VRMMO RPGで記憶を取り戻す為に覚醒したジョブ【合成士】で冒険する

第1章【覚醒編】

第1章0話 ［記憶］

《3月7日》

　世界初のワールドダイブ型VRMMORPG【Equip Adventure World】通称【EAW】が発売されて早2年が経った。
　ワールドダイブ型VRMMO RPGとは、詳しくは知らないが頭に『ヘッドギア』って機械を被って人の脳波を何かしてゲームの世界に入るという革命的なゲームである。
　内容はRPGなどでよくあるジョブと【EAW】にしかない数百種類のジョブを選び、そのジョブを育てていくと自分の性格や戦闘スタイル【EAW】のAIが読み取り自分しかないスキルを覚えながら冒険をしてラスボスの魔王を倒すというシンプルなゲームである。
　その【EAW】の続編が2日後に届く日の日曜の晴れた日の午後の自宅のリビング。

「ユーゴ！お願い次の【EAW】の新作、私のと交換してさせて！」

　銀髪と陶器ような白肌。日本人離れした可愛い少女が両手を合わせて頼んでくる。
　頼んできているハーフの可愛いらしい少女は兄の子どもで今年10歳になる俺の姪のマリアだ。兄の仕事の都合で1週間だけ日本に姪と2人で帰ってきている。

「絶対嫌だ！」

　俺はマリアの頼みを一蹴する。
　マリアは見た目は天使のように可愛いが、実際は甘えに甘やかされたワガママの擬人化のようなものだ。

「ケチー！」

　マリアは俺に歯をいーっとしてくる。その仕草でさえ可愛いが俺にそんな可愛い子アピールは効かない。

「ケチじゃない！貸す意味がないしな」
「じゃあパパが最近ママに泣かされた時の話してあげるから～！」

　もうオチを聞いてしまってるので聞く気にはならないし、泣かされた事をバラされた兄が可哀想だ。

「ダメなものはダメだ。マリアも自分のがあるだからもう良いだろ？」
「ユーゴのが良いのー！」

　マリアは可愛い顔をグイッと近ずけてくる。

「あのな、前作の【EAW】のデータは俺の汗と涙とかキシリトールとか詰まってんだ」
「そうやってくだらないこと言ってはぐらかさないで！」
「……」

　マリアは俺と歳が5つも下なのに俺よりもゲームが上手い。もしも…もしも俺よりも操作が上手かったら悔しいったらこの上ない。
　そのもしもを見たくないので俺は貸したくなかった。

「いくら頼んでも貸しません！」
「分かった！そんなに言うなら2日後に届いた瞬間に入れ替えて持って帰ってやる！」
「おい！それ本当にやめろよ！海外まで取りに行くの俺ヤダからな！」
「パパに相談してこよっと！」
「おい、ちょと待ってて！」


　これが俺が車に轢かれ地面に落ちる間に見た走馬灯だった。
　これが世間で言う走馬灯なのだと感心した直ぐに地面に落ち『日之内遊吾』という人間は死んだ。