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二章 水の都
隠しトンネル
しおりを挟む「うわぁ……。こんなの普通なら見つけられるわけないわね」
何もなかった岩壁から突然トンネルが現れた。
というか巧妙に隠されていたといった方がいいかしらね。
ともかくこんなところにトンネルがあるなんてわかるわけないわ。
実際魔法を使われていたわけでもなかったし、ルナちゃんが気づいてくれなかったら見つかってないわ。
「いやぁ、これは驚いたっすね。まさか魔法も使わずにこんな仕掛けで隠していたなんて。違和感に気づいてよかったっすね」
「それにしても良く違和感なんて感じたわね」
「リリィは忘れてるかもしれないっすけど、自分これでもシーフっすからね。観察力には自信あるんすよ」
「うん。確かに忘れてたわ」
そう言えばカーナはシーフだったわね。
街中じゃあまりそういう機会はなかったし、あっても私とは別行動しているときね。
「やっぱり。まったくひどいっすよ」
「仕方ないじゃない。それで? このトンネルはどうするの?」
「そうっすね。とりあえずこの入り口に目印をつけて……ここら辺にこれを……これで大丈夫っす」
「何したの?」
「それは帰ってから話すっすよ。こんな敵の本陣みたいなところで何を聞かれてるかわからないっすからね」
「もしそうならカーナがしていたことも見られてたりするんじゃないの」
「…………たぶん大丈夫っすよ」
なんか少し間があったわね。本当に大丈夫かしら。
「と、とにかく、この先に何があるかだけ確認するっすよ。正直こんなところに闘技場なんてものがあるとは思えないっすけど」
「それは行ってみないとわからないわね。でも、たまにはこういうのも悪くないわ。冒険者っぽいじゃない」
「リリィ、こういう道の探索とかは好きっすよねぇ。これも結構危険な部類なんすけど、いつもは危ないことしたくないって言うのに」
「こ、これは良いのよ。探索するだけだし、戦うわけじゃないんだから」
「ま、いいっすけどね。それじゃ行くっすよ~」
カーナがいつの間にか用意した明かりを持って先頭を歩く。
トンネルの先は暗くてよく見えない。自分たちの足音が反響している。
なんだかドキドキするわね。この先には一体何があるのかしら。
~~一時間後~~
「「「……」」」
なんだか見覚えのある所に出たわ。
ついに道の先に光が見えたと思って目指した先は――最初の入り口だった。
「いや、待っておかしくない? ちゃんとマッピングしてたのよね?」
「当たり前じゃないっすか。自分の仕事はしっかりとこなしてたっすよ」
「なら! どうして! 振り出しに戻ってるのよ!!」
「ど、どうしてっすかねぇ……」
確かに何回か道を曲がったし、別れ道もあったわ。
だからって入り口に戻るなんてことある!? どんな構造してるのよ!
「と、とりあえずもう一回行ってみるっすよ」
~~二時間後~~
「……ねぇ」
「自分のせいじゃないっすよ! だから自分に起こるのは違うと思うっす!」
「そうだけど! そうかもしれないけど!」
また入り口に戻ってきました。
さっきとは違う道を通ってきたのに何をどうしたら戻ってくるのよ。
ロゼちゃんなんて歩き疲れて寝てるわ。ブラウの上で。私もそうしたいのに。
「も、もっかい行ってみるっす。次はちゃんと、道も調べて行くっすから」
~~二時間後~~
「…………それで? 言い訳くらい聞いてあげるわよ」
「ハハハ……。なんでっすかねぇ……」
三回目よ。
三度目の正直とかそういう言葉を聞いたことあるけど、全然そうならないじゃない。
何なのよ、もう!
「…………」
「どうしたのよ。そんなに地図とにらめっこしても道は浮かんでこないわよ」
「ちょっと気になることがあるっす。今日はもう遅いし、一旦帰らないっすか?」
「まあそうね。こんな状態じゃ進展しないだろうし。少し頭を冷やしてからまた来ましょう」
ということで、街に戻ることにしました。
しかしこのイライラ、どこで発散したいわ。
街に戻りカーナが部屋に籠ったので、私はブラウとルナを連れ、人気のない場所で思い切り歌うことにした。
――すっきりしたわ!!
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