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第三部
神獣の秘密
しおりを挟むヒデヨシ君の力を聞いて、ユミエラさんは楽しそうな声を上げた。
「まあ、そうなのね。それはどうやって使うのかしら?」
「私の予想ですけど、おそらくは魔法の媒体のようなものにするのではないかと。神獣を支配する魔法に、未知の支配の力。これらが揃えば神獣も支配できると考えているのでは」
「ふふふ。いかにもあのおじいさんが考えそうなことね。それに……彼らは本当に知らないの?」
「ええ。実際に聞いて回ったりも致しました。結論から申し上げますと、彼らは神獣に関して何の知識も持ち合わせていませんでした。認識で言うと、神獣というもの凄い力を持った存在がいる、くらいでしょうか」
ミシェルさんの話を聞いて、びっくりした。
その程度の認識しかなかったなんて。
神獣についてなんて調べればすぐにいろいろなことがわかるのに。
「仕方ないですね。あの国では神獣は御伽噺の存在だと教えられていますから」
「え!? そうなの!?」
「そうよ。私たちが神獣について知っている基本的なことも、国民のほとんどが知らないわ。私たちには母さんがいたから……」
そう言えば前に聞いたことがある。
おばあちゃんは若い頃に神獣と契約していたって。
確か……。
「……フェンリルだっけ?」
「アリアと契約していた子ね。懐かしいわぁ。狼なのにまるで犬みたいな子だったわ。名前はヴィルって言うの。アリアに聞いてないかしら?」
「言ってました。ヴィルって名前の大きな狼と契約していたって。でも、ママたちが生まれてから契約を解除したって……」
「そうね。少し神獣との契約の話をしましょうか」
そう言って、ユミエラさんは神獣との契約について教えてくれた。
その話の中で、ユミエラさんがこんなにも若々しい理由を知った。
まさか、神獣と契約すると老化が遅れるなんて。
「私の場合、それだけじゃないのだけどね。アリアはそれを望まなかった。シュウと一緒に歳をとって、シュウと同じ道を歩みたい。そのために不老は必要なかった。ちゃんと歳をとって、ちゃんと死ぬ。当たり前にくる時間を感じたいって。私は寂しいけど、アリアが決めたことだもの。そしてあの子はそれを叶えた。私はそれだけで十分……」
哀しそうに笑うユミエラさん。
おばあちゃんとユミエラさんは親友だったんだって、実感した。
「お嬢。タマモはずっと一緒。どこまでもお嬢といる、よ?」
「お嬢様! 私もずっとお側にいますよ!」
「………………ミシェルさんて、ユミエラさんが貴族だったころから一緒だったんですよね?」
「そうですよ」
「神獣の契約者でもないですよね?」
「もちろんです。私のようなメイドが神獣と契約できるはずもありません」
「………………じゃあ、なんでそんな若いんですか?」
ユミエラさん同様、ミシェルさんも歳をとっている感じがない。
どういうことなのだろう。
「ミシェルは………………私も分からないわ。どうしてかしらねぇ」
「ちょっ、お嬢様! そんな言い方したら私が変なメイドみたいじゃないですか!」
「変なメイドじゃない」
「お姉は変」
「ガーン!!」
二人にそう言われ、ミシェルさんは膝をついた。
そんなミシェルさんを放置して、ユミエラさんは話を続けた。
「どこまで話したかしらね。神獣について………だったわね。そうそう、神獣の契約者しか知らない重要なことを教えてあげる。彼らが無意味なことをしている理由よ」
「無意味………? 神獣を支配する魔法、の事ですか?」
「そうそれ。だって――――神獣に魔法は効かないもの」
軽い調子でユミエラさんは誰も知らなかった重大なことを言った。
軽すぎて、何を言われたか理解するのに時間がかかりました。
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