上 下
6 / 6
第一章 入学を回避せよ

5 調査せよ

しおりを挟む
 誠に遺憾、遺憾でございます。

 意味わからないイベントを終え、何故か特別入学処置がなされてしまった。俺が助けられた理由に関してはおそらく、望魔鏡と言う道具で俺の居場所を発見されたのだろう。あれはいろいろなルートで大暴れするからな。

 しばらく保健室で休んでいると一人の白衣を着た男に体力を回復させられた。
 あの男は――催眠療法だ。とわけわからないことを言っていたが、あれは回復魔法だろう。まだ入学していない者にバレるわけにはいかないからな。

 この世界(コキしま選)の魔法は皆が想像するようなものでは無い。どちらかと言うと科学を極めた結果の産物である。天界の天使や魔界の魔族たちに人類が対抗するための武器である。


「まあ、そんな深く考える必要もないんだけどな」

 自室の布団で目を瞑る。そうすることでゲームの内容を思い出すことに集中できる。
 ここまで言うとゴリゴリのファンタジー魔法バトル物に感じるだろうが、実際には普通の学園恋愛ものである。魔法云々はおまけレベルだ。

「入学が決まってしまった以上は逃げられないか……それにしても他の特別処置の奴らは何者だ? あんな奴らゲームには居なかったと思うが」

 俺が逃げ出そうとしても生徒となった人間をあの学園は逃がさない。俺にできた選択肢は入学しないように逃げることだった。が、謎の特別処置で決まってしまった。
 ゲームの登場人物のすべてを把握している訳では無いが、あんな厨二ネームは無かったと記憶している。

 奴らが俺の敵に成るならば、対策を練るためにも情報が必要だ。

『――はい、わかりました。三日ほど掛かりますが大丈夫ですか?』

「構いません、金は惜しみませんので好きにお願いします」

『では情報を渡し次第、いつもの口座にお願いします』

 俺はこの世界における最高の情報屋に調査の依頼をした。
 ゲームをやっているときにはなぜ豚が情報屋と知り合いなのか不思議だったが、豚として生きてきた俺は知っている。こいつが俺に生活費を渡している、組織とのパイプ役なのだ。

 








皇視点――。


「皐月ちゃんありがとうございますだよぉ!! これで豚次くんと一緒に学園生活を送れるよぉ!」

「引っ付かないで摩耶、朱里に言われたから仕方なくよ……」

 フリフリで際どいアイドル服を着た皇摩耶は、同じデザインの色違いを着た三日月皐月に抱き着きお礼を言っていた。

 赤髪のショートで眼鏡を掛けた知的でクールな女性だ。
 金髪のツンデレ担当兼リーダー兼センターの朱里、頭脳担当兼クール兼モデルの皐月、優しきお姉さん兼グラビア担当の摩耶。三人でユニットを組んでいる。

「ふう、私のお願いとは言えお父様が何でもない一般の男……それもデブでブスで孤児の男を天魔に入学させるとは思わなかったわ」

「そ、そんなひどいこと言うと怒りますよ!」

「あんたたちうるさいわよ!」

 腕を組み、壁にもたれかかった朱里が怒る。

 朱里は摩耶のメールを見てしまった。そこには彼女を助けたという男の返信があった。

 その内容は彼女から見て不思議だった。まるで距離を置こうとしているような――関わりたくないようなそんな返信だった。アイドルであり、美人な自分たちに寄って来る奴はたくさん居る。しかしこの男は助けておきながらも距離を取ろうとしているのだ。

「ふん! どういう男かは学園に行けば分かることよ! その時に見極めるわよ」

 三日月グループ。世界最高権力を有する、天界と魔界の窓口である。

「待っててね豚次くん!! 一緒に学園生活送ろうね!!」

 摩耶はケータイを握りしめ、豚次の顔を思い浮かべる。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

処理中です...