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婚約者が姉からの一方的な恋文に悩んでいるので、「そんなんだから結婚できないんだ」と説教した。
しおりを挟む婚約者のフェルミンは、かなりのイケメンである。
笑顔を向けられるだけで、胸がきゅーんとなる。
だから、笑ってもらいたくてたくさん冗談を言っていたら、
「面白い子だね」
と言われた。
シンプルに嬉しい。
それに、フェルミンは優しい人なの。
何気ない会話の中で、「チーズケーキが好き」と言ったら、そのことを覚えていてくれて美味しいチーズケーキをご馳走してくれた。
「ありがとうございます。好きって言ったこと覚えていてくれたんですね」
「当たり前だよ。結婚を約束した女性なんだから」
って胸がきゅーんとなる笑顔を向けられた。
「どう?喜んでくれた?」
フェルミンがそう訊いてくるので、私は大きく頷いた。
「当たり前ですよ!凄く嬉しいです!ありがとうございます!」
「そんなに大きな声で言わなくても聞こえているよ」
「あ、ごめんなさい」
私が口を手でおさえたら、フェルミンが私の頭を撫でてくれた。
フェルミンは私の両親に大変気に入られている。
人当たりが良く、穏やかな雰囲気があるから当然だ。
両親はよくフェルミンを家に招いて食事会やらお茶会やらを催した。
フェルミンは喜んで私の家にしてくれていたのだが。
「次の週末、私の家で食事会がありますの。ぜひ、来てくださいって」
「はい喜んで」といつも言うのだが、今日は違う。
「いや、用事があるんだ」
「そうですか。残念ですけれど、両親に伝えておきます」
「本当に申し訳ない」
次のお茶会も食事会も、「用事がある」ということでフェルミンは来なかった。
何回も続けば、怪しくなる。
フェルミンのことだから、浮気の心配はないだろうけど。
だから、フェルミンの家に行った時、
「私の家族が何か失礼をしましたか?」
なんて、思い切って訊いてみた。
「いや、えっと」
しどろもどろになるフェルミン。
「何かあるなら、おっしゃってください」
「……実は君の姉に、く、口説かれていて……お姉さんも出席している食事会に行くのが気まずいんだ。」
「はへ?」
おかしな声が出てしまう。
気を取り直して。
「それはどういうことなんでしょうか」
「お姉さんから、手紙が届くんだよ」
「どのような?」
「恋文のような手紙で……現物を持ってこよう」
フェルミンが書斎に行き、手紙の束を持って戻ってきた。
手紙を渡され、中の便箋を見る。
『あなたのことが頭から離れない』『あなたに恋しています』という恥ずかしい文言が書かれていた。
しかも、姉の筆跡で。
血液がこびりついた髪の毛が入っている手紙もあって、ゾッとした。
「姉がこんな物を?申し訳ありません」
「君が謝ることじゃないよ」
と言って、フェルミンが私を抱き寄せた。
「僕は君一筋だ。返事なんて一回もしたことがない」
「そうなんですか」
「ああ」
「分かりました。フェルミンさんを信じます。姉にも私から言っておきましょう」
私はフェルミンに言った通り、家に帰ってすぐ姉の部屋に向かった。
「お姉様。いらっしゃいますか?」
「ええ」
ドアを開けて、部屋に入る。
「お姉様はフェルミンさんに恋文を送っているそうですね」
「送ってないわよ」
「いいえ。現物を見ました。お姉様の筆跡でしたよ」
「だったら何か?」
「フェルミンさんは私一筋です。ご迷惑になりますから、辞めていただきたいんですよ」
「なんでそんなこと言うのよ!私は彼と仲良くなりたいのに!」
「だったら、フェルミンさんの気持ちを考えたらどうですか?」
「考えてるわ」
「考えていないんですよ。相手のことを全く考えてない。だから、結婚できないんですよ!」
「うるさい!」
と言って、私を部屋から追い出した。
何も言い返せないから、私を追い出したんだろう。
それからは、姉の手紙は届かなくなったらしい。
笑顔を向けられるだけで、胸がきゅーんとなる。
だから、笑ってもらいたくてたくさん冗談を言っていたら、
「面白い子だね」
と言われた。
シンプルに嬉しい。
それに、フェルミンは優しい人なの。
何気ない会話の中で、「チーズケーキが好き」と言ったら、そのことを覚えていてくれて美味しいチーズケーキをご馳走してくれた。
「ありがとうございます。好きって言ったこと覚えていてくれたんですね」
「当たり前だよ。結婚を約束した女性なんだから」
って胸がきゅーんとなる笑顔を向けられた。
「どう?喜んでくれた?」
フェルミンがそう訊いてくるので、私は大きく頷いた。
「当たり前ですよ!凄く嬉しいです!ありがとうございます!」
「そんなに大きな声で言わなくても聞こえているよ」
「あ、ごめんなさい」
私が口を手でおさえたら、フェルミンが私の頭を撫でてくれた。
フェルミンは私の両親に大変気に入られている。
人当たりが良く、穏やかな雰囲気があるから当然だ。
両親はよくフェルミンを家に招いて食事会やらお茶会やらを催した。
フェルミンは喜んで私の家にしてくれていたのだが。
「次の週末、私の家で食事会がありますの。ぜひ、来てくださいって」
「はい喜んで」といつも言うのだが、今日は違う。
「いや、用事があるんだ」
「そうですか。残念ですけれど、両親に伝えておきます」
「本当に申し訳ない」
次のお茶会も食事会も、「用事がある」ということでフェルミンは来なかった。
何回も続けば、怪しくなる。
フェルミンのことだから、浮気の心配はないだろうけど。
だから、フェルミンの家に行った時、
「私の家族が何か失礼をしましたか?」
なんて、思い切って訊いてみた。
「いや、えっと」
しどろもどろになるフェルミン。
「何かあるなら、おっしゃってください」
「……実は君の姉に、く、口説かれていて……お姉さんも出席している食事会に行くのが気まずいんだ。」
「はへ?」
おかしな声が出てしまう。
気を取り直して。
「それはどういうことなんでしょうか」
「お姉さんから、手紙が届くんだよ」
「どのような?」
「恋文のような手紙で……現物を持ってこよう」
フェルミンが書斎に行き、手紙の束を持って戻ってきた。
手紙を渡され、中の便箋を見る。
『あなたのことが頭から離れない』『あなたに恋しています』という恥ずかしい文言が書かれていた。
しかも、姉の筆跡で。
血液がこびりついた髪の毛が入っている手紙もあって、ゾッとした。
「姉がこんな物を?申し訳ありません」
「君が謝ることじゃないよ」
と言って、フェルミンが私を抱き寄せた。
「僕は君一筋だ。返事なんて一回もしたことがない」
「そうなんですか」
「ああ」
「分かりました。フェルミンさんを信じます。姉にも私から言っておきましょう」
私はフェルミンに言った通り、家に帰ってすぐ姉の部屋に向かった。
「お姉様。いらっしゃいますか?」
「ええ」
ドアを開けて、部屋に入る。
「お姉様はフェルミンさんに恋文を送っているそうですね」
「送ってないわよ」
「いいえ。現物を見ました。お姉様の筆跡でしたよ」
「だったら何か?」
「フェルミンさんは私一筋です。ご迷惑になりますから、辞めていただきたいんですよ」
「なんでそんなこと言うのよ!私は彼と仲良くなりたいのに!」
「だったら、フェルミンさんの気持ちを考えたらどうですか?」
「考えてるわ」
「考えていないんですよ。相手のことを全く考えてない。だから、結婚できないんですよ!」
「うるさい!」
と言って、私を部屋から追い出した。
何も言い返せないから、私を追い出したんだろう。
それからは、姉の手紙は届かなくなったらしい。
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