15 / 73
元パーティメンバーたち
しおりを挟む「――やあ、アリス。しばらく見ない内に、随分と雰囲気が変わったね」
街へと入る門の列に並んでいると、後ろから聞き覚えのある声がかかる。
かつて、私が所属していたエドワードのパーティー四名が後ろに並んでいた。
数ヶ月彼らと共に行動していたとはいえ、好意的なのはエドワードだけだった。
重装備で大きな盾を持った長身の男、クロス。
妖艶で掴みどころのないスタイルのいい美女弓士、シェリー。
直情的で高慢な攻撃魔法使いの美少女、ノンノ。
エドワード率いる金ランクパーティー、「光輝なる空」。
ニコニコ顔で話しかけてくるエドワードを除いて、ノンノとクロスは私を睨んできている。
シェリーは正直、何を考えているのかわからない。時々よくわからない話をする時もあったし。
まあ、確実にわかるのは一つ。私は、彼らに好かれてなどいない。むしろノンノは、なぜか目の敵にしているような、そんな気がする。
「久しぶりね、エド。ちょっとした心境の変化、ってところかしら。そっちの調子も良さそうね。もうすぐ虹ランクに昇格するみたいだし」
「まだ決まったわけじゃないけどね。でもまあ、近いうちに答えは出ると思うよ」
そう自信たっぷりの表情でエドワードは言う。
驕っているというわけではない。自分の力量を弁えたうえで彼は言っているんだ。
まあ、彼の実力に疑う余地はない。今の私なら、彼の力がどれほどのものか正確に判断できるようになった。
……彼はすごい。
そうして二人で話していると、割り込んでくる甲高い声。
「――ちょっと! 何許可なく馴れ馴れしくしてるのよッ! あんたなんか、お呼びじゃないんだから!!」
「……ノンノ。相変わらずね」
「何よ、その目。エドのお情けでパーティーに入れてもらった役立たずが、随分と生意気になったみたいね。それと……懲りずに探索者を続けているみたいだけど、実力が無いんだから、とっとと田舎に帰りなさいよ」
「生憎だけど、まだ帰るつもりはないわ。少しやることが出来てしまったし」
「はぁ!? 何があったか知らないけど、あんた、少し調子に乗りすぎじゃない? ――ぶっ潰すわよ」
いきなり不機嫌になったノンノが、杖を構え魔法の準備を始めた。
エドが止めようと声をかけるが、どうやら聞こえていないようだ。
他の二人は一切止める気が無い。
クロスはずっと私を睨んでいるし、シェリーは何やら空を見上げている。
バラバラなのに、よくパーティーとして成り立っていると思うわ。
私が何もせず黙って立っているのを見て、ノンノは憎らし気に舌打ちをした。
「雑魚のくせにっ……馬鹿にするんじゃないわよ――――!」
「まったく。もう少し冷静さというものを持つべきじゃないかな。そんなお転婆では、彼氏なんて出来やしないよ」
やれやれ、と肩を竦めたミルフィが私の頭の上で両手を合わせた。
ポンッ! という肉球がぶつかり合った音が鳴ると、ノンノが放った巨大な火球が音もなく消え去った。
ミルフィって何でもできるのね。放たれた魔法も消せるなんて。
ノンノが呆然とし、混乱していた。
「え、なんで……私の魔法が、消えた……?」
「こんな往来で使うような魔法ではないよ。エドワード君、だったかな? 君のパーティーメンバーは随分と非常識みたいだ。ちゃんと教育はした方がいいと思うな」
「あ、ああ……すまない。迷惑をかけた」
「ふむ。素直な人間は嫌いじゃないよ。それと――そこの魔法使いの女の子。名前は……忘れてしまったよ。好みじゃないからね。その高慢な態度は非常によくない。女の子とは、お淑やかで純情で可愛らしくないと。君のはそれが見られない。そんな君が、ボクの御主人を害そうだなんて千年早いよ。生まれる前から出直しておいで。
――行こうか、アリス。そろそろボクらの番だからね」
わぁ……辛辣。
言いたいことだけ言って、ミルフィは私を促した。
ちらりと後ろに視線を向けると、顔を真っ赤にしたノンノが憎悪の眼差しで私を睨んでいた。
正直、あそこまで言わなくてもよかったのではないかと。とばっちりが私に来そうな予感……。
「あの程度のレベルでは、アリスをどうこうできるはずもないさ。君は堂々としていればいい。なんてったって、このボクが認めた魔法少女なんだから」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた
八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』
俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。
レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。
「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」
レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。
それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。
「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」
狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。
その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった――
別サイトでも投稿しております。
子持ち専業主婦のアラサー腐女子が異世界でチートイケメン貴族になって元の世界に戻るために青春を謳歌する話
きよひ
ファンタジー
主人公、シン・デルフィニウムは帝国の有力な公爵家の長男で、眉目秀麗な魔術の天才。
何不自由なく人生を謳歌してきた彼は、実は現実世界で専業主婦をしていたアラサーの腐女子が異世界転移してしまった姿だった!
元の世界へ戻るために提示された条件は、ただ一つ。
「この世界で成人するまで生きること」
現在15歳。この世界の成人まであと3年。
なんとしても平穏無事に学生生活を終えたいシンであったが、学校の入学式でこの国の皇太子とトラブルを起こしてしまい...!?
皇太子に説教したり、乙女ゲームのヒロインのような少女と仲良くなったり、仲良くなる生徒が美形ばかりだったり、BL妄想をしたり、微笑ましく友人の恋の応援をしたり学園イベントに参加したり。
異世界のイケメン貴族ってとっても楽しい!
大人が学生たちを眺めながら内心ツッコミ、でも喜怒哀楽を共にして。
ドタバタほのぼのとゆるーく学生生活を送って卒業し、成人して元の世界に戻りたい物語。
※主人公は恋愛に参加しません※
※BLの物語ではありませんが、主人公が腐女子設定の為、BLを妄想したり、登場人物の行動をBL的に楽しむ描写があります。
※BLだけでなくGLを楽しむ描写もある予定です。
※実際の恋愛は男女のみの予定です。
※メインではありませんが戦闘描写、流血描写がある時は注意書きします。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?
初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。
俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。
神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。
希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。
そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。
俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。
予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・
だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・
いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。
神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。
それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。
この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。
なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。
きっと、楽しくなるだろう。
※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。
※残酷なシーンが普通に出てきます。
※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。
※ステータス画面とLvも出てきません。
※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。
チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります
【完結&ネトコン12一次審査通過!!】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。
ハニィビィ=さくらんぼ
ファンタジー
不幸な事件に巻き込まれ、命を落としてしまった一人の少女。
死んだ後、彼女は突然目の前に現れた自分と瓜二つの吸血鬼の少女・ミラに懇願される。
「死んだ私の代わりに一族を危機から救って下さい!」
「今まさに一大ブームとなっている異世界転生のチケットを手にすることができた!!」と有頂天になった彼女は、死んだ後のミラの身体に入り込んで異世界行きを果たす。
だが彼女が転生した世界は、本来人の天敵である吸血鬼が、その血の力を渇望した人間たちによって逆に狩られる恐ろしい世界だった。
全く予想だにしなかった過酷な状況に戸惑う彼女であったが、異世界の吸血鬼と親交を重ね、ミラが遺してくれたチート極まりない力を駆使して、一族解放のための戦いを代行する決意をする。
果たして異世界に生まれ直したフワフワ陽キャ女子である彼女は、吸血鬼の間で語り継がれる伝説の救世主、『救血の乙女』になることができるのだろうか。
※この作品は『小説家になろう』様でも配信しております。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる