RPGの魔王が乙女ゲームに転移して、俺様王子に逆攻略される話

二階堂まりい

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魔王、推理(物理)する

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「今まで経験してきたルートの記憶を誰よりも保持しているキャラクターが居る。
 犯人候補を探すにあたり、彼女の協力をあおいだ」
 促すと、ルルが挙手した。

「私、このゲームのヒロインであるルル・プリエが証言します。
 デゼールさん、ヴェルティージュさん、ティレさんに私を加えた四人が、この乙女ゲームのジーヴルルートで描かれた、ジーヴルさんが集めた伴侶候補でした」

「というわけだ」
 ……というか、ジーヴルの守備範囲広すぎないか?
 正統派ヒロインのルル、クールなメイドのデゼール、儚げ美少年ヴェルティージュ、寡黙イケメンのティレって。
 プラス、この魔王トラゴスだろう?
 見事にタイプがバラバラではないか。
 まあ、そんなことはどうでもいい。


 四次元的に考えろ、とはつまり。
 この乙女ゲーム世界で多層的に蓄積した「複数のルート分岐」や「多数のエンディング」といった、目には見えないが確かに存在する世界を推理のヒントにしろ、というお告げだったのだ。
 
 あんな抽象的なお告げから、そこまでの考えに至るとは。
 俺、さては天才か?


「私が王子様の魔法を封印した犯人だと疑っているのですか?」
 砂魔法使いのデゼールが、こちらに厳しい目を向けた。

「ああ。
 ジーヴルは自身のルートで、君たちのうちの誰かに刺されるほどの経験をしているそうだ。
 色恋関係でジーヴルに恨みを抱いていても、おかしくはない。
 伴侶候補である俺だけがジーヴルに認識されなくなっているのも、動機に恋愛が絡んでいるならば納得はいく」
 俺が答えると、デゼールと磁力魔法使いのティレは深いため息をついた。
「……馬鹿馬鹿しい」
「王子様のルートに居た私たちならともかく……今の私たちには、王子様に対して特別な感情などありません」

「僕も、心当たりは無いよ……。
 そういう物騒なのは苦手……」
 ヴェルティージュが物憂げに言う。


「しかし三人とも、ここ最近ジーヴルに接近して魔法を掛けるチャンスがあったこともまた事実だ。
 社交パーティーや馬術大会がそれだ。
 遅効性の魔法などいくらでも存在するから、日付云々は言い訳にならんぞ」
 俺だって考えなしに犯人候補を集めた訳ではないのだ。
 反論ならいくらでも出来る。

「はいはい、素朴な疑問!
 砂魔法も幻覚魔法も磁力魔法も、魔法の封印とか記憶の操作と関係あるとは思えないけど」
 アンジェニューが口を挟んだ。
 まあ、この場にいた全員が思っていたことだろう。
 ……正直、俺も未だにそう思っているし。


「そのことで再確認しておくが、ルルも各ルートの記憶が完全にあるわけではないのだな?」
 俺が問うと、ルルがうなずく。
「うん。攻略の有利になりすぎる情報は、エンディングを迎えた時点で消されてる」
「つまり、ライバルキャラがどんな攻撃をしてきたか……なんて記憶は真っ先に消去の対象ということだな」

 そう、そこなのだ。
 この闘技場で解決しなくてはならないことは!


 俺はラスボスらしく高笑いして、デゼール、ヴェルティージュ、ティレに指を突きつけた。
「それでは推理タイムだ!
 そこの三人!
 全員まとめて、俺にかかってこい!」

「え!?」
 三人はもちろん、周囲も絶句している。
 まあ、この恐るべき魔王トラゴスに宣戦布告されれば当然の反応だろう。

「安心しろ、手加減はする」
「それは推理……なの……!?」
 ヴェルティージュはおろおろしている。

 しかしデゼールとティレは腹をくくったようだった。
「無駄だとは思いますが、仕方ありませんね。
 やるからには、このデゼールの無実を証明してくださいね。トラゴスさん」
「……行くぞ」
 

「この魔王トラゴスと戦えることを光栄に思うが良い!」
 俺はさっそく、魔法陣を複数展開して、炎を射出した。

 しかし炎は俺の操作に反して、三人を避けるように逸れてしまう。
 見れば、ティレが展開した魔法陣が三人を守っていた。

「炎は反磁性の物質……」
 俺とティレの声が重なった。
 炎のような反磁性の物質は、磁力に弾かれてしまう。


「ならば、これはどうだ!?」
 俺が魔法の出力を上げ、高温の炎の渦で三人を包み込んだ。

 ティレの磁力魔法は、魔法陣が磁石のような働きをしているに違いない。
 しかし磁石は一定の温度、いわゆるキュリー温度まで熱すると、磁力を失うのだ。
 
「っ……さっそく俺の磁力の弱点に気付くとはな」
 ティレも俺の意図を悟ったらしい。
 彼の魔法陣は加熱されて光を失い、炎が三人に迫りつつある。


 その時デゼールが、大きな魔法陣を展開した。
 ずっと念を込めていたものが、やっと完成したのだ。
「反撃の時間だ!」
 地面いっぱいに広がった魔法陣から、競技場に大量の砂があふれてくる。
 砂が集まって人型を形成する……ゴーレムというやつだ。
 ゴーレムたちが、寄ってたかって俺を蹴りつけてきた。

 走ってかわすが、砂に足をとられてしまう。
 思い切って靴を脱ぎ捨てると、山羊に似た構造の足のおかげで多少は走りやすくなった。
 しかし、靴に比べればマシという程度だ。


 俺がゴーレムに気を取られて魔法陣を維持する手を緩めたうちに、ティレが魔法陣を立て直し、三人を包んでいた炎は弾かれてしまった。
 

 さらに、ティレが砂鉄で作ったナイフをゴーレムが飛ばしてくるという連携プレイまで始めやがった。


 この「推理」……一筋縄ではいかなさそうだ!
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