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第三部
ピクニックの終わり
しおりを挟む「思いのほか用事も早く済んだし、帰りましょうか。シンジロウ君たちも私の家に招待するわ」
ユミエラさんがニコニコ笑顔でそう言った。
しかし、シンジロウ様は首を横に振る。
「いや、行くのは構わないのだが少々こちらも準備がしたい。必ず伺う故、先に戻られよ」
「あら、そう? それじゃ私たちは先に帰るわね。後でお迎えを遣わせるから、一緒に来てくれるかしら?」
「承った。それまでにこちらも支度を整えよう。ラン、皆に報せよ。至急の招集である。遅れたものは置いていくとな」
「はっ。速やかに招集をかけます。皆、この日を心待ちにしていたことでしょう、すぐに集まる筈です」
そう言ってランコさんは颯爽と走って行った。
木の上を伝って走るなんて、御伽噺で読んだ『忍者』みたいだわ。
今度教えてくれるかなぁ。
「ランの奴、まだ挨拶もまだだと言うのに……。すまぬな、俺の従者が」
「いいのよ。とってもいい子ね。あなたのことが大好きだって伝わってくるわ」
「ははっ。あ奴の側ではよき主であらねば釣り合わぬ。では、俺も行く。数日の後、そちらへ赴こう」
「お待ちしているわ。それでは」
挨拶を済ませると、シンジロウ様が霧のようになって消えてしまった。
一体何をしたのか、私には全然分からなかった。
ハヤト兄は感心したような顔をしていたから、後で聞いてみようかな。
「それじゃ、私たちも帰りましょうか。アイシャちゃんたちも待っているだろうし。キュウちゃん、またお願いね」
ユミエラさんがそう声をかけると、タマモが大きな狐の姿になった。
金色の毛と九本の大きな尻尾は相変わらず威容を放っている。
『お安い御用じゃ。ほれ、乗るが良い。帰りはもっと速くするかのぉ』
「安全第一でね」
『もちろんじゃとも。さあ、行くぞ』
そうして、倍の速さで走る九尾。
行きよりも景色の流れるスピードが速すぎて、快適なのに気持ち悪くなりました。
ちなみに一日で元の家まで到着した。
◇◇◇
「……うぷっ、き気持ち悪いぃ…………………」
「おかえりなさい、ノア。なんだか顔色が悪いわ。大丈夫?」
「だ、大丈夫………ただいま、ママ」
吐きそうな気分を何とか抑えて、ママの元へ。
…………………ああ、安心する。
カナモはどうしてあんなに平気そうにしているのよ。
カンナおばさんに駆け寄って嬉しそうにピクニックの話をしていた。
あの子と私の違いって……。
「ハヤトもおかえり。ユミエラさん、どうでした?」
「シンジロウ君には会えたわ。協力してくれるみたいよ。彼なら安心して任せることが出来そうだわ」
「それはよかったです。シンジロウ様はいつ来られるので?」
「何日かしたら迎えに行ってもらうわ。そろそろあの子も帰って――――ほら」
ユミエラさんが言葉を切って、大樹の下を指さした。
すると、魔法陣が浮かびあがり、人が飛び出してきた。
黒髪でメイドの格好をしたお姉さんと……誰?
「お嬢様、ただいま戻りました! カイはあちらの様子の偵察を任せているので残してきました。それと……」
手に掴んでいる少年を前に押し出した。
目の下に刃物の傷がついたやんちゃそうな少年。
私と同じくらいの年齢かな。
「冒険者ギルドで拾ってきました。有能そうなんで今回の件で役に立つかと」
ミシェルさんはそう言って少年の頭を撫でた。
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