婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第三部

開戦

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「お嬢様、奴らが進軍を始めたようです」

 ミシェルさんが報告した。
 それを聞き、ユミエラさんは少しの間目を瞑った。
 次に目を開いた瞬間、いつもとは違う覚悟の籠った笑みで告げる。

「――――それでは、行きましょうか。私たちの日常を守るために」

「出陣!!!」

 シンジロウ様が刀を上に掲げ叫ぶ。
 それに呼応し、志士の方たちが雄叫びを上げた。
 聖域は怒号で包まれ地を揺らす。
 周囲で私たちを見守っていた動物たちも、同じように咆哮した。
 ここにいる皆の想いが一つになった。

「――――開門」

 そんな中、ミシェルさんが静かな声で告げた。
 聖樹の前に豪奢な装飾が施された巨大な門が出現。
 その門の先は、東洋国家より西方、『聖魔の森』の入り口前の平原である。
 彼らが森に入る前に決着をつけるとシンジロウ様が仰った。
 ユミエラさんの提案で、登場は盛大に、開戦は突発的に、戸惑っている間に蹂躙しましょう。そう決まった。
 そのための盛大な登場の演出として、ミシェルさん考案の転移門だ。

「もう繋がっているわ。先陣は誰が?」

「無論、俺が行く。我が精強な武士たちよ! 覚悟は良いな? 出陣である!! 俺についてこい!!!!」

『おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』

 シンジロウ様が馬に乗り、門の先へと駆け出した。
 そのあとをランコさんが同じように馬で追い、志士たちが走って追いかける。
 その中には、ヒデヨシも交じっていた。
 彼はシンジロウ様のお言葉通り、背中を追い見極めるのだとか。
 オダ家の方々が全員門の中に入って行ってから、次は私たちの番である。

「さて、私たちも行きましょう。アイシャちゃんたち、お留守番よろしくね」

「はい。……ノア、怪我しないようにね」

「うん。大丈夫だよ、ママ。いってきます!」

 心配そうな顔で私を抱きしめるママに笑顔で返す。
 カナモの同じようにカンナおばさんに抱きしめられていた。
 ハヤト兄はリーシャおばさんにお尻叩かれてたけど……。

「心配しなくて大丈夫よ。ただ行って帰ってくるだけだから。ね、ミシェル」

「そうです。お嬢様方に傷一つ付けることなどありえません。万事この万能メイドにお任せください」

 ミシェルさんが自信満々に胸を張った。
 そう言えるほど、確かにミシェルさんはすごい人だ。
 いつも通りの雰囲気に少し安心する。
 そうして、ミシェルさんを先頭に私たちも門へと入って行った。


 ◇◇◇


「――――くそっ! どうなっておるのだ! 奴らめ……一体どこから現れたのだ!!」

「ふむぅ……このような大規模な転移魔法、わしでも知らんな。オダ家の仕業でもあるまい。つまり、精霊姫の関係者というわけじゃのぉ」

 老師が白いひげを撫でながら、分析する。
 今はそのような些事に気を取られている場合ではない。
 一刻も早く目の前のオダ家残党を打ち取らねば!
 そう心の中で意気込む私に老師が告げる。

「油断しておると危ないぞ。ほれ」

「っ!?」

 私の上空から矢の雨が降ってきた。
 老師の魔法障壁が無ければ、今頃私は……。

「感謝いたします、老師」

「気にするでない。それより、あそこじゃ」

 老師が杖で指した方角を向く。
 すると、馬を駆りこちらに迫ってくる鬼の形相を浮かべた若者の姿。
 忌まわしきオダ家当主に遺伝される黒交じりの赤髪。
 現オダ家当主であると推測される。
 その後ろからは黒髪の着物を纏った美女が付き従っている。
 こちらに向かってきているが、奴らは息子に任せるとしよう。
 わざわざ大将が先陣を切ってくるなど、愚か極まりない。
 我々は――――。

「ほっほっほ。こちらも来たようじゃのぉ」

「――――ええ、そろそろあなたを退治しませんと、ティアが心の底から笑ってくれないのです。それに……因縁は他にもありますからね」

 そう言って私の前に姿を現したのは、これまた忌々しい小娘。
 よもや、私の前に姿を見せるとは、こ奴も愚か者である。
 精霊姫などと噂され、調子に乗っていると見える。
 これは、として灸をすえなければなるまい。

「おめおめと姿を晒すとはな、役立たずのよ」

「お久しぶりですね、

 忌々しい笑みを浮かべ、奴はそう言った。







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