婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第三部

人探し

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 ハヤト兄が言った名前を聞いて、ママたちが驚愕の顔を浮かべた。

「オダ家!? かの家の御方が御存命なの!?」

「運よく生き残ったそうだよ。今は『聖魔の森』を隠れ蓑のしているって聞いた」

 御存命? どういうこと?
 私の知らないことが多い話をしている。
 今の国長は確か……アケチ家だったような。

「そういえば、ノアとカナモは知らないわよね。あなたたちが生まれる前に政変が起こっているの。今の子たちにはあまり教えられる話ではないけれど、アケチ家の陰謀によりそれまで国長だったオダ家の方々が暗殺されたの」

「そんなこと教えてもらったことないよ。他の子たちも知らないんでしょ? どうして教えられてないの?」

「アケチ家が意図的に隠したのよ。政変の詳細まで知っている人だって国内にそう多くはないの。だから、今もアケチ家が実権を握っているわけ」

「へぇ……」

 そんなことがあったんだぁ。

「でも、暗殺だったらもっと大々的になるんじゃないの?」

「アケチ家に仕えている顧問魔法士がいるでしょ? あれが何らかの魔法を使って話を捻じ曲げたって言われているわ。その魔法が分からないのだけど、それのせいで国民の大半はアケチ家の話を信じているってことなの」

「そうだったのね。つまり悪者はその、あけちけ?の人たちとあの老魔導士ね。それなら、やることは決まったわ」

 ユミエラさんが手をパンパンと叩いて立ち上がった。
 少し待っていると、何かの足音が聞こえ始めた。
 それは段々と大きくなりこちらに近づいてきているようだった。
 足音が収まるとユミエラさんは扉を開け外に出た。とりあえず私たちもそのあとに続いて外に出ると

「うぇっ!?」

 たくさんの動物たちが綺麗に整列して座っていた。
 さっきの拍手でこの子たちを呼んだというのだろうか。
 ユミエラさん……普通の女の子はそんなことできませんよ。

「集まったわね。それじゃこの子たちにそのシンジロウさん?だったかしら。その人を探してもらいましょう。キュウちゃん、お願い」

「うむ。ハヤトよ、少し視せてもらうぞ」

 そう言っていつの間にか入れ替わっていた九尾が、背伸びをしてハヤト兄の頭に手を翳していた。

「こやつじゃな。よし、皆の者。今伝達した男を探すのじゃ。この広大な森の中……おそらくは外周付近にいるであろう。情報を元に走り回れ。――行け!」

「みんな、頑張ってね」

 九尾とユミエラさんが声をかけると、動物たちは一鳴きし、どこかへ走り去って行った。
 満足した様子でユミエラさんが振り返った。

「これでしばらく待っていればシンジロウさんは見つかるはずだわ。それまで私たちはここで待ちましょうね」






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