9 / 9
1
もし、目の前に決められた選択肢が出てきても私はきっと自分の選択肢を見つけるでしょう
しおりを挟む「えええええええええええ!!??」
会場内に絶叫が響き渡る。国王や宰相だけでなく、エリザマス公爵令嬢、ローヒインさんも驚いて絶叫していました。
何を隠そう私が1番驚いてる。あっれぇ!?私!?私なの!?何かの勘違いじゃないんですか!?
「チアキ様、どなたかと間違えていませんか?もしかして視力が低下しているのでしょうか?今すぐ眼鏡をお持ちしますが」
「うん。間違いないよ。連れて帰るのはリタ。アンタだから」
私が生贄!?じゃなくて気に入った人!?
私なんて抜群のスタイルも国一番の美しい顔も、光の魔法も権力も何にも持ってないのですが……
どうやら信じられないのは私だけではないようでした。
「何で……!!何でそんな冴えない女なの!?しかもただの下っ端のモブじゃない!!名前すら与えられないモブじゃない!!」
「そうよ!!そんな大した美貌もスタイルも持たない貧相な女を選ぶなんて!!ありえないありえない!!」
すっごく同意ですが、こうも大勢の前ではっきり言われるとモブという存在である私でも傷つきますよ……?
「おかしいわよ……、せっかく転生して上手く行ってたのに。ヒロインなんだから皆のことを好きになるはずなのに!!チアキ様だって愛してくれるはずなのに!!チアキ様も王子もみんな、みんな私の物になるはずなのに!!」
「ありえないわ……、転生悪役令嬢なんだから最後はハッピーエンドになるはずなのに、何で何でよ……!!何でチアキ様が手に入らないの!?ありえないわ!!チアキ様は婚約破棄された私を連れ去ってくれるはずなのに!!」
うん?転生やらヒロインやら悪役令嬢やら一体どういうことでしょう?
眼が血走っているように見えますが大丈夫でしょうか?興奮しきっている2人は異様で国王様や王子までもかなり引いた目で彼女たちを見つめています。
「馬鹿じゃない?予想通りの未来なんて存在するワケないのに、そんな曖昧なシナリオに縛られてまるで道化だね」
ローヒインさんもエリザマス令嬢もまるでヒロインや転生悪役令嬢だから確立された未来が待ってる、かのような発言ばかりでした。よくよく冷静に考えれば分かることです。確定された未来なんてないことを。だからこそ突然予想だにしない不幸があったり、眼を疑うような奇跡が起きるというのに。
でもその現実が彼女たちには見えないようです。きっと彼女たちはこれからもその役割に縛られたままなのでしょう。
「じゃあね。もう会うことはないだろうけど。つかの間の生を御伽話の中で夢を見ながら足掻くといいよ」
今までで1番冷え切った声で目もくれずにそう言い放ってチアキ様は背を向けて歩き出した。
……勿論、私を抱いたままで。
そんな彼に国王様が慌てて叫びました。
「レジェクト殿!!元帥の件は……!!」
「ああ、大丈夫ですよ。シキ元帥も暇な人間じゃないのでこんな価値の無い勝手に滅びるような国を攻めようと考えるほど馬鹿な人間じゃないですよ」
その言葉に今度は国王陛下と宰相が膝から崩れ落ちた。
「あ、あの……チアキ様……降ろしてもらえませんか?」
会場から出てからもチアキ様はお姫様抱っこしたままで下す気配がない。お姫様抱っこされるのは初めてで恐ろしくて恐ろしくて胸がドキドキです。しかもチアキ様の歩くペースが速いので冷や冷やします。
「何?アンタを落っことすとでも思ってるワケ?」
「いや!!そういうわけではなくてですね!!初めてなのでどうしたらいいか分からなくて」
「じゃあ首にしがみついてれば?」
「……こ、こうですか?」
「……」
素直にチアキ様の首に腕を回せば、急にピタッと歩みを止めた。
「チアキ様?」
「はぁ~~~~、さっきの発言といい、今のといい無自覚な分質が悪いね」
無自覚というのは何のことでしょう?私はただ落とされる恐怖を紛らわす為にしがみついてるだけなのですが。
「こういうこと他の人にしないでよね」
「……チアキ様だけですよ?」
そもそも私みたいな侍女をお姫様抱っこするような人はチアキ様だけでしょうし。
それを言った後、再び溜息をつかれました。何故ですか。
「というか私がチアキ様と一緒に国に行くのは決定なんですね」
「今更何言ってるワケ?もしかして怖くなった?」
昨日のお茶会を最後にもう会えないと思っていた。それが今、こうしてチアキ様の傍にいる。今まで侍女の顔で引き締まっていた表情が思わず緩んでしまった。
「嬉しいに決まってますよ」
そう心からの言葉を笑顔で伝えれば、急にチアキ様の顔が近づいてきて温かくて柔らかいものが唇に当たった。
「怖がって逃げようとしたって必ず捕まえてあげるから」
チアキ様がとても良い笑顔で言い放ちました。ですが、その笑顔とは裏腹の言葉に背筋が冷えてしまいました。どうやら私は目の前の人からは逃れられないらしいです。
……ただぼそっと呟いた最悪監禁でもするか、はどうかやめてください。切実に。
0
お気に入りに追加
33
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
完 あの、なんのことでしょうか。
水鳥楓椛
恋愛
私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。
よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。
それなのに………、
「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」
王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。
「あの………、なんのことでしょうか?」
あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。
「私、彼と婚約していたの?」
私の疑問に、従者は首を横に振った。
(うぅー、胃がいたい)
前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。
(だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はじめまして。
同じく、主人公さんとチアキ様の会話が夫婦漫才みたいで面白いです。
チアキ様は主人公さんをめっちゃ気に入ってるんですね。彼女は全く気付いてなさそうだけどww
二人のチグハグなやり取りを楽しみにしています。
リオとレジェクトの会話のテンポがいいですね。
これから、どう話が進んでいくのか楽しみです。