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第三部
湖にて
しおりを挟む「聖魔の森」に来てから数日が経ちました。
危ない森って聞いていたのにここは東洋国家より全然住み心地がいい。
なんで危ないって言われてるんだろう?
魔物とかいっぱいいるからかなぁ。
でも、ここにいる動物や魔物たちは安全だよ。
いつもみんなと遊んで楽しいです。
「――――ノアちゃ~ん。こっちこっち~」
少し先でカナモが手を振っている。
今日は近くにある湖で遊ぶ。
遊ぶって言っても魔法の練習を兼ねてだけど。
ハヤト兄曰く
「湖の中には動物はあんまりいないそうだから、安全だしね。周囲に被害が生じないと思うよ。魔法の練習にはぴったりだね」
と、嬉しそうに言っていた。
湖の中にはいないだろうけど、水辺にはいろんな動物たちが休んでいたりしている。
その子たちに被害が及びそうなんじゃ……。
「大丈夫よ。うちの子たちは慣れてるから」
「……ユミエラさん、こっちにいていいんですか?」
大人たちは家で今度について対策中のはず。
パパたちから返事が返ってこないと進まないが、話を聞かないのはどうなんだろうか。
「平気よ。私がいても大して役には立たないからね。難しいことは分からないし。だからノアちゃんやカナモちゃんと一緒に遊んだほうが有意義だわぁ」
「……お嬢お嬢、タマモも一緒……」
「ふふっ。そうね。タマモも一緒ね」
魔法の練習なのになぜか気が抜ける。
それより、未だにタマモと仲良くなれていない気がする。
最初よりはお話しできるようになったけれど、必要なことを話したら離れてしまう。
それにどこか警戒されているような気も……私の気のせいかな。
「ノアちゃ~ん、気持ちいいよぉ~」
「あ~! カナモずるい! 私も」
カナモは浮き輪の上でゆらゆらと波に揺られていた。
ずるいずるい。私もそれやりたい。
服を脱いで水着になり、カナモに突撃する。
「あっこら。ちゃんと準備運動しないと危ないよ」
「大丈夫だよ~。ハヤト兄も早く~」
「まったく……」
ため息をついてから、ハヤト兄も湖に入ってきた。
その場で何か考え込み、小さく何かを呟いた。
「ハヤト兄?」
「魔法の練習だからね。ノア達だけじゃなく僕も当然魔法を使うよ」
すると湖の中心から大きな波が発生した。
「さあ、どうする? このままだと呑みこまれてしまうよ」
「きゃー! ハヤト兄の鬼~!」
こんなのどうしたらいいのよ。
私まだ簡単な魔法しか使えないんだからねっ。
カナモも浮き輪の上であわあわしていた。
「あらあら、大変ね。二人とも頑張って~」
「……あの二人じゃ無理。タマモならよゆー……」
「頼もしいわねぇ」
そこ二人。ほのぼのしないで。できるなら助けてくださ~い。
さっきから何とかしようと使える魔法を放ってはいるけれど、波に変化はなかった
そして――――波が爆ぜた。
私たちを呑みこまんとしていた波は綺麗になくなり、湖には静寂が訪れた。
私とカナモは何が起こったか分からず呆然としていた。
なぜか張本人のハヤト兄もポカーンとしていた。
『あたしのいない間に随分と知らない子が増えているわね? どういうことよ、ユミ!』
声がした方に目を向けると、そこにはユミエラさんに負けず劣らずの絶世の美女が浮かんでいた。
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