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第三部
ヒデヨシの力
しおりを挟むミシェルさんとタマモが協力し、数秒でティータイムのセットを完了させた。
相変わらずこのメイドたちのスキルはおかしい気がする。
気にしてるのは私だけ?
どうしてみんな簡単に受け入れているの?
「ノアちゃん、どうしたの?」
「な、何でもないわ」
「じゃあ、行こう。今日のお菓子も美味しそうだねぇ」
カナモの能天気さが羨ましい時が多々ある。
この森に来てからそれが増しただろう。
カナモに手を引かれ、私も席に座る。
皆が座ったことを確認したユミエラさんは少年――ヒデヨシ君に話を聞き始めた。
「さて、ヒデヨシ君。まずはここに連れてきたことから話すわね。ミシェルの言い分では、あなたが悪い人たちに利用されそうだったから、ということなのだけれど何か心当たりあるかしら?」
「そんなもの、俺が知りたいね。いきなりこんな森の中に連れてきやがって……って、それよりここ何処だ?」
生意気な態度に変わりはない様子。
気を付けてっ。タマモがすんごい顔で睨みつけてるからっ。
「そう言えば、まだ教えてなかったわね。ここは『聖魔の森』の中心、聖樹がそこに生えているでしょ? この世界で最も神聖な場所よ」
「――――……は?」
ヒデヨシ君は何を言っているのか理解できず、ポカーンと口を開けた。
その間抜けな顔を見てタマモが笑いをこらえている。
あの二人、仲良くなりそうもないな……。
「『聖魔の森』ってあの……精霊王が棲むって言う?」
「そうよ」
「誰も到達できない領域で、人のいない危険な森の?」
「そうそう」
「……………………………………嘘吐くならもっとましな嘘吐けよ」
「あらあら、ふふっ」
すっごく失礼な物言いにも、笑顔を崩さないユミエラさん。
どんな精神構造しているのかな。
隣のメイドさんたちが今にもヒデヨシ君を殺しかねないので止めてください。
って、ああ、ほらっ。
「ひっ!?」
「お前、お嬢に対して無礼。一回死んどく?」
タマモの尻尾がヒデヨシ君の首を捉えた。
さすがのヒデヨシ君でも殺されかけたら大人しくなるようだ。
こういう時だけ、タマモは話し方が流暢になるね。
そんなこと考えている場合じゃないか。私も意外とのん気なところがあったみたい。
そんなとき、ユミエラさんがタマモを持ち上げ、膝上に乗せた。
すると、タマモは借りてきた猫のように大人しくなった。
「そういうこと言わないの。いいじゃない。ヒデヨシ君みたいなのは新鮮だわ」
「お嬢は……優しすぎ……だから、代わりにタマモが……」
「ありがとう。タマモの気持ちは嬉しいけれど、タマモにはそんな危ないこという子になってほしくはないわ」
「むむむぅ」
納得いかなそうな顔をしているが、ユミエラさんに撫でられては抵抗できないみたいだ。
「ごめんなさいね。話を戻しましょうか。あなたには何か特別な何かがあるみたいなのだけれど、ミシェル」
「はい。彼には気質、と言いますか、スキルと言っていいのかわかりませんが、とりあえずそういうものと仮定して話します。ヒデヨシ君には『支配者』という力が宿っているみたいです」
言葉を聞くだけで、なんだか良くない気配を感じ取れた。
お偉いさんたちが考えていることの一端を読み取ってしまったような……そんな気持ちです。
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