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第三部

おじいちゃんの遺言

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「……………アルト」

 不愉快極まりない声の持ち主は、よく私をいじめてくる同い年の男の子。
 確か父親が中央議会の重鎮とかで、いつも偉そうにしている。
 外に出るといつも待ち伏せしたかのように遭遇する。
 本当に嫌い。
 いつも取り巻きたちを連れて、偉そうにしているところとかアホみたい

「おいおい、なんだその態度は。一市民風情が俺に向かってその顔は不敬だぞ?」

「そんなの知らない。不愉快だから消えて」

「相変わらず生意気な女だな。知ってんだぞ? お前のとこのババアがようやくくたばったってな」

 だから嫌いなんだこいつは。
 いつもおばあちゃんの悪口を言う。
 私の大好きなおばあちゃんを馬鹿にするな。

「なんだその目。本当に生意気な奴だな」

「一つ聞きたいのだけど」

「ああ? なんだお前は。俺に向かって」

「君たちはノアの友達なのかな?」

「ああ? 友達だってぇ? 何バカな事言ってんだよ。そいつはただの市民だぞ。俺みたいな上級市民と一緒にするな」

「そうかい。なら、遠慮はいらないよね」

 そう言ってハヤト兄は周囲に火の玉を出現させた。
 ハヤト兄は魔法が得意なのだ。
 いつもいろいろな魔法を見せてくれる。
 こんなに怒っているところは見たことないけれど。

「お、おいおい。何するつもりだ……?」

「ああ。おじいちゃんの遺言でね。『偉そうにしているバカは容赦なくやっつけろ。後のことは気にするな。何とかなる』ってね。なんの保証もないし、解決もできないけれど、うちの祖母を馬鹿にする奴らには丁度いいや」

「は……ははは……まさか、たったそれだけのことで……?」

「君にとってはそうかもしれないけれどね。ぼくら家族……特にノアにとっては偉大な人だった。その祖母を馬鹿にすることは誰であろうと許さない!」

「ひっ!」

 ハヤト兄の怒気に当てられたアルトたちは一目散に逃げだした。
 あっ。アルトが転んだ。ざまぁみろ。
 ハヤト兄も逃げ出した彼らを追撃することはしないのか、火の玉を消した。

「これで反省してくれるといいんだけどね」

「ありえないよ、そんなこと。行こう。早く買い物して帰ろうよ」

「そうだね。……ノアにも怖い思いをさせちゃったかな?」

「ううん。すごく格好良かったよ。さすがハヤト兄だね」

「それなら良かった。ありがとう、ノア」

「それはこっちのセリフだよ」

 そのあと、私たちは買い出しを済ませ、早々に家路に着いた。
 家に帰った私は、ハヤト兄におじいちゃんのことを聞いた。
 おじいちゃんのことはおばあちゃんにしか聞いたことなかったから、新鮮だった。
 そして、おじいちゃんの遺言を守れるように、私も少し魔法の練習を始めた。





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