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文章講座
語彙力があるように見せかけよう③
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①と②では、語彙力があるように見せかけるためには類語辞典を活用しよう! という割と当たり前のことを書きました。
しかし、辞典を見ても類語が見つからない……! という単語も、もちろんあると思います。
例えば「刀」という単語は、刀を武器にして戦うキャラクターを書いているならば頻出すると思います。
しかし「刀」の類語なんか、そんなにありませんよね。
「剣」……だと武器の形状が変わってしまいますし。
以下、ちょっと試しに書いてみます。
○
Aが振り下ろした刀を、Bも刀で受け止める。
二つの刃が拮抗し、じりじりと火花を散らす。
睨み合いの末に、相手の得物を弾き飛ばしたのはAであった。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
とりあえず「刀」を「得物」「刃」に言い換えるテクニックを使いつつ、鍔迫り合いを描写してみました。
全部「刀」で済ませるよりは多少マシかもしれませんが、語彙力のある文章には見えないのではないでしょうか。
私はこのような時、映像のカメラワークを意識して文章を書いています。
映像作品では一般的に、引きは客観、ズームは主観を描いているとされるそうです。
漫画のコマ割りも、多分同じではないでしょうか。
映像の引きとズームを切り替える様子をイメージしながら、
状況や動作などの目に見える客観的事実と、キャラクターの思考や感情などの目に見えない主観的なものを交互に書くというのが、
私が気をつけて行なっている小技です。
それを踏まえて、先程の文章を弄ってみます。
○
Aが振り下ろした刀を、Bも刀で受け止める。
『Aの奴、いつの間にか成長してやがる……!』
Bに焦りが滲む。
二つの刃が拮抗し、じりじりと火花を散らす。
『負けたら、魔王様に何と言えば……!』
Bの脳裏に浮かぶのは、主人の恐ろしい姿であった。
睨み合いの末に、相手の得物を弾き飛ばしたのはAであった。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
小技を使った方が、語彙力があるように見えるのではないでしょうか。
何故なら、心理描写を挟むことによって、
同じ単語(上の例では刀)が出現する箇所を出来るだけ離せるからです。
セコいですね。
そうすることで、言い換えることなく「刀」「刀」と連発していても、バレない(気がする)! というわけです。
ちなみに一人称でも普通に使える小技です。
○
俺が振り下ろした刀を、Bは刀で受け止める。
Bの呼気が荒くなるのを感じた。こいつ、おれの成長に驚いてやがる!
二つの刃は拮抗し、じりじりと火花を散らす。
俺に負けた時の言い訳を、魔王様のために考えてやがるってツラのB。
その必要は無いぜ、逃さず殺してやるからよ、と俺は心の中で嘲笑った。
睨み合いの末に、俺はBの得物を弾き飛ばした。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
こんな感じです。
ところでこのエッセイは、論文にも役立つかもしれないという主旨で書いているので、そちらについても触れておきます。
論文では小さな事実(見えているもの、動作の描写に該当)と、それについての考察(見えないもの、心理描写に該当)を交互に積み重ねて、最後に大きな結論へ繋げていくものですよね。
なのでこの小技は意識せずとも使えていることが多いと思います。
どうしても語彙力の無い論文に見える! と言う時は、文をちょっと入れ替えてみるだけでも良い感じになるかもしれません。
そもそもの話、せっかくの小説なのですから、人物の動作だけでなく、
動作によって生まれる心の動きも書いてあげたいですよね。
もちろん、さりげない動作で心理を表現するというのも素敵なものです。
そこら辺は、読者に明確に伝えたい感情なのか、或いはほのめかしたいのか……情報開示の度合いによって使い分けると良いと思います。
物語開始時点と終了時点を比較して、主人公の心境に変化があることこそが小説の条件だ、とは高校時代の恩師の談です。
適度な心理描写は、文章を小説たらしめるだけでなく、
語彙力があるように見せかけることも出来るというお得な技なのです。
今回も「そんなの分かってるんだよ!」と言われてしまいそうなことを書きましたが、
誰かの文章に関するモヤモヤを少しでも解消する助けになれましたら幸いです。
しかし、辞典を見ても類語が見つからない……! という単語も、もちろんあると思います。
例えば「刀」という単語は、刀を武器にして戦うキャラクターを書いているならば頻出すると思います。
しかし「刀」の類語なんか、そんなにありませんよね。
「剣」……だと武器の形状が変わってしまいますし。
以下、ちょっと試しに書いてみます。
○
Aが振り下ろした刀を、Bも刀で受け止める。
二つの刃が拮抗し、じりじりと火花を散らす。
睨み合いの末に、相手の得物を弾き飛ばしたのはAであった。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
とりあえず「刀」を「得物」「刃」に言い換えるテクニックを使いつつ、鍔迫り合いを描写してみました。
全部「刀」で済ませるよりは多少マシかもしれませんが、語彙力のある文章には見えないのではないでしょうか。
私はこのような時、映像のカメラワークを意識して文章を書いています。
映像作品では一般的に、引きは客観、ズームは主観を描いているとされるそうです。
漫画のコマ割りも、多分同じではないでしょうか。
映像の引きとズームを切り替える様子をイメージしながら、
状況や動作などの目に見える客観的事実と、キャラクターの思考や感情などの目に見えない主観的なものを交互に書くというのが、
私が気をつけて行なっている小技です。
それを踏まえて、先程の文章を弄ってみます。
○
Aが振り下ろした刀を、Bも刀で受け止める。
『Aの奴、いつの間にか成長してやがる……!』
Bに焦りが滲む。
二つの刃が拮抗し、じりじりと火花を散らす。
『負けたら、魔王様に何と言えば……!』
Bの脳裏に浮かぶのは、主人の恐ろしい姿であった。
睨み合いの末に、相手の得物を弾き飛ばしたのはAであった。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
小技を使った方が、語彙力があるように見えるのではないでしょうか。
何故なら、心理描写を挟むことによって、
同じ単語(上の例では刀)が出現する箇所を出来るだけ離せるからです。
セコいですね。
そうすることで、言い換えることなく「刀」「刀」と連発していても、バレない(気がする)! というわけです。
ちなみに一人称でも普通に使える小技です。
○
俺が振り下ろした刀を、Bは刀で受け止める。
Bの呼気が荒くなるのを感じた。こいつ、おれの成長に驚いてやがる!
二つの刃は拮抗し、じりじりと火花を散らす。
俺に負けた時の言い訳を、魔王様のために考えてやがるってツラのB。
その必要は無いぜ、逃さず殺してやるからよ、と俺は心の中で嘲笑った。
睨み合いの末に、俺はBの得物を弾き飛ばした。
Bの刀は遠くの地面に突き刺さる。
○
こんな感じです。
ところでこのエッセイは、論文にも役立つかもしれないという主旨で書いているので、そちらについても触れておきます。
論文では小さな事実(見えているもの、動作の描写に該当)と、それについての考察(見えないもの、心理描写に該当)を交互に積み重ねて、最後に大きな結論へ繋げていくものですよね。
なのでこの小技は意識せずとも使えていることが多いと思います。
どうしても語彙力の無い論文に見える! と言う時は、文をちょっと入れ替えてみるだけでも良い感じになるかもしれません。
そもそもの話、せっかくの小説なのですから、人物の動作だけでなく、
動作によって生まれる心の動きも書いてあげたいですよね。
もちろん、さりげない動作で心理を表現するというのも素敵なものです。
そこら辺は、読者に明確に伝えたい感情なのか、或いはほのめかしたいのか……情報開示の度合いによって使い分けると良いと思います。
物語開始時点と終了時点を比較して、主人公の心境に変化があることこそが小説の条件だ、とは高校時代の恩師の談です。
適度な心理描写は、文章を小説たらしめるだけでなく、
語彙力があるように見せかけることも出来るというお得な技なのです。
今回も「そんなの分かってるんだよ!」と言われてしまいそうなことを書きましたが、
誰かの文章に関するモヤモヤを少しでも解消する助けになれましたら幸いです。
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