上 下
118 / 123
第三部

終結

しおりを挟む

 武器を捨て、祈るように膝をつく兵士たちの間を抜け、二人のメイドは何やら物騒なことを話していた。

「さて、こいつらをどのように調理してあげましょうかねぇ」

「お姉、タマモにいい考えがある。――して――――で――する」

「それも良いのですが、――――した後に――を――――――するのはどうでしょう」

「それなら、――――――で――の――を――」

 正直想像もしたくない。
 カナモは何を言っているのか分からないようで、首を傾げていた。
 ダメだ。この子にこんな話を聞かせるわけにはいかない。
 私はカナモの耳を抑え、話が聞こえないようにした。
 何かの遊びと勘違いしたのか、カナモは無邪気にはしゃぎ始めた。
 決着はついたかもしれないけれど、今は大人しくしてて。
 それと誰か、あの二人を止めてください。
 そう思った時。

「――――こら」

「「いたっ」」

 二人の頭に拳骨が落ちた。
 いつの間にか精霊の力を抑えたユミエラさんが二人の間に立っていた。
 やっぱり二人を抑えられるのはご主人様だけだよね。

「もう終わったのよ。これ以上は私たちの関わることではありません」

「そうもいきません。この愚か者どもはお嬢様に多大なる不敬を」

「そう。お嬢を侮辱した。許すまじ。タマモの怒りは収まらない」

「二人が怒ってくれるのは嬉しいわ。でも、もうおしまい。私はしっかりとお父様と決別できたし、あのおじいさんとの因縁はあの子が断ち切らないと意味ないでしょ。私たちのやることはもう終わりなの」

 ユミエラさんは屈託のない笑みを浮かべ、二人を諭す。
 納得のいっていない様子のメイドたちだが、主に言われては否とは言えないようで、ミシェルさんは武器をしまい、タマモは耳と尻尾もなくなり髪の色が金から黒へと戻った。
 ユミエラんがご当主様の方を向いた。

「こう呼ぶのはこれで最後です、お父様。あなたには然るべき罰を受けてもらいます。何十年経っても、あなたは変わらなかった。自分の行いを正当化し、誰かの上に立たねば気が済まない。そのせいで多くの人に迷惑をかける。
 あなたが失脚した後、使用人たちがどうなったか知っていますか? 領民は? かの国がいかに発展したか、ご存じですか?
 あなたは自分の目的以外に興味を持たなかった。自分が楽をして楽しむ以外に目を向けなかった。ご自分の行いを悔いながら、安らかに眠ってください。さようなら」

「あ……ああ……ああああ………………」

 返す言葉もなく、ただ呆然と空を見上げる。
 そんなご当主様を放置し、ユミエラさんは後方に目を向けた。

「…………あとはお任せしますね」

「ああ。任された、姫よ」

 後方からはオダ家の志士たちを引き連れてシンジロウ様が現れた。
 ただ歩いているだけなのに、膝をついてしまいそうなほど威圧感を感じる。
 佇まいも、何もかもがここに来る前と段違いだった。

「姫よ。貴女の兄君はこの手で下した。頼まれた言伝も確と。……俺を恨むか?」

「いいえ。感謝するわ。私では……どうしても躊躇ってしまうから。お父様もお願いね」

「心得た。以後、東洋国家は我がオダ家が全力を持って繁栄させることを約束する。落ち着いたら遊びに来てくれ」

「ええ、楽しみにしてるわ」

 ユミエラさんは最後、シンジロウ様へと深く頭を下げた。
 よく見ると、ポタポタと水滴が落ち、地面を濡らしていた。
 その意味に気づいたのは、シンジロウ様とメイド達だけだった。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最強九尾は異世界を満喫する。

ラキレスト
ファンタジー
 光間天音は気づいたら真っ白な空間にいた。そして目の前には軽そうだけど非常に見た目のいい男の人がいた。  その男はアズフェールという世界を作った神様だった。神様から是非僕の使徒になって地上の管理者をしてくれとスカウトされた。  だけど、スカウトされたその理由は……。 「貴方の魂は僕と相性が最高にいいからです!!」 ……そんな相性とか占いかよ!!  結局なんだかんだ神の使徒になることを受け入れて、九尾として生きることになってしまった女性の話。 ※別名義でカクヨム様にも投稿しております。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

2人の幸せとは?今世も双子の姉妹で生まれちゃいました!

☆n
恋愛
何度生まれ変わっても双子の妹に全てを奪われる姉。 そしてその姉を見守り続けた者(物)達。 ー姉を見守り続けた者(物)達は、全ての力を今世に生まれたあの子に注ぐー どれだけ悔しかったか...。あの子を幸せにできない自分達をどれだけ痛めつけてきたか...。 悔し涙の分だけ持った私達の力の全てを今世のあの子に...

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

処理中です...