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第三部
シンジロウの協力
しおりを挟むようやく目を覚ましてきたユミエラさんに寝ていた間のことを説明する。
するとユミエラさんは納得したように声を上げる。
「ああ、あなたがシンジロウ君ね。会えて嬉しいわぁ」
ユミエラさんがそう言うと、シンジロウ様の後ろに控えていたランコさんが目を吊り上げ、ユミエラさんを睨みつけた。
「そこの方、シンジロウ様に対して不敬ですよ。言葉を改めなさい」
ランコさんがそう口にした瞬間、また空気が重くなったのを感じた。
原因はユミエラさんのすぐ近くにいるメイドさんが発する魔力の圧力のせいである。
三本の尻尾を逆立ててランコさんを威嚇していた。
「お前こそ不敬。お嬢に対して口の利き方がなってない。今ここで――――ふにゃぁぁぁぁ」
「ダメよ、タマモ。こんなに可愛い尻尾逆立てて怒っちゃダメ。私は気にしていないからいいのよ。ごめんなさいね。うちの子、誰に似たのか少し過激なの」
「いや、こちらこそ失礼をした。ラン、お前が悪い。あの方に謝罪せよ」
「なっ!? シンジロウ様、私はっ!」
「あの方は精霊の姫であるぞ。俺なんぞよりよっぽど高位の方だ。彼女は温厚だと聞いているが、側にいるメイドとこの森に棲む動物や精霊らの逆鱗に触れてはならぬ。覚えておけ」
「は、はっ! 申し訳ございませんでした!!」
シンジロウ様に諭され、ランコさんは機敏な動きで土下座した。
「そんな大げさよ。私はただこの森のみんなと仲良くなっただけ。みんながお友達なの。……まあ、うちのメイドはちょっとあれだけれど、他の子たちはみんな優しいわ。だから、気にしないでね」
「寛大なお心に感謝する。して、精霊の姫が俺に会いたいとは? 如何な用か説明してくれるのだろう?」
「そうそう。あなたにお願いがあってきたのよ。国盗りするから、あなたに国を治めてほしいの。いいかしら?」
「……………………………………待ってくれ。さすがの俺でも処理しきれん話だ。もう一度、事細かに、事情の説明をしてもらえるだろうか」
ユミエラさんの何もかもをすっ飛ばした説明では何も伝わらなかった。
いや、当然だ。あれで全てを理解しろと言う方が難しい。
ハヤト兄が代わりにシンジロウ様に状況説明をしていた。
その間ユミエラさんの膝上ではタマモが不満そうな顔をしていた。
「………お嬢の言葉が分からないとか……ダメダメ……」
「そうだねぇ。タマモちゃん、尻尾モフモフさせて~」
「……いいよ……カナは特別……」
「わ~い。むふふ~、もっふもふだね~」
カナモとタマモはいつの間にか仲良しになっていた。
何があったかは分からないけど、なんかずるい。カナモずるい。
自分の膝上で戯れる二人を、ユミエラさんは微笑みで見守っていた。
「ふむふむ。なるほどなるほど。我が祖国はそのようなことになっていたか。やはりアケチの馬鹿どもには荷が重かったようだ。怪しげなものに謀られるなど言語道断。俺の手で引導を渡してやろうぞ。精霊の姫よ、貴殿の願い、このオダ・シンジロウが承った。諸君らの国盗り、俺も尽力しよう。よろしく頼む」
「あら、嬉しいわ。こちらこそ、よろしくね」
シンジロウ様とユミエラさんが握手を交わす。
特に何かの交渉もなく、シンジロウ様の協力を得ることができたのだった。
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