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二章 水の都
道のり
しおりを挟む無事に樹海を抜けることができた私たちは、ブラウに乗って街道を走っていた。
(自然破壊については見逃してください。必要措置です。)
時々すれ違う人たちには驚かれたりするが、概ね順調に進んでいた。
「もうすぐで街に着くっすよ。その街で何日か休んでから、アタランティアに向かうっす」
「そうね。結局一週間くらい樹海で無駄にしてしまったわ」
「そんなことないっすよ。普通のルートだともっと時間かかるっすからね。こっちの方がよかったかもしれないっすよ」
「それはないわ。あんなところに何日もいるなんて、もうこりごり。今度はちゃんとした道使うからね!」
周りには木しかなく、虫が飛び交い、日の光もあたらない真っ暗な森でよく一週間も迷っていられたわ。
私、頑張った!
「そんなこと言って、リリィだってなんだかんだ楽しかったと思ってるっすよね~」
「楽しくなんてないわよ! 一週間お風呂にも入ってないんだからね!」
「一週間くらい風呂に入らなくても全然平気っすよ。水浴びくらいはしたじゃないっすか。それに、ダンジョンだったらもっと長い時間入らないことだってあるんすから。慣れっすよ、慣れ」
「そんなものに慣れたくなんてないわ。私は別に、ダンジョン攻略したいとか全く思ってないからいいのよ。カーナも女の子なんだからもう少し気にしなさい」
そう言うと、カーナはいつもの笑顔を消して悲し気な顔を浮かべた。
「そんなもの、昔どっかに置いてきたっすよ」
そんな顔で、そんなこと言われると対応に困るわね。
いつもの感じはどうしたのかしら。過去に何かあったのだろうか。
カーナについてはまだ知らないことの方が多いみたい。
ただ、そんな顔で傍に居られても困るので、いつもの調子で返す。
「なに言ってるのよ。カーナにそんな顔に合わないわよ。いつもみたいに適当に笑ってなさい。面白くもなんともないわ」
「なんかだんだん自分の扱い酷くなってないっすかね。パーティーにいたころはもっと素直でかわいいお嬢さんだったのに。大きくなったっすね」
「どの立場で言ってるのよ。それに目線を下げてどこ見てるのかしら? 私に喧嘩を売っているの?」
「やだなぁ。喧嘩なんてそんな。ただ成長したんだなぁ。って思っただけっすから、気にしなくていいっすよ」
「だから目線下げるんじゃないわよ。やっぱり喧嘩売っているのね。そうなのね。あんたはいつもいつも私をからかって。だいたいあんたは――」
「リリィだって――」
ブラウの上でいつもの言い争い。
平和だわ。止める人はいないけど。
「どこからか可愛いと聞こえたわ! 可愛いといえば、そう! つまりはあたしのことよ!」
「……誰も呼んでないっすよ。すごく自然に変な入り方してきたっすね」
「可愛いって言葉はあたしのためにあるのよ。だからそれはあたしを呼んだと同義。お分かり?」
「いや、全然わからないっす。わかりたくもないっすね」
「なんですって!? いいわ。そこまで言うのなら教えてあげるわ。あたしが可愛いという本質を。あんたの心に刻み込んであげるわ! 覚悟しなさい!」
「断固拒否するっす!」
今度はロゼちゃんがカーナに迫っている。
というかロゼちゃんの可愛さを心に刻み込むってどうやるんだろう。面白そうだから止めずに眺めていよう。
カーナが助けてほしそうな目で私を見るが、無視。そんなもの知らない。
それより、騒がしくなったわね。
ルナと二人で始めた旅なのに、いつの間にか三人も増えているわ。
こういうのも悪くないかな。
「わん!」
「ん? ブラウ、どうしたの?」
「わん!」
前って……ああ、そういことね。
「二人とも、そろそろ到着よ」
声をかけると、二人そろって前方に目を向ける。
少し先には大きな壁が立っている。街を囲む外壁だ。
その門の前には多くの人が並んでいた。検閲待ちかな。
王国から水の都に向かう前の最後の街だ。人が集まるのは当然か。
近くまで行ったらブラウから降りよう。目立つし。というかブラウがいる時点で目立つわね。
あと女の子三人だから変なのに絡まれないように気をつけなきゃ。
「心配しなくても大丈夫っすよ。変なのが近寄ってきても自分らなら何も問題ないっす。それよりやり返してやりすぎないように気を付けたほうがいいっすね」
「何よそれ。カーナだけでしょ。私は別に何も」
「リリィじゃなくて、従魔たちっすよ。ちゃんと加減させるんすよ~」
大丈夫に決まってるじゃない。この子たちがそんなことするわけ……。
少し心配になってきました。
ま、まあなるようになるわね。何かあったらその時考えましょう。
「リリィ……そう言うのをフラグって言うんすよ。ちゃんと教えたじゃないっすか」
「人の心を勝手に読むなー!!」
こうしてとうとう街までたどり着いたのでした。
……早くお風呂に入りたいわ。
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