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第2章 【仲間探し編(アカリ)】

第2章40話 [モグラ使い]

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「マリー、ドリルの形した剣は?」
「……」
「ねぇってば、なんでモグラ使いにしたの?ねぇねぇ」

 エリーが俺の首に巻かれているモグ郎の形をしたマフラーを引っ張ってくる。
 おかしい…こんなはずでは…モグラ使い?モグラ使いって何?蛇使いなら知ってるけど…蛇使い?
 俺の頭に落雷が落ちたような衝撃が襲う。

「まっっっちがえたっ!!」

 砂埃で見えなくて間違えてガブゴブに勝った時に貰った、蛇使いの装備一式と合成したのか!!

「面白い…!モグラ使いか…聞いたことがないジョブだ。もしや、お嬢ちゃんの第3のジョブか?」
「…そんなところだ」

 諦めるしかない。もうこの装備で何とかするしかないんだ。
 ステータスを確認しよう。

 マリー Lv 8 〔43223G〕 Ranking--  
 メインジョブ/召喚士 Lv3 サブジョブ/格闘家 Lv3 覚醒ジョブ/合成士Lv2

  HP/600 MP/400 STR/200 VIT/200 DEX/200 AGI/400 INT/200 LUK/200  

 《武器》
 モグラードの笛  HP+300 VIT+200『吹くと低確率でモグラードを呼ぶことができる』 〈R6〉

  《 装備》
  頭/ モグラ使いの帽子 MP+400 INT+100 〈R6〉
  胴体/モグラ使いの晒し布 HP+300 DEX+200 〈R6〉
  腕/モグラ使いの赤布 STR+200 LUK+200 〈R6〉
 足/モグラ使いの靴 AGI+400 〈R6〉

 装備一式奥義『モグラードを呼ぶ演奏』
【笛を吹くと低確率でモグラードが何処からともなく大量に現れる。使用後、5分間再使用不可】

 装備一式常時スキル『モグラを操る者』
【笛で呼びだしたモグラードに命令すると従うようになる】


 自分のステータスが低い。自分は戦わずにモグラードで戦うだけの装備のようだ。

「モグラ使いってジョブも製作者の遊びで作られたジョブだと思うよ」

 出たな、製作者の遊びで作られたジョブ。だとしたら戦神童子のパターンで強いんじゃないのか?

「まず、する事は1つ!モグラードを呼ぶぞ!奥義!『モグラードを呼ぶ演奏!』」

 ピュロロロロ~ロ~ロ~♪
 笛を吹くと情けない音が鳴る。本当にこんな音色で来るのだろうか?
 すると頭の中で『ピポーン』と音が鳴る。

「成功した!」

 突然、大きく地面が揺れる。

「うわっ!わわわ…!」
「なんだ!この揺れは?!」

 ベンケイと俺は揺れでフラついたが、数秒で揺れは収まり、俺の目の前にヒョッコリとモグラードが地面から頭を出して俺と目が合う。

「モグモグ~?」
「モグラード?1匹だけ?」
「フッ…何が出るかと思えば、雑魚モグラ1匹か!くだらん!ガーハーハッハッハッハ!!」

 ベンケイが馬鹿にして大笑いしていると、地面から大量のモグラードが飛び出す。

「なに?!!」

 モグラードの数はパッと見て100匹くらい出てきたんじゃないだろうか。
 これだけ居るとモグモグ、モグモグと鳴き声が凄まじい。

「バ、バカな!何だ!?この数のモグラードは!!」

 さすがのベンケイも態度が一変して焦り始める。
 俺は逆に大量にいるモグラードを見て落ち着いた。

「どうした、何ビビってんだよ?雑魚モグラじゃなかったのか?」
「くそ!この数のモグラードを呼び出すスキルとは…!!」

 モグラードの能力を知っているからこそベンケイは焦っているのだろう。

「行け!モグラード!アビリティ『突撃!』」
「モグモグ~!」

 1匹のモグラードがドリルで突っ込む。

「させん!」

 突っ込んで来たモグラードを背中に背負っていた大盾で防御する。
 モグラードは盾に突き刺さったまま動かなくなる。

「クソ!俺のVITが!」

 突撃のアビリティの効果は『相手の装備に突き刺さりVITを50下げる』だ。

「おいおい、まだモグラードは沢山居るんだ、1匹だけと遊ばないでくれよ!」
「チッ!」
「行けー!!モグラード達!最初のモグラードに続け!!」
「なめるな!!『大盾バニッシュ!!』」

 ベンケイが構えていた大盾が光り、突撃して行ったモグラードが数匹パリーンと砕ける。

「なに?!」
「マリー!大盾バニッシュはカウンター攻撃だよ!無暗に攻撃させたらモグラードが無駄死にだよ!」
「あんなスキルあんのかよ!」
「形成逆転だ!雑魚モグラなど一掃してやる!『ロックバーン!』」

 また大岩攻撃か!あんなデカい岩が落ちてきたら、モグラードが死んじまう!
 待てよ…アイツはあの大岩を作っている間は無防備じゃないか。

「モグラード達!10匹でベンケイに『突撃』だ!!」
「モグモグー!!」
「馬鹿め!ロックバーン生成中もスキルは使える!『大盾バニッシュ!』」
「だと思ったよ!モグラード!『自爆!』」

 盾に触れる寸前爆発する。

「がああああ!!」

 盾で防御したようでベンケイのHPこそ全然減ってはいないが、スキル『自爆』の【自爆し相手にダメージを与えてVITを50下げる】の効果の影響か、大盾に大きなヒビが入っている。たぶんVITが下がっている表現なのだろう。

「よくも俺の盾を…!生成完了!ロックバーン!!」
「ナイト!頼む!モグラード達は全員地中深くに潜れ!」
「ワウ!」
「モグモグ!」

 ナイトの鎧で避け、また大岩の狙いが外れる。大岩が地面に落ちた瞬間、そして砂埃が舞っている間に俺は笛を吹く。

「『モグラードを呼ぶ演奏…』」

 笛を吹きながら胸騒ぎがした。ベンケイの行動パターンを思い出して考える。防御力を上げながら大岩で攻撃して、攻撃しようとするとカウンターで攻撃し返してくる。
 本当にそうなのか?こんなやり方はお互いにジリ貧になるだけなんじゃないのか?

「もしかして…」

    ベンケイは大技しか使ってこないと油断させるのが本当の狙い?俺の直感が言っている。今からベンケイの本命の来る!

「ナイト!俺の前に鎧の盾を作れ!」
「ワウ!」
「 『ロックシュート!!』」

 ドゴッとナイトの作った鎧の盾に当たる。
 砂埃が晴れていき、お互いに姿を確認する。

「やっぱりな。大技で油断させて、速度がある攻撃で不意打ちでダメージを与えるのが狙いだったのか」
「よく分かったな。子どもだと思って侮っていた」
「へへ、嘘は良くないぜ。もう少しで騙されて負けるところだった。行け!モグラード後半組!全員で『突撃!』だ」
「「「「「「「「モグモグー!」」」」」」」」

 50匹ほどのモグラードが突っ込んで行く。

「クソ!まだこんなに生きていたのか!『大盾バニッシュ!!」
  
 ベンケイは大盾を構えるが。後ろに回り込んだり、全方位にモグラードが囲んでいるので大盾は意味がない。

「スキル『自爆!』」
「ス、スキル!『大楯要塞!』があああああ!!!」

 大盾の目の前で爆発する。全方位を囲んでいたモグラードも誘爆して大きな爆発が起きている。

「やったぞ!!耐えた!耐えたぞ!!」

 爆発が収まるとボロボロになった大盾を持ったベンケイが立っていた。何かのスキルを使っていたから耐えれたようだ。

「すげぇな…あの爆発で生きてんのか」
「俺のAGIは最強だ!!モグラードは全て爆発で消えた!俺の勝ちだ!『ロックシュー…』」
「モグラード!『突撃』だ!」

 地面からモグラードが魚雷のようにベンケイに突撃し、装備に無数に突き刺さって行く。

「ガア…!アアアアア!!なぜだ!モグラードは全部爆発で消えたはずだ!!」
「ああ、後半組はな」
「こ、後半組?」
「さっき爆発で消えたのは2回目に呼んだモグラード達だ!気づかなかっただろ?アンタの馬鹿みたいにデカイ岩の攻撃で地面が揺れ砂埃が舞って周りも見えなかったからな!」
「な…!!」

 体中にモグラードが突き刺さっているベンケイの顔が青ざめていく。どうなるのか、自分の未来が見えたようだ。

「ずっと自爆させてゴメンな、モグラード。だけどこれで最後だから」
「モグモグ~」

 1匹のモグラードが気にするなっと言っているように俺を見て鳴く。

「スキル発動!」
「やめろーーーー!!!!!!」
「『自爆』」
「グアアアアアアアアアアアアアアーーーーーー!!!!!

 モグラード達が何度も爆発していく、モグラード達の死は絶対に無駄にはしない。
 爆発が終わり煙が晴れていくと、ベンケイが立っていた。あんなに硬そうでゴツかった装備がボロボロになっている。
 70~80匹程のモグラードの『突撃』プラス『自爆』で100マイナスされているので、ベンケイのAGIはゼロになったはずだ。

「う、うう…」
「ん?どうしたんだアイツ」

 ベンケイは目を回してフラフラして様子がおかしい。

「マリー!『スタン』の状態異常だよ!爆発をモロに受けたから『スタン』になったんだよ!今がチャンスだよ!」
「スタン?」
「気絶してるってこと!早くしないと起きちゃうよ!」
「何かは分かんないがラッキーだぜ!ナイト!攻撃だ!」
「ワウ!」

 ナイトの鎧が合体していき剣になる。先程は跳ね返されたが今回は…。

「いけーー!!ナイト!!」
「ワウ!」

 剣はベンケイに跳ね返される事もなく、心臓に突き刺さる。

「お、俺は…試練を乗り越えて…必ずお前に勝ってみせる…」

 ベンケイのHPはゼロになり、ガラスのようにパリーンと砕け散る。

「ああ、また戦おうぜ」

『プレイヤー『ベンケイ』の43000Gを獲得しました』

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