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第三部

現れた女神

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 見上げるほど大きな樹。
 てっぺんは全く見えない。
 それになんか光ってるし、よく見ると周りは動物だらけだった。
 見たことのない動物がいっぱい。それに魔物も混ざってる?

「ノアちゃん。ここって……」

「……うん。たぶんおばあちゃんが話していたところだと思う」

「あの話って本当だったんだね。信じてなかったわけじゃないけど、半信半疑っていうか……」

「その気持ちはわかるよ。でも、本当だった」

 大好きだったおばあちゃんがよく語り聞かせてくれた、おとぎ話のような体験談。
 人のいない森に一時期住んでいたって言っていた。
 あれが事実だったことに少し興奮している。
 そして今、私たちはおばあちゃんと同じ体験をしているのだ。
 それが何よりも嬉しい。

「おばあちゃんの話だと、ここに人が住んでいるって」

「そうだよね。本当にいるのかなぁ……」

「――あら? 可愛らしいお客さんね。いらっしゃい。ようこそ、精霊の棲家へ」

 突然女の人の声が聞こえた。
 雰囲気に沿ったようなのんびりとした声だった。
 声のした方に目を向けると……唖然。
 泉を挟んだ向こうには光輝く金の髪に幻想的な紅い瞳をした美少女がいた。
 あまりにも綺麗で声も出ない。

「え~と、そこの鹿さん。お嬢さんたちを連れてこちらに来てくれるかしら」

 美少女がそう言うと、近くにいた鹿が膝を曲げ私たちの前に伏せた。
 乗れということなのだろうか。
 というか、あの人の言葉がわかるのだろうか。
 なんだかわからないが、とりあえず言う通りにした。
 私とカナモを乗せた鹿は立ち上がり、軽やかに飛んで泉を越え美少女の前に降り立つ。

「ありがとう。これお礼よ。みんなの分もあるからね」

 そうして笑う顔は本当に女神のようだった。

「それで、あなたたちは……」

「えっと……私たちは……」

「そのぉ……」

 どう説明していいか分からず、言葉に詰まっていると、美少女の顔が間近に迫っていた。
 いやいや、近いって。というかなんでこんなにドキドキしているの、私!?

「あなた…………」

「はい……?」

「やっぱり! アリアにそっくりだわ! あれから何年たったのかしらぁ! もしかしてお孫さん? アイシャちゃんとリーシャちゃん、どっちの子どもかしら? そっかぁ、もうそんな大きくなったのね。時間が経つのって本当に早いわぁ」

「えっと……あの……」

「あなたはカナリアのお孫さんね!。カンナちゃんにそっくりだもの! それにカナリアと同じ空気を纏っているからわかるわ。嬉しいわぁ。あの子たちのお孫さんがここに来てくれるなんて! 今日はパーティーね!」

 このテンションについていけない。
 私たちのママのことも知っているみたいだし、何よりおばあちゃんたちの名前も出てきた。
 おそらく、というか確実にこの人で間違いない。
 アリアおばあちゃんの友人はこのお姉さんだ。

「そうそう。まだ名乗っていなかったわね。私はユミエラ。ここでひっそりと優雅にスローライフを嗜むどこにでもいる女の子よ。よろしくね」






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