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第一章 入学を回避せよ
4 試験をボイコットせよ
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入学試験日――。
日本領海にひっそりと存在する島に建つ『天魔学園』は、十二月に試験がある。普通の高校より早めの試験日、十二月二十五日に受験者は学園の輸送船に乗り試験を受ける。
表向きは寮生活で三年間拘束されるから、その準備期間を長めに設けるためとなっている。しかし真相は試験日となるその日に魔界と天界のゲートが開くからである。
「まあ受けないんですけどね」
俺は船の出る港から遠く離れた農村の廃屋に身を潜ませている。ここは母方の実家の家である。母もその両親も死んでしまっているが……。
主人公と幼馴染(元)ヒロインが家に来てからは、表向きはまた登校していた。下手に動くと強制力などで無理やりなイベントが起きて強制入学とかに成りかねない。マサヨシが「一緒に行こうぜ」とか成美が「迎えに行くからな」とか言ってきたことからも俺を巻き込もうとする意志を感じる。
雪降るクリスマスイブの夜中の喧騒に紛れ、俺はこそこそと夜行バスと徒歩により田舎の農村にやってきたのだ。
ハアーと温かい息を両手に吹き、持ってきた毛布に包まり時間が経つのを必死に待つ。暖房などもちろん無く、隙間風が吹き荒む屋内でガタガタ震えながらも自分に言い聞かす。
「ここを耐えれば死なん――ここで耐えれば死なん――ここで耐えれば死なん――」
寒さで死ぬって可能性を考えていなかった俺は気を失ってしまった。
(この寒さで気を失ったら死ぬ――)
(暖かい……落ち着くな……ここは?)
死すら覚悟したが、どうやら生きているようだ。
目を覚ますと保健室の様な部屋のベッドに寝ていた。
「――起きたか!? 大丈夫か!」
「――ふう、だから言っただろ? この豚は死なないって」
「うふふ、心配で夜中看病していたのはどこの女の子だったかしら」
「な――誰のことかな? 私は知らないな」
「そう言うことにしとくわね」
横を見るとマサヨシと成美、それに白衣に際どいシャツとミニスカートな女性がいる。ここから導かれる答えは一つである。
(ふう……どう足掻いても俺を巻き込む気か)
この女は攻略ヒロインの一人で、唯一の生徒ではないヒロインだ。
環淫優――黒髪ロングの涙黒子で眼鏡を掛けたお色気ヒロイン。保健室の先生であり、保体を教える教師である。ギャルゲーなのにどう考えてもエロげーのヒロインである。
「俺はどうして助かったんだ? ここはどこだ」
「ああ、トンジの家に行っても居なかったから学園に連絡を入れたんだ。そうしたら学園の関係者がお前を見つけて連れてきてくれたんだ」
見つけた方法はいくつか思いつくが……どの道俺の作戦は成功しているのではなかろうか。試験は受けられなかった訳だし、倍率が尋常じゃないほど高く十人に一人しか受からない学園だ。俺みたいなどうでもいい奴なんかに特別扱いはしないだろう。助けたのはあくまでも命に係わるからだろうし。
俺を必要としているのは学園とは敵対している組織だし。
「はいこれ」
「んあ?」
優から一枚の紙が渡された。
『特別合格者六名――八神卓、呉羽翼、竹内最中、二階堂扇子、極薄伍夢、丸井豚次』
ごしごし――。
見間違いかな? うん、、まだ頭が活性化してないだろう。もう一度見よう。
『丸井豚次』
「――ゴフっ」
「トンジ? トンジー!!」
再び気を失ってしまう。どうしてこうなるの?
日本領海にひっそりと存在する島に建つ『天魔学園』は、十二月に試験がある。普通の高校より早めの試験日、十二月二十五日に受験者は学園の輸送船に乗り試験を受ける。
表向きは寮生活で三年間拘束されるから、その準備期間を長めに設けるためとなっている。しかし真相は試験日となるその日に魔界と天界のゲートが開くからである。
「まあ受けないんですけどね」
俺は船の出る港から遠く離れた農村の廃屋に身を潜ませている。ここは母方の実家の家である。母もその両親も死んでしまっているが……。
主人公と幼馴染(元)ヒロインが家に来てからは、表向きはまた登校していた。下手に動くと強制力などで無理やりなイベントが起きて強制入学とかに成りかねない。マサヨシが「一緒に行こうぜ」とか成美が「迎えに行くからな」とか言ってきたことからも俺を巻き込もうとする意志を感じる。
雪降るクリスマスイブの夜中の喧騒に紛れ、俺はこそこそと夜行バスと徒歩により田舎の農村にやってきたのだ。
ハアーと温かい息を両手に吹き、持ってきた毛布に包まり時間が経つのを必死に待つ。暖房などもちろん無く、隙間風が吹き荒む屋内でガタガタ震えながらも自分に言い聞かす。
「ここを耐えれば死なん――ここで耐えれば死なん――ここで耐えれば死なん――」
寒さで死ぬって可能性を考えていなかった俺は気を失ってしまった。
(この寒さで気を失ったら死ぬ――)
(暖かい……落ち着くな……ここは?)
死すら覚悟したが、どうやら生きているようだ。
目を覚ますと保健室の様な部屋のベッドに寝ていた。
「――起きたか!? 大丈夫か!」
「――ふう、だから言っただろ? この豚は死なないって」
「うふふ、心配で夜中看病していたのはどこの女の子だったかしら」
「な――誰のことかな? 私は知らないな」
「そう言うことにしとくわね」
横を見るとマサヨシと成美、それに白衣に際どいシャツとミニスカートな女性がいる。ここから導かれる答えは一つである。
(ふう……どう足掻いても俺を巻き込む気か)
この女は攻略ヒロインの一人で、唯一の生徒ではないヒロインだ。
環淫優――黒髪ロングの涙黒子で眼鏡を掛けたお色気ヒロイン。保健室の先生であり、保体を教える教師である。ギャルゲーなのにどう考えてもエロげーのヒロインである。
「俺はどうして助かったんだ? ここはどこだ」
「ああ、トンジの家に行っても居なかったから学園に連絡を入れたんだ。そうしたら学園の関係者がお前を見つけて連れてきてくれたんだ」
見つけた方法はいくつか思いつくが……どの道俺の作戦は成功しているのではなかろうか。試験は受けられなかった訳だし、倍率が尋常じゃないほど高く十人に一人しか受からない学園だ。俺みたいなどうでもいい奴なんかに特別扱いはしないだろう。助けたのはあくまでも命に係わるからだろうし。
俺を必要としているのは学園とは敵対している組織だし。
「はいこれ」
「んあ?」
優から一枚の紙が渡された。
『特別合格者六名――八神卓、呉羽翼、竹内最中、二階堂扇子、極薄伍夢、丸井豚次』
ごしごし――。
見間違いかな? うん、、まだ頭が活性化してないだろう。もう一度見よう。
『丸井豚次』
「――ゴフっ」
「トンジ? トンジー!!」
再び気を失ってしまう。どうしてこうなるの?
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