婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

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第三部

タマモ

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 少し時間がかかったがカナモも精霊が見えるようになった。
 カナモははしゃいで精霊に話しかけ、今ではすっかり仲良しになっていた。
 そのまま森のどこかにお散歩に行ってしまった。
 それなら私もつれて行ってほしかったのに……。
 いいもん。ミシェルさんが作ったお菓子食べてるもん。

「……気になっていたのですが、そちらの子はどうなさったのですか? もしかしてユミエラさんのお子さんとか……?」

 ママが恐る恐る聞いた。
 タマモを可愛がっているユミエラさんを見て、子どもができたとでも思ったのだろう。
 そんなママに鬼の形相で迫るメイドさんがいた。
 ヤバイ! ママの命が危ない!

「お嬢様の子ではありませんよ。言葉にはお気をつけくださいね。娘のように可愛がっていますが、この子はメイド見習い。お嬢様が子供をお作りになることなどこの先一生ありえないのですよ。わかりましたか?」

「は、はいぃ……」

 ママが半泣きで返事していた。
 怖かったです。淡々と告げるミシェルさんはとても恐ろしかった。
 あれで普通の子供は泣きだしますよ。
 かくいう私も泣きそうです。絶対に目を合わせません。

「こら、ミシェル。アイシャちゃんを怖がらせてどうするの。……ごめんなさいね。うちのメイドはいつまでたってもこんなんで」

「い、いえっ。私が失言でした……」

「何も悪いことではないわ。この子を娘のように思っているのはその通りだもの」

 そう言って微笑み、タマモの頭を撫でる。
 タマモも気持ちよさそうに体を揺らしていた。それに顔も緩んでいた。
 その後ろでミシェルさんがぐぬぬっ、と唸っていたのは見なかったことにした。

「……この子ももしかしたら関係しているのかもしれないわね。この子は東洋国家にいたの。天涯孤独でどこかの誰かにいつも追われていたみたい」

「東洋国家でそんなことが……。確かに最近は親を失った子供が増えましたが、まさか誰かに追われるなんてこと……」

「少し特殊なのよ。ミシェルがたまたまいなかったらタマモはその誰かに捕まってしまっていた。本当に運が良かったわ。それ以来、タマモをここで面倒見ているの」

「そうだったんですね。……その特殊な事情は聞いても大丈夫でしょうか?」

「構わないわ。あなたたちも何か知っていることがあるなら教えてほしいの」

 大人たちの会話にはついていけないかも。
 タマモのことは気になるから頑張って聞いているけれど、ちょっと眠くなってきた。

「……タマモは……の……約者なの……だから私が保……して……可愛いのよ……それで……」

 ユミエラさんの声が聞こえるけど眠気のせいで集中できない。
 タマモは一体何なのだろうか。
 あ、もうダメ。おやすみ……。


 ◇◇◇


「あら? ノアちゃん眠っちゃったわね。寝顔も可愛いわぁ」

「すみません、ご迷惑をおかけして……」

「気にしないでいいのよ。私の大事な人たちだもの。もっと楽にして、何でも言ってちょうだい」

「ありがとうございます。先ほどの話ですが、少し気になることがあります。なので旦那に連絡してみますね。何かわかるかもしれませんので」

「助かるわ。それじゃ、お部屋に案内するわね。今日はゆっくり休んで、またお夕飯の時に呼ぶわ」

「わかりました」


 そんな会話が朧げな記憶として残っていた。






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