上 下
3 / 3

しおりを挟む

ハビエルが来た時、ちょうどラルフは外出していた。 
とりあえず、ハビエルを客間に通す。

「今日は何故ここに?」

私が聞くと、ハビエルは神妙な面持ちで頭を下げた。

「まずは謝罪を。エミュリエルには申し訳ないことをした。それで、今日は復縁をしてもらいたくて来た」
「えっ?あなたはメリメと婚約したはずでは?」
「メリメは他の男と浮気していたんだ」
「そうですか。それで私のところに?」
「ああ。君は凄く僕のことが好きだろ?」
「私が好きなのは今の夫です」

きっぱりと言った。
私はラルフを愛しているし、今の幸せを壊す気などさらさらない。

「本当に?愛していると言えるの?」
「ええ。夫はあなたほど酷い人ではありませんからね。私はあなたとのことはもう終わったと思っています。他を当たってくださる?」

ハビエルはくっと奥歯を噛み締めた後、

「君もその夫とやらに不倫されてしまえばいいんだ!」

捨て台詞を吐き、家を出ていった。


ラルフが家に帰ってきて、ハビエルが来たことを話した。

「そうなんだ。大丈夫だった?なんか嫌なこと言われたりしなかった?」
「君も夫に不倫されればいいんだ!みたいなことは言われました」
「そんなことを……。自分が浮気されたから、そんなことを言ったんだろうね」
「そうだと思います」

ラルフは私の頭を撫でた。

「こう言ってはなんだけど、あの人と結婚しなくて良かったね」
「ええ。あなたと結婚して、私は幸せです」

心からそう思う。
ニコニコして言うと、ラルフが私を抱きしめてきた。

そして、

「エミュリエル、愛しているよ」

甘く低い声で愛を囁いた。

「私も愛しています」


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??

シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。 何とかお姉様を救わなくては! 日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする! 小説家になろうで日間総合1位を取れました~ 転載防止のためにこちらでも投稿します。

王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった

七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。 「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」 「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」 「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」 どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。 --- シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。 小説家になろうにも投稿しています。

「貴様を愛することはない!」初夜にそう言い放ったのは、十二歳になったばかりの旦那様でした。

下菊みこと
恋愛
年の差婚のお話。主人公である奥様は十八歳の姉さん女房。さらっと読める御都合主義のSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

旦那様のために一生懸命を尽くした私が邪魔者扱いですか⁉

ヘロディア
恋愛
幸せな結婚生活を送っていた主人公。しかし、ある日唐突に男の子が現れる。彼は、「パパはどこ?」と聞いてきて…

義母の秘密、ばらしてしまいます!

四季
恋愛
私の母は、私がまだ小さい頃に、病気によって亡くなってしまった。 それによって落ち込んでいた父の前に現れた一人の女性は、父を励まし、いつしか親しくなっていて。気づけば彼女は、私の義母になっていた。 けれど、彼女には、秘密があって……?

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました

ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」 国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。 なにやら証拠があるようで…? ※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*) ※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。

婚約を解消したら、何故か元婚約者の家で養われることになった

下菊みこと
恋愛
気付いたら好きな人に捕まっていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...