはめてしまうけど、皆も凛としていて存在感が半端ない。
 キングマーク国の王子入学は間違いないのだし、他のクラスじゃないと思う。
 悲しいことにこの国の王子の顔すら知らないわたし。
 だけどそうじゃないかなと肌で感じてしまうのも無理はないと思う。
 ホント、攻略対象者って空気感が滲み出ている。今のところ、確かめるすべはないけどね。
 ちなみに今朝のマリアさんとソフィアさんも同じクラス。
 ちょうど斜め前の席でちょっと嬉しい。目が合った時、ニコって微笑んだ顔も可愛かったし。
 ソフィアさんはその隣の席でオーラグループに近い。ちょうどオレンジ髪男子の隣になる。
 そうこうするうちに教室の扉が開き、男性が入ってきた。
 
「私はロバート・キルシェだ。このクラスの担当だ。よろしく頼む。それでは自己紹介をしてもらおう」

 教壇の前にわたしたちを探してくれた先生が立っていた。
 出会った時、担当って言ってたし、当たり前か。
 それにしても一体、いくつぐらいなんだろうか。まだ若そうだけど、落ち着いた雰囲気を持ってるよなぁ。
 こんなやんごとなさげな生徒のいる担当教員とか重責があり過ぎるでしょ。
 それなのに堂々としていてちょっと尊敬する。

 自己紹介が始まり、顔と名前を覚えようと集中する。
 ここぞとばかりに確認できるチャンス到来ってやつだ。
 予想はたてたものの、勘違いってこともある。まあ、ほぼ当たってるとは思うけど。
 それにこれからの生活、関わらないように注意すべき人物には近寄らないようにしないと。
 地味に目立たず、騒がず、大人しく。
 オホホ、こう見えてエセ貴族なんですもの! 擬態して平穏なキャンパスライフを送らないと!

 で、予想通り、キラキラ男子は第二王子確定だった訳でメラオン・キングマークと名のった。
 やっぱりその婚約者だった美人はセレーヌ・フラーグム公爵令嬢。はは、上級貴族だね。
 利発そうな眼鏡男子は宰相の息子のリック・ヴアインで、ガタイのいい男子は騎士団長の息子のカイン・ケラスム。将来、第二王子の側近ってことだよね?
 って怖い怖い怖い怖い怖い。
 傍観的に当てはめてはみたものの、普通はこんな偶然なんてありえない。
 同じクラスに王子、宰相、騎士に、圧迫感のある婚約者令嬢だなんて悪役令嬢っぽい設定、見事ハマってるよね?
 どう考えても妹のやってたゲーム設定にドンピシャだよ。
 何のゲームか知らんけど、もう正に攻略対象者認定、確実じゃんか! 怖い、怖すぎる!!
 ってことはわたしはヒロイン設定って考えても可笑しくないよね、多分。
 いや、仮にそうだとしても擬態するんだった。参加予定のないゲームは始まるわけないんだし!
 そう言い聞かせながらも重い気持ちは消えなかった。
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