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第三部
ユミエラの悩み
しおりを挟む「はぅぅぅ~……」
「これは……良いぃ……」
私とカナモは九尾の尻尾に包まれていた。
極上のモフモフ。天国はここに……。
このまま眠りにつきたい。そう思ってしまうほど罪深い尻尾だった。
「ノアちゃ~ん……オヤスミィ……スヤァ」
「私も……って、ダメよ! まだ話終わってないんだから! 起きなさい、カナモ!」
危うく眠りかけたところでハッとした私は、カナモを叩き起こした。
私たちの問題なのに、当事者が眠っていてはいけない。
ちゃんと話がまとまるまでは起きてなきゃ。
「うむうむ。元気な童たちじゃ。斯様な童たちを狙うなど、最近の人間は落ちぶれたものじゃ」
そう言うと少し尻尾が逆立った。
あっ。ちょっと痛い。毛が顔に刺さる。
「それで、お嬢様はどうなさるおつもりですか? 奴らがここまで来るのを待っているだけですか?」
「そうねぇ……。どうしましょうか」
ふふふ、と笑ったユミエラさんの視線はママたちに向きました。
「私は……待つよりも、国長方を止めるべきかと。正直、彼らの為そうとしていることは無謀にもほどがあります。ただでさえ、今の東洋国家は国力が下がっているというのに」
「そうです。年々作物の収穫量が減少し、その上他国との交易も制限されているのです。そんな中、『聖魔の森』を踏破し、大陸進出などと……」
そんな情勢だから、パパやお兄ちゃんは国を出て冒険者として活動しているのだ。
東洋国家では冒険者はあまりいい印象を持たれていない上、仕事も少ない。
それに、今回の徴兵で若い男性がいなくなってしまう。ってママたちが言っていた。
私には難しいことは分からないけれど、これが良くないってことはわかる。
……もうダメかも、あの国。
「ん~、そうねぇ……」
ユミエラさんは頬に手を当て悩んでいます。
凄い神妙な顔で考え事をしています。
そんな姿もとても綺麗です。
『ユミは一体何を悩んでいるの?』
「何って……あの国治めたら誰をトップにしようかって」
「「「えっ?」」」
その場にいる全員の声がハモリました。
ユミエラさんは今なんと? 国を治める?
「お、お嬢様は攻めるかどうか悩んでいたのでは……?」
「へ? 違うわよ。悠長に待っているのも勿体ないし、みんなで遊びに行くのは決めてあるわ。でも、そうしたら誰が国を治めてくれるのかなって思って」
「で、でも、ユミエラさんさっきはダメって」
「それは当然よ。今すぐ行っても何も準備できていないもの。もう少しいろいろと準備を整えてから行った方が後々楽でしょう?」
「準備って何を……?」
「例えば、今言った通り国を治める人――つまりは国王ね。それとあっちの戦力分析に情報操作、あの老魔導士対策とかたくさんあるわよ。結局は国盗りになるから、大変なのよねぇ」
ユミエラさんの考えていることは想像の斜め上でした。
しかも、もうすでに国を盗った後のことまで考えていました。
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