15 / 72
一章 旅立ち
話し合い
しおりを挟む私たちはギルドで聞いた情報を共有すべく、スペードさんの部屋に集まっていた。
部屋には護衛の冒険者、スペードさん、商隊の商人さん数名とスペードさんの知り合いで他の商隊を率いているクローブさん。
街で偶然出会ったらしい。彼にも関係している話なので同行していただいた。
「ジャイアントホーンの群れか………。確かに妙だな。こんなところに出てくるような魔物ではない。それに人を襲ったなんてのも聞いたことないぞ」
「そうですね。それ以外の魔物も増えているせいで、街道を進むのは危険。辺境に向かえないのは困りましたね」
「護衛の冒険者を増やすのはどうだ?護衛が増えれば危険も減るだろう」
「いえ、それをするにも予算が心もとないですね。それ以前に、雇える冒険者もいない状況でしょう」
「つまるところ、魔物をどうにかしないと先には進めないってわけだな」
話し合いは進んでいく。
ジルさんとスペードさんを中心に、クローブさんや他の商人さんたちが意見を出し合っている。
『紅』の子たちもさすがに話に入れないみたいだ。グリッドなんかは最初に「俺たちで討伐すればいい!」とか言っていたけど、ジルさんに却下されていた。
まだ魔物の種類も完全に把握できていないのに、討伐に向かうのは自殺行為だ。
グリッド君はまだまだ未熟ということがわかった。これからだぞ少年!
ん?嫌いなんじゃないかって?そんなことはありません。
絡まれるのが面倒なだけです。無理して強がってるのなんてかわいらしいじゃないですか。と、お姉さんぶってみる。
そんなことは今はいいのです。まずは魔物についてどうするかですよ。
「そもそも、なんでこんなに魔物が増えたんですかね?」
「どういうことだ、嬢ちゃん?」
クローブさんが聞いてくる。
「皆さんもご存じの通り、ジャイアントホーンはこんなところに出るような魔物じゃない。もっと山奥に住んでいるはずです。
それにジャイアントホーンがいるからといって他の魔物が増える理由にはなりません」
「そうだな。近いところだと辺境の山か。山からジャイアントホーンに追われたと言っても、ジャイアントホーンはそんなに強い魔物ではないな」
「そうです。それなのにここにいるということは何か理由があると思いませんか?」
「……確かに。だが、その理由とやらはわかるのか?」
問題はそこなのだ。
理由が分かれば対処も簡単なのだが、その理由となる情報はない。
「あくまでこれは私の推測でしかないのですが、思い当たるとしたら三つです。
一つ目は、山に強力な魔物が住み着いたということ。これが一番可能性としては高いです。それなら魔物の大移動も考えられます。
二つ目は、この街の近くに魔物をおびき寄せる何かがあるということ。正直これはないとは思いますが……候補の一つとして考えてください。
三つ目は、辺境で何かが起こったのではないかということ。何が起こったかはわかりませんが、辺境から魔物が逃げてくるような事態になっているかもしれないと思ってください」
どれも確証はない。実際に何が起こっているかなんて当事者しかわからないのだから。
だが、参考程度に考えてもらえればいい。
商人さんは、魔物についての対策はするが、魔物の行動についてまで考えることはないのだ。
「なんだよ。それっぽいこと言ってるけど、なんにもわからねーじゃん」
グリッドめ。いちいち絡んでくるんじゃない。
そんなことは言ってる私でもわかってるわ……。
「しかし、今のこの状況の中辺境に向かうのは避けるべきですね。それが分かっただけでもいいと思います。無茶を通して進むという選択肢はなくなりました」
「そうだな。ここは解決策が見つかるまで待つべきだろう。いずれ領主様も動き出すと思う」
そこまで待つのは長すぎではないだろうか。
領主が動き出すのにはまだ時間がかかると思う。
「とはいえ、ただ待つのは良くないですね。ジルさん。街にいる間護衛はいいので、この街の冒険者の方々に協力してあげていただけませんか?」
「それはもちろん構わない。俺たちも冒険者だからな。魔物についての問題を放置しておくことはできない」
「では、よろしくお願いします。何か進展があれば教えてください。こちらでもできることがあれば協力します」
「ありがたい。ぜひ頼るとしよう。
――ということだ。明日は俺たちも魔物の調査をする。全員準備はしっかりな」
そういって、今回の話し合いは終了し解散となった。
急遽明日は魔物の調査をすることになった。
何事もなければいいのだが。こういうときにカーナがいれば楽になるのに。
……まぁいないのでどうしようもないのだが。
とにかく、明日に備えて今日は休むことにする。当然ルナちゃんをモフモフしながらですが!
「ねぇねぇ、ミミ。魔物を操っている人がいるとかだったら怖くない?」
「えー、こわーい。でもでも、キキ。そんな人がいたらすごいよね。魔物たくさん操り放題ってことでしょ。すごいすごい!」
後ろでなんか不思議な会話が。双子ちゃんたちはいつでも仲良しらしい。
それは気にせず、私は自分の部屋に戻った。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~
笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。
鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。
自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。
傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。
炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜
秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』
◆◆◆
*『お姉様って、本当に醜いわ』
幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。
◆◆◆
侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。
こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。
そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。
それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる