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第三部

狙われたのは

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「――――それでは、これからお茶会を始めまーす♪」

 ユミエラさんが楽しそうにそう言った。
 ドンドンパフパフと同じノリで拍手をしているのは、タマモとティアさん、それとカナモだけだった。
 正直私はついていけませんでした。
 ママたちも微妙な顔をしている。

「お嬢様、真面目な話もするのですよ。わかっておいでですか?」

「もちろん。ちゃーんと理解しているわ。でも難しいことは分からないから、ミシェルお願いね」

「ご理解なさっているのなら大丈夫です。全て私にお任せください」

 珍しくミシェルさんが窘めたと思ったら、そんなことはなかった。
 結局お嬢様信者のミシェルさんは通常運転らしい。
 私がしっかりしないと。

『ねぇ、ミシェル~。久しぶりに帰ってきたからカレー食べたいわぁ』

「そういうと思って用意してあります。お好きなだけよそってお召し上がりください」

『さっすがミシェル~。それじゃ遠慮なく~』

 待って。自由すぎるわ。
 ティアさん、あなたがお話しがあるってみんなを集めたんですよ!
(ちなみに、戻ってくる間にティアさん呼びを許可されました)
 突然の精霊王の登場でママたちも混乱しているんです。
 誰かがまとめてくれないと!

「それじゃ、まずはアイシャちゃんたちのお話を聞きましょう。彼らはなんて?」

「は、はい。うちの旦那が独自に調べた結果、国の上層部はある魔法を作り上げたそうです。その魔法は精霊を支配することができるそうです」

「……そう。そんな魔法を作っていたのね。なんて……なんて、愚かな」

 ユミエラさんが酷く悲しそうな顔をした。
 どうしてそんな顔をするのか分からないけれど、一瞬だけ背筋がゾワッとしたのを感じた。

「……やはりあの国は亡ぼすべきでは? お嬢様の許可をいただければ私が」

「ダメよ。国の偉い人たちは悪い人だけど、そこに暮らしている人は関係ないわ。……それにあの国がなくなってしまったら困るじゃない」

「確かに……お米や小豆、和の食材が仕入れられないかもしれません。それは困ります」

「でしょう?」

 え……気にするとこそこ?
 もっと他にあると思うけど、そこなの?

「その魔法のことは他に何か?」

「はい………………あまりこの子たちに聞かせたくないのですが、当事者ではあるので誤魔化せませんね」

「え? 私たち?」

 ママが私とカナモを見てそう言った。
 その顔はどこか怒りをこらえているような、そんな顔だった。

「その魔法は………………発動に血が必要なのです。精霊に愛されたものの血が。特に狙われていたのは母でした。ですが、母の遺体は別の場所で安置してくれたと聞きました。本当にありがとうございます」

「気にしないでいいわ。私の大事な友人を守るためだもの。それより、次の狙いは………」

「ええ………………この子たちです。それと」

「他にも何か?」

「はい。タマモちゃんが狙われている理由も同じかと」

「? この子も? どうしてかしら?」

 私も分からなかった。どうしてタマモまで一緒に狙われるのか。
 おばあちゃんの血を受け継いでいないし、他に何かあるのかなぁ。

「別の魔法で、神獣を支配するものもあるそうです。そう考えるとおそらく………………」

「……そう。タマモだけでなく、私も」

 ユミエラさんが察したようにそう口にすると、空気が一変した。







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