婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

文字の大きさ
上 下
85 / 123
第三部

予想外の再会

しおりを挟む

「あなたたちがここに来た経緯を話してくれるかしら?」

そう言われても、正直私たちでは詳細が分からない。
どうして逃げなければならないのか。私たちが国に狙われているのか。
私たちを捕まえて国が何をしようとしているのか全く。
それでもなんとなくわかることだけ、ママに言われたことをそのまま話した。
ちゃんと伝わったのか分からないけれど、ユミエラさんは何も言わずに聞いてくれた。……タマモはずっとクッキーをかじってたけど。

「……なるほどね」

「どうして私たちが逃げなければならないんですか? ユミエラさんは何かわかりますか?」

「ふふっ」

「?」

「まったく分からないわ。一体なんででしょうねぇ~」

わからないんかーい。
意味深な笑みを浮かべ優雅に紅茶を飲んでいたのは何だったの。

「ごめんなさいね。私、そう言うの苦手で。ここにミシェルがいれば簡単にわかったのでしょうけど」

「ミシェルさん……?」

「私のメイドよ。私が小さい頃からずっとお世話してくれてたの」

「小さい頃って……今何歳なんですか?」

カナモが聞きにくいことをズバッと質問する。
そこには踏み込んではいけないと思うんだけど!?

「何歳…………そう言えばあれから何年たっているのかしら?」

「「へ?」」

「私この森からあまり出ないから、時間の感覚って分からないのよね。アリアのお孫さんがここにいるってことは、それなりに時間が経っているとは思うのだけれど……」

頬に手を当てやんわりとそう言うユミエラさん。
そんなのほほ~んとした雰囲気で言うことじゃないですよ、それ。

「でも、そうね。この子を保護してから十年くらい?だから、七十歳くらいは言ってるんじゃないかしら?」

「「な、七十……」」

いやいやいやいやいやいや。
七十て。絶対に違うでしょ。
どう見たって十八歳の深窓の御令嬢ですよ。
若作りにもほどがありますって。

「そうは見えない? 嬉しいわぁ」

「ほ、本当に七十歳……?」

「おそらくね。ミシェルに聞けばすぐわかるのだけど、今いないから」

どこかに言っているのかな。
寂しそうに言うからもう……なんてことも。

「――――お嬢様ぁぁぁぁぁぁぁぁl!!! たっだいま、戻りましたよー!!」

突然、大きな声が響いた。
そして勢いよくドアが開き、黒髪の美人なメイドさんが入ってきた。

「あら、ミシェル。ちょうどよかったわ」

「……お嬢様、久しぶりに帰ってきたメイドに何か言うことはないのですか?」

「久しぶりって言っても、この前帰って来てから三日も経ってないじゃない。……まあ、おかえりなさい」

「はいっ! ただいまです! はぁ……三日ぶりのお嬢様の匂い。たまらんですねぇ」

メイドさん――――ミシェルさんがユミエラさんに抱き着き、すんごい匂いを嗅いでいる。
というか、鼻血出てない? 大丈夫ですか?

「ミシェル、子どもたちが見てるから変なことしない。あなたのそれは教育に悪いわ」

「え……? 児ポ扱いされるのはさすがの私でも傷つきますよ……」

「……お姉おかえり。ハンバーグ」

「帰って早々作れと? タマモ、あなた私の後輩なのだけど? 自分で作れるでしょ?」

「……めんど――お姉のがいい……」

「今、めんどくさいって言おうとしたわね? ちゃんと聞いているのですからね?」

「それよりミシェル? ちゃんと仕事はしてきたの?」

「抜かりなく。しっかりとお守りして連れてきました」

ミシェルさんがそう言うと、開け放たれたドアから数人の男女が入ってきた。
というか、それはもう知っている顔ぶれでした。

「――ママ!?」








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...