婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第三部

精霊の姫は穏やかに暮らしたい

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 あれから私たちは、国に帰り元の生活に戻った。
 国内の活気も前よりどこか明るくなり、街が笑顔で溢れかえっている。
 学校も少し変わった。
 授業内容の変化や先生のレベルが今までと大違いだ。
 シンジロウ様が子供の教育に力を入れているらしい。
 それに先生の顔ぶれも変わっていた。
 高慢な態度を取っていた先生の姿が居なくなっているのだ。
 元々彼らはアケチ家の関係者やアケチ家にお金で雇われた人たちだったみたい。
 アケチ家の所業が国中に広まり、彼らの居場所がなくなったそうだ。
 そんなわけで、私も以前より楽しい学校生活を送ることができている。

 それから、今もあの森には通っている。
 休みの日は、いつもあの家で過ごすようになった。
 魔法の勉強をたくさんして、魔力の保有量が上がったことで自分の力で転移陣を使えるようになったのだ。
 そのため、カナモを連れ毎週のようにお世話になっている。
 ユミエラさんは、いつも笑顔で受け入れてくれる。
 いつの日だったか、ユミエラさんも街に住まないかと聞いたことがある。

「……そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、私はもう普通の人間ではなくなってしまったから。ノアちゃんたちと同じように街に住むことはできないわ。それに、この森でこうして穏やかに過ごしている方が、私には合っているみたい」

 そう言って断わられてしまった。
 まあ、なんとなくわかってはいたけど。
 だから、こうしてユミエラさんたちに会いに来ている。

「ユミエラさん! 来ましたよ!」

「あら。いらっしゃい。今日も元気いっぱいね」

 ユミエラさんは、いつものように聖樹の下で動物たちに囲まれて読書をしていた。
 その姿が相変わらず神秘的で、何度見ても見惚れてしまう。

「――ノアとカナモ。よく来た。今日はお姉特製チーズケーキ。運が良い」

「あ、タマモ……って、また摘まみ食いしたでしょ? 口元に食べかすが付いてるよ」

「タマモちゃん、私たちの分まで食べてないよね?」

「無問題。タマモはお姉の分しかつまみ食いしない。お茶淹れるから少し待つ」

「「は~い」」

 いつもと同じようなやり取りをして、タマモはお茶を淹れる準備を始める。
 すると、これまたいつものように家の方から、お怒りのミシェルさんが飛び出してきた。
 こうして外観を見てるとやっぱりカフェなんだよね、あの家。

「ユミエラさん、あの家ってやっぱりカフェですよね?」

「そのつもりで建てたんだけど、こんな森の奥に来るお客さんなんて居ないことを失念していたの。結局カフェなんて見た目だけ。でも、いいの。当初の目的は果たせたから」

「当初の目的?」

「ええ、そう……」

 そうしてユミエラさんは、空を見上げて大きく深呼吸をした。
 それを見て、囲んでいた動物たちも同じように伸びをする。
 その様子が可笑しくて私たちは笑ってしまった。
 ユミエラさんは少し不思議そうな顔をしていたけれど、とびっきりの笑顔を浮かべて言った。

「私は、ゆっくりと穏やかな時間を過ごしたかったの。こうして、動物たちに囲まれ、ミシェルやタマモ、ティアに動物たちとお散歩したりお茶したり、ね。それが叶ったから、私はもう幸せよ。ノアちゃんとカナモちゃんも、幸せに生きなきゃダメよ。自分の思う通りに、やりたいように生きるの。アリアはそうしたわ。貴方たちもそうなってほしい。私は、ここで見守っているから」

 そうして私たちは笑い合った。
 とても幸せな時間、その思い出を心に刻み、これからも――。



 ◇◇◇


 むかしむかしのお話。

 とある聖なる森に、一人の少女が居ました。
 彼女の側には常に二人のメイドが付き添い、精霊たちの王が共に在りました。

 さらには神獣という神聖な獣を従え、その結果膨大な寿命を授かりました。
 脅威を感じた国の王は、彼女の力を求め森へ兵を差し向けましたが、敵うはずもなく返り討ちに。
 彼女は言いました。

「私は、こうして力を持っていますが、悪用する気も誰かを傷つけるつもりもありません。私はただ、穏やかな暮らしがしたいだけなのです」

 彼女は言葉通り、誰も傷つけることなく、森の奥でひっそりと穏やかに暮らしました。
 これは、そんな何の変哲もない、穏やかな姫のお話。
 貴方に伝えることがあるとするのなら、彼女のように自由に生きてほしい。
 ただ、それだけ――。


『精霊の姫は穏やかに暮らしたい』
                      著 ノア・サザナミ






 婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ    


 ~完~





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感想 3

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みんなの感想(3件)

キリン
2021.09.14 キリン

時には激しい波に襲われ、けど決して穏やかな波を保ち続けてる姫が凄いね



「たられば」な話ですけど、もしかの国が姫を追放せず国母として迎えてた場合、世界は老魔道士の陰謀で乱れ、ミシェルさん等には気に入らない事実かもですけど、彼処で追い出された事が切っ掛けで世界は穏やかな日々を迎える事が出来たと考えると、追い出した連中はファインプレーだったのかも知れません。 アリアさん達も姉妹の関係が悪化して姉殺しを実行してたかもですしね







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オラクル
2020.08.13 オラクル

王国の貴族たちは必要なですからねとあるが、必要ですからねの間違いではないですか

解除
ちびたん
2020.07.25 ちびたん

お嬢様…マイペースすぎる😅
森の主✨精霊王様が✨涙目に。
先ずは😓お互いを知るコトから !?
精霊王も混乱する( ̄∇ ̄)ウフフフ♡
天然記念物級マイペースお嬢様!!!
無敵ですな💦末オソロシイわ💧

人が訪れないであろう森に
カフェ☕を開くとは…お嬢様の
考える理想のカフェとは何か???
興味津々です。たま~に訪れる
であろう冒険者と後は(≧∇≦)b
何方が来店されるのでしょうね。続きが楽しみです。 🌱🐥💮

解除

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