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第三部
戦後の日常
しおりを挟む戦争が終わった後、シンジロウ様は部下と残存兵を連れてそのまま東洋国家へと向かった。
すぐにでも改革を始めるらしい。
しかし、初めは国中が混乱したそうだ。
知らぬ間に国のトップが変わり、これまで隠されていた事実が明るみに出た。
アケチ家の所業、老魔導士の暗躍、オダ家の真実。
何もかも包み隠さず、全ての国民に話したらしい。
シンジロウ様らしい行いだ。
数日してから、ランコさんが報告に来た。
よりよい国へと生まれ変わってから戻ってきてほしいというシンジロウ様の伝言。
そして国賓としてユミエラさんを招きたいと。
けれど、ユミエラさんは固辞していた。
そんな堅苦しいものにしてほしくないと、もっと気軽に遊びに行きたいと言っていた。
ユミエラさんらしい解答に思わず笑みがこぼれる。
そんなわけで、私は未だにユミエラさんのカフェでのんびりと過ごしていた。
ちゃんとお勉強や運動もしている。
グーたらな生活を送ってなどいない……いないったらいないのだ!
「ノアちゃ~ん。誰に向かってお話ししているの~?」
「気にしないで。それよりカナモ、ちゃんとできたの?」
「できないよぉ……。ハヤトお兄ちゃんが作った問題集難しすぎるよぉ……」
「それは分かるけど! 終わらないといつまで経っても遊びに行けないじゃない! だから、頑張って終わらせるの!」
そう。
私とカナモはのんびりしすぎて、ハヤト兄に怒られてしまった。
ママたちが何も言わないから油断していた。
そんなママたちは私とカナモに隠れて何かしているみたいで、忙しくしている。
ミシェルさんも一枚噛んでいるみたいだけど、一体何をしているのだろうか。
「――――二人とも。集中力が途切れているみたいだね」
「やばっ!」
「あわわわわっ」
咄嗟に勉強している風に装う。
集中していないだなんてとんでもない。
今までにないほど頑張っている。
「三人とも~。少し休憩にして、一緒にお散歩しましょ~」
女神のお声がかかった。
たくさんの動物を引き連れたユミエラさんが、窓の向こうで大きく手を振っている。
さすがのハヤト兄でも、ユミエラさんには敵いっこない。
カナモも救世主を見つけたような目をしていた。
ハヤト兄が窓を開け、外にいるユミエラさんに声をかけた。
「ユミエラさん。あまりこの子たちを甘やかさないでください。グーたらしてたこの子たちへの罰みたいなものですから」
「それは分かるけど、息抜きも大事よ。適度な休憩がより効率の良い学びにつながるの。……それに、最近はミシェルがみんなを連れて何かしているみたいだから、少し寂しいのよ」
哀し気に目を伏せるユミエラさん。
ハヤト兄も困った様子でオロオロしていた。
さすがです、ユミエラさん。
これなら、ハヤト兄陥落間違いなしですね。
「わ、わかりました。二人とも、休憩していいよ。言っておくけれど、帰ってきた続きをやるからね」
「「は~い!!」」
私とカナモはウキウキで外に出た。
すぐにユミエラさんの下へ駆け寄り、手をつなぐ。
そのまま動物たちに囲まれながら、私たちはしばらく聖魔の森のお散歩を楽しんだのだった。
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