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第三部
決断
しおりを挟む「お嬢様、そんな知り合いいないのだから考えても意味ないかと」
ミシェルさんが真顔でそう言った
数日ここで過ごして分かったことですが、この二人の関係はただの主従という感じではない。
友人というか姉妹というか、なんかそんな感じ。
言葉にするのが難しいくらいだ。
「わ、分かってるわよっ。でも、大事なことでしょう?」
「そういうのは私たちが考えることです。お嬢様はただ、お嬢様のしたいことをおっしゃってください。全身全霊を持って私たちが叶えてみせます」
「……そう……お嬢のためなら……タマモがんばる」
いつの間にか九尾と入れ替わってタマモがいた。
耳も尻尾も消え、黒髪の小さなメイドさんになりちょっと寂しいのは内緒。
そのタマモの目は、いつもの気怠さが無くなり、真剣そのものだった。
「タマモまで……わかったわ。それじゃ、やっちゃいましょうか」
「かしこまりました。情報収集はお任せください。タマモはお嬢様の側から離れないように。いいですね?」
「うけたまわりー……」
「お嬢様、カイをお借りします。一週間ほど離れますが、ご心配なく」
「ええ、大丈夫よ。無理はしないように。いいわね?」
「お嬢様こそ、私がいないからってお料理だけはしないように」
そう言ってミシェルさんと白虎は忽然と消えた。
話が急に進んだことでついていけてない私たちはどうしたら。
「ごめんなさいね。ミシェルったらせっかちだから……。あなたたちにもしてほしいことはあるのよ」
「私たちにできることでしたら何なりと」
「それなら、誰か国のトップに立てるような人って知らないかしら? 私としてはそれだけが気がかりなのよね。ミシェルの言う通り、ここに引きこもっているから知り合いなんてほどんどいないし」
そう言われ、ママたちが考える。
しかし、ママたちにもそんな知り合いはいないのか、難しい顔をしていた。
そんな中、一人おずおずと手を挙げた人物に私は驚いた。
「……あの」
「あら、ハヤト君。もしかして」
「この人なら、そう思える人が一人だけ」
「は、ハヤト!? あなたにそんなお知り合いがいたの!?」
「ちょ、ちょっと母さん! 落ち着いてっ」
ハヤト兄のママであるリーシャおばさんが、ハヤト兄に詰め寄った。
ものすごい勢いで肩を揺らしている。
「リーシャ、落ち着きなさいって。ハヤトにだってお友達くらいいるわよ」
「そ、そうよね。息子に友達がいないなんて、そんなことないわよね」
「失礼にもほどがあるよ、母さん……」
ハヤト兄が悲し気な表情を浮かべた。
母にどんな息子だと思われていたのか知ってしまったのだ。
「それで、ハヤト君のお知り合いはどんな人なの?」
「は、はい。えっと……僕の知り合いというか、たまたま出会ったというか……」
「それでもいいわ。教えてくれる?」
「その人は………………数年前まで東洋国家を治めていた一族の方です。オダ・シンジロウ。質実剛健、清廉潔白、文武両道、民を第一に考えている御方です」
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