婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

番外2

喧嘩……？

「ただいまで～…………す？」

　今日はヴィルのお散歩に行ってきました。
　珍しくユミさんはお部屋に籠って何かされていたので一人で。
　ヴィルがお腹が空いたと言うので戻ってくると、なぜかユミさんとミシェルさんが何かの服を片手に睨み合っていました。

「あら。お姉様、おかえりなさい。いいタイミングね」

「えーと……どういう状況？」

「見ての通りよ。絶賛喧嘩中。珍しいこともあるものね」

「えぇ……。カナリア、見てないで止めてよ」

「どうしてあたしがそんなことしなければならないのよ。喧嘩ぐらい別に何の問題もないでしょう。それに、大した内容じゃないし」

　そう言ってカナリアは読書に戻る。
　何が何でも我関せずを貫くらしい。
　私はため息を吐いて喧嘩している二人の間に入ることにした。

「あのぉ～…………喧嘩している理由は知らないですけど、そろそろやめては？」

「「アリア（さん）はどう思います！？」」

「ひゃぇっ！？」

　二人同時に私の方を向き、ものすごい剣幕で迫ってくる。
　驚きすぎて変な声出しちゃったじゃない。

「な、何がでしょうか……？」

「もちろん、これですよ！　絶対にお嬢様にお似合いだと思いますよね！？　アリアさんならわかってくださいますよね！？」

「聞いてください、アリア！　ミシェルったら、私は絶対に着ないと言っているのに押し付けて来るんです！　こ、こんな恥ずかしい格好、できるわけありません！！」

「え、ええと……」

　確かにカナリアの言う通り、大したことない内容だった。
　ミシェルさんがいつものようにユミさんに何か押し付けているだけでした。
　というか、ミシェルさんの持っているその衣装は何なんですか！？
　白いウサギの耳と尻尾は分かりますが、その布は……。

「アリアさん。これはバニーガールと言ってですね、飲食店における由緒正しき衣装なのです。もし普通のカフェをやるとして制服を作るのであればやはりこれがいいでしょう。どう思いますか？」

「だ、だから！　そのような格好をしている店員さんなんて見たことありません。第一なんですかその露出は！？　は、破廉恥です……」

「た、確かにそうですね。ちょっと露出が多いのではないかと……」

　ユミさんが顔を真っ赤にして目をそらしている。
　私も同感だった。
　ミシェルさんが今実際に着用しているからだ。
　というか、どうしてミシェルさんは今着ていらっしゃるのですかっ。
　恥ずかしくないんですかっ。

「そのような感情はスラムに置き去りにしてきました。可愛いお嬢様を見るためなら私はどのような事でもする所存です」

　そう言うミシェルさんからは言い知れぬ迫力を感じた。
　その表情はまるで戦場に向かう戦士のようだった。
　意味が分からない。
　ということで、今回はユミさんの味方をすることにしました。
　ミシェルさんの説得にはかなり時間がかかりました。

　今度からはこのようなことで喧嘩はしないように！