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第三部
終結
しおりを挟む武器を捨て、祈るように膝をつく兵士たちの間を抜け、二人のメイドは何やら物騒なことを話していた。
「さて、こいつらをどのように調理してあげましょうかねぇ」
「お姉、タマモにいい考えがある。――して――――で――する」
「それも良いのですが、――――した後に――を――――――するのはどうでしょう」
「それなら、――――――で――の――を――」
正直想像もしたくない。
カナモは何を言っているのか分からないようで、首を傾げていた。
ダメだ。この子にこんな話を聞かせるわけにはいかない。
私はカナモの耳を抑え、話が聞こえないようにした。
何かの遊びと勘違いしたのか、カナモは無邪気にはしゃぎ始めた。
決着はついたかもしれないけれど、今は大人しくしてて。
それと誰か、あの二人を止めてください。
そう思った時。
「――――こら」
「「いたっ」」
二人の頭に拳骨が落ちた。
いつの間にか精霊の力を抑えたユミエラさんが二人の間に立っていた。
やっぱり二人を抑えられるのはご主人様だけだよね。
「もう終わったのよ。これ以上は私たちの関わることではありません」
「そうもいきません。この愚か者どもはお嬢様に多大なる不敬を」
「そう。お嬢を侮辱した。許すまじ。タマモの怒りは収まらない」
「二人が怒ってくれるのは嬉しいわ。でも、もうおしまい。私はしっかりとお父様と決別できたし、あのおじいさんとの因縁はあの子が断ち切らないと意味ないでしょ。私たちのやることはもう終わりなの」
ユミエラさんは屈託のない笑みを浮かべ、二人を諭す。
納得のいっていない様子のメイドたちだが、主に言われては否とは言えないようで、ミシェルさんは武器をしまい、タマモは耳と尻尾もなくなり髪の色が金から黒へと戻った。
ユミエラんがご当主様の方を向いた。
「こう呼ぶのはこれで最後です、お父様。あなたには然るべき罰を受けてもらいます。何十年経っても、あなたは変わらなかった。自分の行いを正当化し、誰かの上に立たねば気が済まない。そのせいで多くの人に迷惑をかける。
あなたが失脚した後、使用人たちがどうなったか知っていますか? 領民は? かの国がいかに発展したか、ご存じですか?
あなたは自分の目的以外に興味を持たなかった。自分が楽をして楽しむ以外に目を向けなかった。ご自分の行いを悔いながら、安らかに眠ってください。さようなら」
「あ……ああ……ああああ………………」
返す言葉もなく、ただ呆然と空を見上げる。
そんなご当主様を放置し、ユミエラさんは後方に目を向けた。
「…………あとはお任せしますね」
「ああ。任された、姫よ」
後方からはオダ家の志士たちを引き連れてシンジロウ様が現れた。
ただ歩いているだけなのに、膝をついてしまいそうなほど威圧感を感じる。
佇まいも、何もかもがここに来る前と段違いだった。
「姫よ。貴女の兄君はこの手で下した。頼まれた言伝も確と。……俺を恨むか?」
「いいえ。感謝するわ。私では……どうしても躊躇ってしまうから。お父様もお願いね」
「心得た。以後、東洋国家は我がオダ家が全力を持って繁栄させることを約束する。落ち着いたら遊びに来てくれ」
「ええ、楽しみにしてるわ」
ユミエラさんは最後、シンジロウ様へと深く頭を下げた。
よく見ると、ポタポタと水滴が落ち、地面を濡らしていた。
その意味に気づいたのは、シンジロウ様とメイド達だけだった。
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