上 下
5 / 11

第5話

しおりを挟む
メリはあの家の近所で聞き込みをするなどして、女性のことを調べるらしい。

メリが外出して暇になったレイリンは、少し買い物に出掛けることにした。

小物入れを新しく買おうと思っていたし、新しい服も買いたいと思っていたし、とレイリンは心の中で思って外出する準備をした。

使用人に外出することを伝え、家を出た。

ちなみに、今日もエイベルは外出している。


いつも行く雑貨店はここから遠い所にあるので、汽車に乗って目的地へと向かう。

久々に汽車に乗ったなと思いつつ、外の景色を眺めた。

汽車から降りて、雑貨店へと歩く。

雑貨店は商店街の中にある。人通りも多い所だ。

ふと、前を見ると見知った人物が歩いて来るのが見えた。
エイベルだ。

レイリンは咄嗟に物陰に隠れた。

エイベルの横にはシエラがいる。
彼らはまだ付き合っていたのだ。

レイリンが約束を守っているのに、彼らは約束を破っていた。

彼らを見て湧いた感情は怒りだった。
人のことを馬鹿にしていると思い、怒りがふつふつと沸き起こる。

カーっと頭に血がのぼる体験をしたのは初めてだった。

怒りのまま、彼らを問い詰めようとしたが、この人通りの中でそれは叶わなかった。

何か。
彼らに何かぎゃふんと言わせる方法はないものか。



怒りをどうにか沈め、家に帰った。
小物入れや服を買う気にはなれなくて、そのまま帰ってしまった。


家に帰り着いたのは、昼下がりの頃だった。
メリがレイリンを出迎えてくれた。

「エイベルは?」

「まだ、お帰りになっていません」

「そう。ちょっとメリに大事な話があるの」

「承知いたしました。私もお話がありますので」

レイリンはメリと一緒に自分の部屋に向かった。

「エイベルは浮気をしているみたいなの。使用人の女よ」

「やはり、そうなのですね。エイベル様が向かった家に住む女性は、貴族の使用人をしていたそうなんです」

「毎日、毎日、エイベルはシエラとかいう女と会っていたってわけね。それで、今もシエラと一緒なのかもしれないわね」

「離婚するつもりですか?」

メリが恐る恐る質問した。
レイリンの目が据わっていて、かなり怖い。メリがレイリンのそんな姿を見るのは初めてのことだった。

「離婚なんかしないわ。浮気されたってだけで離婚なんかしない!シエラからエイベルを略奪してやる!そして、エイベルをこっぴどく振ってやるの!」

レイリンがぐっと拳を握りながら言った。

それから、レイリンはメリを振り返り、

「メリ。協力してくれるわよね?!」

あまりの迫力にメリは頷くしかなかった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

第二夫人に価値はないと言われました

hana
恋愛
男爵令嬢シーラに舞い込んだ公爵家からの縁談。 しかしそれは第二夫人になれというものだった。 シーラは縁談を受け入れるが、縁談相手のアイクは第二夫人に価値はないと言い放ち……

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった

七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。 「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」 「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」 「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」 どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。 --- シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。

華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。 王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。 王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。

身代わりで鬼姑と鬼小姑の元に嫁ぎましたが幸せなので二度と帰りません!

ユウ
恋愛
嫁苛めが酷いと言われる名家に姉の身代わりで嫁がされたグレーテル。 器量も悪く、容量も悪く愛嬌と元気だけが取り柄で家族からも疎まれ出来損ないのレッテルを貼られていた。 嫁いだ後は縁を切ると言われてしまい、名家であるが厳し事で有名であるシャトワール伯爵家に嫁ぐ事に。 噂では跡継ぎの長男の婚約者を苛め倒して精神が病むまで追い込んだとか。 姉は気に入らなければ奴隷のようにこき使うと酷い噂だったのだが。 「よく来てくれたわねグレーテルさん!」 「待っていましたよ」 噂とは正反対で、優しい二人だった。 家族からも無視され名前を呼ばれることもなかったグレーテルは二人に歓迎され、幸福を噛みしめる。 一方、姉のアルミナはグレーテルの元婚約者と結婚するも姑関係が上手く行かず問題を起こしてしまう。 実家は破産寸前で、お金にも困り果てる。 幸せになるはずの姉は不幸になり、皮肉にも家を追い出された妹は幸福になって行く。 逆恨みをした元家族はグレーテルを家に戻そうとするも…。

処理中です...