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婚約者から突然「他に好きな女性がいるから、婚約を破棄したい」と言われたんだが・・・

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侯爵令嬢である私、クリスティナは伯爵令息のトーマスと婚約することになった。
綺麗な青色の瞳が印象的で、すらっとしたイケメンの青年だ。
物腰も柔らかで、婚約者として不満は一つもない。


結婚まであと数週という時に、彼の邸宅へ呼び出された。
何の用なんだろうと思いながらも邸宅に行くと、客間に通された。

そこで彼は、
「あなたとの婚約を破棄したい」
とはっきりした口調で言った。

何の迷いもない声だ。

「ど、どうしてですか?」

そう問う私の声は自分でも戸惑うほど震えていて。

「他に好きな女性がいるんだ。とても素敵な女性だよ。ズヴァルト伯爵のご令嬢で、とても美しいんだ」
うっとりした顔で言う彼。
「何を仰っているのですか?」
「僕は、そのご令嬢と結婚しようと思っている。相手も了承しているんだよ」
「私とまだ婚約中ですよね?何を考えているのですか?」
彼が面倒くさそうに溜息を吐いた。

胸が苦しくなるくらい締め付けられる。

「私は了承できません。絶対に嫌です。私はあなたと結婚するのです」
「いいや。僕の意志は変わらないよ。あなたとの婚約は破棄する」

真剣なまなざしで彼は言う。

私が何を言っても彼は変わらないんだろう。

もういいやという気持ちになって、私は小さく頷いた。

「分かりました。私が何を言っても無駄なようですから」

ホッとしたような表情を見せる彼。

私との婚約を破棄するという任務が達成できて、安心したんですね。
むかついたけど、拳を握りしめて耐えた。



その後、トーマスの友人の友人から彼の噂を聞いた。

トーマスが結婚した伯爵令嬢は、金遣いが荒い女性らしい。このままでは家が傾いてしまうかもしれないとのこと。

いくらなんでも金遣いが荒すぎるだろう。

この噂を教えてくれた友人は、
「結婚する相手を間違えてしまったようね」
と笑っていた。

確かにそうかもしれない。



私も前を向こうと思って、両親に紹介してもらって男性とお見合いをした。
優しそうな笑顔で柔らかい声の男性だった。
縁談はトントン拍子に進み、結婚して同じ家に住み始めた。

今は幸せ。
私は結婚する相手を間違えなかったと自信を持って言える。
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